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勘当されたので冒険者始めます。  作者: ジャガバター
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4、クレーター

 「ここがギルドか。」

 

 「そうだぞ。じゃあ、ここからは自分たちで出来るな?」


 送ってもらったらそこで別れるつもりだったカミルさんには、結局ギルドまで案内してもらった。一日とちょっとの付き合いだったけど、やはり別れるとなるとさびしいものだ。


 「じゃあ、一日間ありがとな。」


 「はい。一日間ですけど、楽しかったです。こちらこそありがとうございます。」


 「本当に、おせわになりました、、、。」

 

 セイディーは泣いていた。涙もろいからな。


 「おい、泣くなよ。なんかしんみりしちまったけど、いい旅だったじゃねえか。な?じゃ、俺はもう行くぞ。」

 

 「ありがとうございました。」


 「ありがとうございました!」


 




 カミルさんの馬車が完全に見えなくなった後、俺達はとりあえずどこか寝泊りする場所を探すことにした。


 「冒険者登録には時間がかかるから、ギルドの近くにしよう。」


 「ああ、、、、、。それならこことかどうだ?」



 俺が指さしたのは、地図の冒険者ギルド、と書かれた図の少し隣にある、他より安くて、商店街も近くにありそうな宿だ。地図というのは、さっきカミルさんから貰ったものだ。地図というのは基本的に高いので断ったが、押し切られてしまい、もっと国全体を描いたような大きな地図ももらったので流石に申し訳なくて銅貨五枚で買った。最後まで、もう商人も辞めて家で老後を過ごす予定だから、、、、、。とか言ってたが、押し切った。



 「取り合えず管理人に話を付けないとな。」


 大抵の場合、管理人は宿の傍に書き置き(自分の居場所など)を残している。宿の中にいる。と言っても働けなくなった老人達が、自宅から行き来するのがら煩わしく、宿で客が来るまで寝泊りしているのだ。そういう時は一、二時間程掃除に時間がかかる。何せ相手は老人なので、大抵の人は力仕事を引き受けるらしい。(講義で習っただけなだから、正確には分からない。)


 「そうね。じゃあ、行ってみましょうか。」


 「現在地ってここだよな。っていう事は、あっちの道を進んで左、、、、、、、。」


 








 「え?泊まりたい?今日は予約が一杯なんだけど、、、、、、、、、あ!向こうにすごく寒くて小さな部屋なら半額で貸してあげられるけど?」


 まず、書置きなんてなかった。外にある食堂と繋がっているようで、そこで料理を運んでいたおばさん、おばあさんでもおじいさんでもなく、おばさん、に声を掛けたら、どうやら管理人だったようだ。夫婦で営んでいるらしいけど、夫さんはぎっくり腰でダウンなので、一人でやっていたところだそうだ。

 おっと、話が逸れたが、俺とセイディーは顔を見合わせた。


 「毛布とか持ってる?」


 「持ってるけど、、、、部屋の狭さにもよるかな。」


 「見てみるかい?あそこの部屋の裏だよ。まあ、間違えたら鍵が掛かってるなりするから分かるだろうよ。」


 「はい。ありがとうございます。」

 

 おじさん(夫さんがぎっくり腰の間だけ雇われているらしい)に連れられ、廊下を奥に進んでいくと、確かに小さくて少し埃っぽい部屋に通された。そこには、ベット一つとテーブル、箪笥があり、手前の方には人ひとり分程のスペースが余っていた。ベットが、ベットが一つだと!?


 「ベットが一つしかないじゃない。仕方ないからどっちか一人はここのスペースで寝るしかないわね。」


 「え?あ、うん、、、、。」


 そうだよな。何考えてんだ俺は。


 「二人とも夫婦か何かと思ったら違うのか。」


 「違いますよ~。」

 

 あははと笑ったが、セイディーは黙ったままだ。やべっ、怒らせたか?


 「そう、、見えます?」


 謝罪をしようとした、その時。セイディーが茹蛸のように顔を真っ赤に染めて、恥ずかしそうに上目遣いでおじさんを見ている。

 なんだと!?この究極の上目遣いを、、、おじさんに盗られた。

 

 「まあ、そう見えない事もないがな。」



 そしてスルーだと!?これでもセイディーは領地1と言えるほどかわいくて、俺が知ってる情報だけでも50回は貴族のボンボンにに告白されているはずだ。な、の、に、スルーだと!!!!!!!!!



 ふう、落ち着こう。取り合えずそういう事で、この日は此処で止まることになった。


 

 



 「うーん、決まったのは良いんだけど、まだ夕方だしなんかする?」


 そう、付いたのが昼頃に着いたので、まだ時間に余裕があるのだ。


 「一応冒険者ギルドで明日応募する時に必要な物が無いかとか、冒険者の仕組みについてでも聞いてみるか?」


 「うん、なんか買わなきゃいけないものあるんだったら買いに行こうと思ったけど、なんかある?ないならそうしよう。」


 「いや、特にないな。」


 「じゃあ、いまから行く?」


 「そうだな。」


 こうして俺たちは、さっきのおじさんに鍵の閉め方等教えてもらってから、部屋の鍵を閉めて冒険者ギルドへと向かった。


 「ここ?かな、、、、、?」


 「多分な、、、、。」


初めて見る冒険者ギルドは、想像よりもデカかった。なんだろう、この漂う神殿感。


 少し緊張しながら中に入ると、早速受付のお姉さんが対応してくれた。

 

