6、研修
「経験値1ってどういうことだ?というより、お前は何の役職に就きたいんだよ。」
「えっと、あの、魔法戦士です、、、、。」
「魔法戦士?槍とか剣が得意なのか?」
「いや、ある人がそう助言してくれて、、、、、、。剣とかは、ちょっとだけやってましたけど、、、、、、。」
「、、、、、、よし、そこにある剣を取ってこい。」
男の人がそういうと、自分の剣を取って、リングに上がった。
「えっと、、、、、、。」
「とりあえず、この剣に向かって三本振ってくれ。」
男が掲げてる剣の中心あたりをめがけて、3回振った。
「わかった。、、、、、、、、魔法戦士でいいだろう。」
「剣は元の場所に戻してくれ。それから、二人はパーティーを組むのか?」
「はい。」
「じゃあ、見習いになったら、、、、、明日から二人で来てくれ。」
「ふぅ、」
安心したせいか、溜息がでた。
「、、、、、、、!」
「どうしたの?」
「え?いや、何でもない。」
「なんかあったら言ってね。じゃあ、おやすみ。」
「ああ。おやすみ。」
*『山から薬の材料となるキノコを採ってくる』のクエストを受ける。
書には新しい字が書き加えられていた。もしかしたら、やらないといけないことが出来たら、次にやる事が表示されるシステムなのかもしれない。うろ覚えだが、そういう魔法がかかって本が存在するという事を聞いたことがある。ただ、話していた人はたしか、無理に魔法を解こうとすると、書いてある事が全て消える、と言っていた。だから、言われたまま進まなければいけないのかも知れない。
でも、なんでソフィーはそんな本を渡したのか、、、、、。もしかしたら、この書に何かヒントがあるかも知れない。そういう事で決断を出し、今日はもう寝ることにした。
目が覚めると、暖かい日差しが差し込んでいた。セイディーは髪を梳かしているから、きっと少し前に起きたのだろう。
身支度を整えた後、お餅に蜂蜜をかけた料理を朝ご飯として食べ、冒険者ギルドへと向かった。八時にはギルドに着くようにと言われていたので、その30分ほど前に家を発った。十分前にはギルドに着くだろう。
朝に外を歩くというのは、すがすがしくてとても理想的だ。俺とセイディーは、今日どんなことがあるのか予想し合いながらギルドに入った。
「おはようございます。あなたたちの先生はあの部屋にいますので、そちらに向かってください。」
受付嬢のお姉さんは、俺たちのことを覚えていてくれたようだ。
「はい。ご丁寧にありがとうございます。」
部屋に入ると、昨日の男の人がいた。
「よう、ギルドに頼み込んでお前らのトレーナーになったぞ。じゃあ自己紹介からするな。俺はシリルだ。よろしくな。」
「えっ、ありがとうございます。よろしくお願いします。」
「じゃあ始めるぞ。まず、お嬢ちゃん、、、セイディーはだったよな、そっちであの木に向かって攻撃魔法を、それから、そアルドに向かって回復魔法をかけてくれ。僧侶でも攻撃が必要な時があるからな。特に二人パーティーなら、攻撃しながら回復魔法も使う場面は、必ず現れるだろう。」
「はい。」
「それから、アルド、お前は剣をするぞ。ただ感覚で俺の剣に応えてくれればいい。今日はそういう瞬発的な感覚を身に着けるための練習をするからな。あと、どの剣がお前に合うのか試したい。魔法は午後からやるからちょっと待ってくれ。じゃあ、まず一番左の剣からやってくれ。」
ー2週間後ー
殺される、、、、、、、!ヤバい、この人ヤバいって。マジでああ、もう無理、、、、、、、。
「セイディー!回復魔法が追いついてない!アルドが死ぬぞ!」
「はい!」
体に力が入って、浅い傷は全て癒えていく。
「じゃあアルドも立て!」
「はい!」
目の前の剣だけに集中する。下から、上から、横から、、、、、、、、。一撃がとても重みがあって、だがしかし華麗に次々と技を決めてくる。最近は剣術は防御に努めている。
「気を抜かすな!」
ヤバい!
そう思った時にはもう遅かった。右からの攻撃に、自然と右側への防御姿勢になっていたところを、左から攻められた。
「ゔっ。」
今の一撃はかなり応えたが、左足に力を入れて上からの攻撃を回避した。
「セイディー!回復お願い!」
最近では、俺とセイディーで連絡を取るようになった。
「分かった、、、。あれ?どうしてだ?アルド、なんか出来ない!」
ふとシリルの攻撃の手が止まった。
「魔力切れだな。体調は大丈夫か?極度な魔力切れは時に体調、命に関わるからな。まあ、ほとんどの人は吐き気程度で収まるが。」
「大丈夫です。でもどうすれば魔力を補充できるんですか?」
「ただ待て。何か食べたり飲んだりしても補充しやすくなるけどな。」
「分かりました。」
二人の会話を前に、俺は具合が悪化していた。
自分でかけるか。
「アトラ!」
強めの回復魔法をかけると、一瞬で回復系の魔力が半減したのが分かった。
「じゃ、切りもいいし休憩にしよう。」
セイディーは、ほってった顔で水を飲んでいた?
