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第七十一話 カップリング戦争

昼休み学生食堂。


『絶対にヴィン×レイですわ!』


『いいえ、レイ×ヴィンです!』


女子達が言い争う。彼女等の言い争いの原因は冒険を題材にした漫画だ。


ヴィンは熱血漢の剣士でレイはクールな賢者である。その2人で世界を救うために悪の王を討伐に向かう旅の話なのだが絵柄が女子好みだ。


初めはここが面白いだの次の話が気になる程度であった。それが何時の間にかどちらが攻めでどちらが受けかと言う話題に切り替わる。すると意見が2つに割れ言い争いが起こったのだ。


『ヴィンの熱いキャラこそ攻めに相応しいですわ!』


『レイのクールな性格こそ攻めですわ!』


モブ女子の討論が熱を帯びる。


(確かにカップリングは重要だけど…これって好みの問題なのよねぇ)


レナンジェスはそれを聞きながら食事を続ける。


「おい、何で男同士で恋愛する流れなんだぁ?」


「朕にも解らぬ」


チャールズとカイザルは困惑した表情でモブ女子を見る。


「仕方がありません。そこに婦女子の夢が詰まっていますから」


ミーアはそう呟く。どうやら彼女の中にも攻めと受けの構図が成り立っている様である。


「お姉さまはどちらが攻めだと思いますの?」


アリスがミーアに振る。


「レイだと思います」


その言葉にレイ受け派は悲嘆に暮れる。


「えぇ~、クールキャラは受けだと思いますわ」


アリスがそう言うとヴィン受け派は憤慨した表情を覗かせる。


「そうでしょうか?ヴィンみたいな熱血漢は襲い受けだと思いますの」


アリスがそう言うとミーアはムキになる。


「素クール発言するキャラが受けなのはおかしいですわ!」


「それではライディース様も素クールではありませんか!」


アリスが反論する。


「何故、我が出てくる?」


ライディースが突っ込みを入れるが完全に無視された。


「そもそもヴィンは襲い受けだと思いますの。あの行動力ですから」


「それを言ったらレイは俺様受けだと思いますわ!あの自信過剰な所が!!」


それから暫く、カップリングで言い争いになる。


『レナンジェスはどう思いますの!』


不意にフラれるレナンジェス。


「どうでしょう?両方かもしれませんよ?」


『乙女の希望も夢も簡単に片付けようとしていませんこと?』


「いや…それならば薄い本で結着を付けるのは…」


『それしかありませんわね!』


その言葉に食堂中で歓声が起こる。


(やれやれ…また仕事が増えたよ…)


そう思いながらレナンジェスはその場を後にした。




放課後、レナンジェスは自室で両方のシナリオを考える。


(ヴィンが「レイが欲しい」と迫ってから…)


レナンジェスは先ずはヴィン攻めを書きだす。


(次にレイが「知らない世界を教えてやるよ」とクールに詰め寄って…)


次はレイの攻めシーンだ。


(それで最後はニャンニャンする感じで…)


事が終わりイチャつくヴィンとレイの描写を描く。


(なんかデジャブが…)


レナンジェスはそう考えながら紅茶を啜る。攻めが俺様王子やジュドーになっている気がするのだ。更に受けはライディース。


(気のせいだ…きっと気のせいに決まっている!)


そう思おうとするも内容が…経験済みなモノばかりだ。


(まあ…これで少しは落ち着くと良いけど…)


そう思いながら原稿をミーアに渡す。


「負けませんわよ!」


ミーアは気合を入れてレナンジェスに言う。


「わたくしも負けませんわ!」


アリスも自作の漫画を持ってくると気合を漲らせる。


(まあ…気持ちは解るけど。カップリングは大事だから)


そう思いながら薄い本の発売を待つ事になった。


それから1週間後に薄い本が発売される。ハックマン領の印刷所は連日、徹夜だったらしい。


『凄いですわ!やはりヴィン攻めが最高ですわ!!』


『いいえ、レイ攻めの方が素敵ですわよ!!』


『両方も…1度で2度美味しいですわ』


薄い本片手にモブ令嬢達は言い争う。しかし交換して読むとそれはそれで有りだと感じたみたいだ。


『それにしても…両方が一番リアルですわ』


『レナンジェス殿ですからねぇ』


『わたし…両方派になりますわ!』


モブ令嬢達はキャッキャと騒ぎ出す。どうやらカップリング戦争はどのシュチュエーションもありに変わっている。


(話題を反らせられただけでも良しとしよう)


レナンジェスはそう考えながらモブ令嬢達の嬉しそうな姿を見守っていた。


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