 「ギルド登録をしたいのですが、どうすればいいですか?身分証明書とか出さなきゃいけませんかね?」


 「え?いや~、全然要らないですよ~。まあ、ステータスチェックとかも~、全部こちらで担当させていただくので~。」


 良かった。身分証明書は、自分のステータスを全て表した紙で、専門の店で作ってもらわなければいけないのだが、俺は家に置いてきたので、証明書を作るためにかかる一日分、冒険者登録が遅くなるかも知れなかったのだ。


 「今、登録致しますか~?」


 そういう予定では無かったが、別に何もしなくていいなら、時間も持て余してるし、しといても問題ないよな。


 「時間持て余してるし、しいた方が良いんじゃないか?」


 「そうだね、そうしよう。」


 「じゃあ、そういう事でお願いします。」


 「では、調べますね~。手をここに当ててもらえますか~?お二人ともお願いします~。」


 「はい。」



 俺が右側の水晶に手を置くと、セイディーもそれにつられて左の水晶に手を置いた。



 「あ、出ましたよ~、、、、えっと、、、分かりました。」


 お姉さんは一瞬驚いたような顔をしたが、直ぐに笑顔に戻った。


 「では、明日のこの時間帯に来ていただければ準備は終わっていると思いますよ~。」





 「ギルドって、思ってたより大きかったね。」


 「ああ。試験の時の戦闘用に場所が設けられてるんだな。」


 「でも、僧侶の実技試験はどうするんだろう?、、、、、、、あ、あと、夕ご飯はやっぱりあの宿の食堂で食べる?」


 「あー、宿を借りているなら割引してくれるって言ってたしな。」


 「うん、それになんか美味しそうな香りがしてt、、、、、、、、、、。」


 セイディーが喋るのをやめた。というよりも、一点を見て、動かない。

 

 「どうした?」

 

 セイディーが向いている方を見ると、そこにはタチの悪そうな男達が立っていた。


 「久しぶりじゃねーか。あ、別に昨日も会ったから久しぶりでは無いか?」


 そこには、金銭袋を盗ろうとした男と、その仲間のような人たちが三人立っていた。

 辺りを見渡すが、誰もいない。近道を通ってきたのが間違いだった。



 どうしよう。俺は回復魔法と少しの剣術位しかできない。圧倒的不利な状況だ。この場を逃げ去ることは、まず無理だろう。ここは人気のない路地で、かなり行かないと人がいないし、分かれ道はあいつ等が来た道だけだ。そこまで接近するのは危険だろう。



 「ほら、出せよ、金。持ってんだろ?これに結構入ってたな。もっと持ってんだろ?」

 

 そう言って昨日の俺の金銭袋を見せつけた。


 「今は持ってないので。すいませんが通してもらえませんか?」


 今持ってないというのは本当だ。もともとギルドへ来るために宿を出たわけで、使わないと思っていた。

 

 「あ?お前、逆らうのか?」


 

 男が拳を振り上げたので、反射的に頭を守って身を捻った。

 すれすれの所で避けられたが、それで逆上した相手は、次は本当に猛スピードで突進してきた。



 あ、ヤバい、、、、、、、。


 「ドガーン!!」


 「え?」


 目の前には、地面に打ち付けられた男と、その周りのクレーターだけが残っていた。


 「な!?くそ、逃げるぞ。」


 仲間の一人がもう二人を連れて走り出した。


 「何が起こったんだ、、、?」


 安堵と困惑の中、セイディーの事を思い出した。


 「セイディー!大丈夫か?」

 


 土煙の中、セイディーが出て来た。



 「大丈夫だったか?」

 

 「うん。私は大丈夫だけど、、。にしても、そうやってあんな魔法、使ったの?」


 「魔法?」


 「まさか、自覚ないの!?アルド、さっき魔法使ってあのクレーター作ったんだよ。」


 「え?俺が?」

 

 「勿論!ねえ、本当に自覚無いの?だとしたらこれって、才能じゃないのかな?」


 セイディーがワクワクした口調で言う。


 「才能、、、?」



 俺に才能何て言葉は不釣り合いだ。そんなもの、、、。でも、じゃあこのクレーターはどうやって?それに、あの書に書いてあった魔法剣士、という職業も。もしも、もしも俺に才能があるのなら、全ての辻褄が合う。でもという事はソフィーは俺の才能を知っていたのか?でもどうやって?

 『アルドは基礎ステータス多いな。やっぱラスボスは手強いのか。』


 ふと、脳裏そんな言葉が浮かんだ。というより、声も口調もすべて鮮明に浮かんできた。


 何なんだ?ラスボス?それに俺の名前?



 「俺がラスボス?ありえないよな。クレーターも三人の内の誰かが不手際で作ってしまったんだろうな。」


 そう考えると、なんだか馬鹿らしくなってきた。


 「セイディー、取り合えず今日は帰ろうか。っとその前に、これも返してもらわなきゃね。」

 

 俺はクレーターでうずくまっていた男の手から金銭袋を奪い取った。取り返した、という方が正確か。中身は半減していたけど、これは幼い頃ソフィーが手作りしてくれたもので、俺にとって大切なものなのだ。

 色々あったけど、取り合えず今日は飯を食って早めに寝よう。


 


 


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