第六十六話 文化祭2日目
(雰囲気が…まずいな…)
昨日の噂を聞いたのかモブ貴族がレナンジェスの教室に集まる。ケーキの売り上げは伸びるが客で来たモブ貴族の目付きが妖淫である。
(視線を私に向けられている…)
地味で未亡人風のレナンジェスの女装を見ながらモブ貴族が鼻息を荒くしている。そして下半身委はテントを張っているではないか。
『我等も女装して…百合の世界に…』
『男の娘同士だったらベーコンレタスだぞ!』
『でも…あの姿は反則だ…』
『あぁ、大人の色気だな』
『スカートを捲り上げて…グヘヘヘ』
『おいおい、そんな下品な笑いは止せよ』
『それでも…反則だろ!』
レナンジェスを見ながらモブ男子は欲望を露わにする。
『若い男の子風より未亡人風だな』
『それでも…見えそうで見えないのが…』
『こんな可愛いのに男の娘とは…』
大人のモブ貴族もベーコンレタス的な想像を膨らませているようだ。
『まあ、男装女子も素敵ですわね』
『そうですわ。劇も最後は号泣してしまいましたもの』
『それにしても貴族の女装なんて…』
『絶対領域が刺激的ですわ』
『見えそうで見えないのも…』
『今度、旦那を女装させて…』
『いけませんわ!そんな男装姿でご主人を襲うなんて…』
『でも、素敵ではありませんか』
モブ貴族の奥方もお茶会がてらとんでもない発言をしている。
(やり過ぎたか…)
レナンジェスは絶賛、後悔中だ。何しろモブ貴族を美少女にして令嬢を美男子に見せるメイクは反響が大きくメイク本をミーアが出そうとしている。そうすれば逆転夫婦が増えそうだ。
『男の娘とはここまで威力があるとは…』
『愛人に男の娘が欲しくなりますな』
『でも、脱いだら男ですぞ?』
『何を言う!着衣のままパンツを半脱ぎで…』
『そ、それは…』
『そうすれば…』
『ウム、素晴らしいですな!』
モブ貴族よ、それ以上の会話は止めようか!その先を言ったらR18枠になるだろうが!!
(男の娘…何て恐ろしい物を父は作ってしまったんだ…)
レナンジェスは内心で父に悪態をつく。そもそもこの世界の男の子のルーツはヒューイとドゥーイだ。それが進化して小悪魔~ズになっている。
(男の娘の認知度は2人のアイドル活動で広まってしまったし…一過性のモノでは無くなっている…どうすれば良いんだ?)
そう考えながらもモブ男子の女装は可愛らしい。
「レナンジェス…」
不意に耳元でライディースの声がする。振り返ると女装姿のライディースが妖淫な笑みを浮かべ立っている。
「あの…何でしょうか?」
「一緒に居たくてな」
イケボが再び耳元で発せられる。
(せめて学生服で言ってくれ…マジで女装男子のイケボとか合わないから!)
そう考えながらもレナンジェスは仕事をこなしていく。何しろお茶会の奥様が居座っているのだ。バルコニーにも席は設けたが居座る貴族が多すぎる。
始めは爵位の者が来れば席を空けていたが今は伯爵以上の爵位持ちに占拠されている。
「ママ、空き部屋を確保したわよ」
不意にアリスが嬉しそうに言う。
「助かります」
レナンジェスは列を作る貴族を見ながら笑みを浮かべて言うとアリスは「エヘヘ」と嬉しそうに笑った。
そこからが戦場だった。次々と来る貴族に対してモブ男子を振り分ける。そして劇はダンス練習場を急遽、借りるとそこで公演する。
幸い、モブ貴族の従者が上手く立ち回ってくれたおかげで今のところは特に不備はない。しかし人員はどうしても足りなくなる。
『手伝うわ』
不意に男装モブ女子がそう言うとメイドを伴って接客をしてくれる。彼女等はメイドが持って来たトレーの上のケーキをテーブルに置くだけだ。
しかし劇で男子になりきっているモブ女子は早速やらかす。
『僕が運んだんだからな!残したらお仕置きだぞ!!』
『兄上、ケーキでございます』
『旦那様、奥様お茶の時間ですよ』
(おいおい、執事喫茶やら妹喫茶が混ざっているぞ!!)
それを見たモブ男子は意味の無い対抗心を燃やす。
『ご主人様、ケーキですぅ』
『美味しくな~れ、萌え萌えキュン』
それを見たモブ貴族生徒が今度は押しかけてくる。
(モブは何でも有りなの?有りなのか?男装女子は貴族の奥方に顎クイと何やら耳元で囁いているし、男子は完全にメイド喫茶の店員になりきっている…。この世界にメイド喫茶を作った覚えは無いのだが…)
そう考えるも作るのはレナンジェス1人だ。
(疲れた…既に学園祭ではなくショッピングモールのランチタイムになっているのだが…)
それでも笑顔を絶やさない。
『あの未亡人は是非とも我が息子の嫁に…』
『あれはハックマン子爵家の次期当主ですぞ?』
『では婿養子に…』
『いや、息子の愛人に…』
モブ貴族のトンデモ発言を聞き流しながらレナンジェスは職務を遂行するのであった。