「セイディー、大丈夫か?」
「うん。」
「俺、なんか買ってこようか?美味しいもの。」
「え?いいよ、そんなに。」
「いや、俺も食いたいからさ。」
「じゃ、俺の分も頼むぞ。蜜氷買ってきてくれ。」
シリルさんの皮肉なほどに合うウィンクで、ギルドの外に出ると、蜜氷屋はすぐ見つかった。蜜氷というのは、氷を削ったものに蜂蜜と牛乳を混ぜたとろとろな黄金の蜜を掻けてかけてたべる、夏の定番菓子だ。夏になると、小さな押し車に氷を入れて蜜氷を売る商人が多く出てくるので、すぐ見つけられるのだ。
「おじさん、蜜氷3つ。」
「あいよ。」
そういうとおじさんは、小分けにされた氷3つを出して、それ専用の尖った鉄の棒で粉々にし始めた。そして、それらをお皿に盛りつけると、いよいよ蜜の登場だ。蜜には牛乳や蜂蜜以外にも、レモン果汁などを入れる商人もいて、作り方は企業秘密だ。おじさんも細長い土壺から、とろーりとした蜜をたっぷりかけてくれた。蜜は、夏の暑い日差しで黄金に輝いていた。
「ほら、一つ20ウォルで、60ウォルだよ。」
「一つ20ウォルですか。結構安いですね。」
そういいながら60ウォルを出した。
「ここは蜂蜜の名産地だから安いのさ。」
「そうなんですか?そういえば朝も蜂蜜と餅の料理でした。」
「そうだろ?ここ、サランダといえばギルドと蜂蜜よ。というかお前さん、3つも手で持てるのかい?」
そういって、おじさんが板を渡してくれた。
「ありがとうございます。」
「ん、じゃあな。」
ギルドに戻ると、シリルさんが待ち望んでいたらしく、俺を見るなり飛んできた。
「ありがとな。」
そういうと早々に食べ始めるシリルさんに呆れながらも、セイディーの横に座った。
「ありがとう。蜜氷、夏っぽくていいね。」
「うん。早速食べてみよう。」
蜜氷を、付属の小さな木のスプーンですくって食べると、しゃりっとした粗目の氷に、ネバっと、優しい甘みの蜜が絡みついて、しっかりと甘いのに涼しくてさっぱりして、疲れが吹き飛んだ。
「美味しいね。」
嬉しそうに微笑んでるセイディーを見ていると、なんだかこっちも嬉しい気分になってきた。
「そうだな。」
ふと、あの書の事を思い出した。
*『山から薬の材料となるキノコを採ってくる』のクエストを受ける。
あのクエストは、見習いにもできるのだろうか?
「あのシリルさん、今ギルドに山から薬の材料となるキノコを採ってくるっていう、クエストありますか?」
「そういうクエストは日常的にあるから良くわからないが、どっちにしろ、お前たちは研修中は今日みたいな練習に徹したいからクエストは出来ないぞ。」
「そうですか、、、、、。」
「食い終わったらまたはじめるぞ!」
ゔゔ、、、地獄だ、、、、、、、、、、。
「っっっっちょっと待ってください!」
そうだ。セイディーは冷たいものを食べるのが遅いんだった。
「まだ半分も食べてないのか?遅いな。」
シリルさんが呆れたように言う。なんか、剣の練習してる時とのギャップについていけない。剣の時はめちゃくちゃ怖い顔してるんだよな、、、あの人。
「食い終わったか?」
「あ、はい、、、、」
セイディーが最後の一口を急いで食べた。俺とは違って貴族としての厳しい食事マナーを強いられ続けたセイディーがやったことなので、意外だった。
「まず、お前らの属性を確かめたい。」
魔法には属性がある。そして、その属性の魔法しか使えないのだ。回復魔法は光属性が必要だ。つまり、光属性を俺もセイディーも持っている。これは、ユクリート家の遺伝だ。そして、属性と言うのは、ステータスに表示されない。なぜかわからないが、属性を見るには、専用のもので見なければいけないのだ。ぶっちゃけた話をすると、俺もセイディーも自分が光り以外に何の属性を持っているのか知らない。ユクリート家は光属性さえあれば、ほかは何も気にしなかったので、一度も調べたことが無かったのだ。
「じゃあ、セイディーからこの水晶に手を置いてくれ。」
「、、、、、、お前が持ってるのは、水、光、だな。水属性の使い方とかはあとでやるから待っててな。」
セイディーが嬉しそうな顔をしている。普通の人は1属性しか持ってないし、自分に水属性なんていうものがあったという事自体が嬉しいんだろう。因みに、光、闇、土、風、水、火、氷、雷属性がある。
「次はお前だな。」
水晶に手を置く。
「おい、マジかよ、、、、、、。光と闇?」
「闇属性ですか?」
「ああ、効果とかはあとで説明するから、、、、、。じゃあ、はじめるぞ。」
「「はい」」」