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闘いはつづく

  チッ!


 駆け始めたモンスターに追いすがり、斬撃を加えてもこれまでに蓄積してたヘイト値が今になって効果を起こしたのかもしれない。

 「こっちに来て」とナナ○の反応は早く、ミィとウィを左右各々に抱え上げて、近くの物陰に隠れる。


 素早く現れたナナ○の矢が片目を射貫く。

 だが、モンスターの勢いは止まらなかった。


 ポン○が血相を変えて走っていたが、ジミに疲労が脚に来ていたようで、草に足を取られてころげた。

 こんな時でなければ、オイシイのだがなあ。

 ギャグじゃないのですぐ起き上がった。残念。


 モンスターはナナ○達に近づくが、勢いを殺しきれず、細い木立などを倒しながらしばらくして、大木にキバを刺して止まった。

 少しの間、じっとしていた。


 抜けなくなったのかもと、近寄ろうとすると、身体を揺すって木をへし折った。

 向きを変え鼻息は荒いままだが、今度はゆっくりと歩みながら、ターゲットを見定めている。

 わしとポン○が後衛のナナ○の前で武器を構える。


 モンスターの鼻先で、わしとボン○は、ウィとミィを片手で抱えて飛び退いた。

 そこには装備を変えてナナ○が軸をずらし、横に一回転をしてからモンスターの鼻頭に特大ハンマーを叩き込む。


 とうとうモンスターもこれにはキバを折られて、膝を着くことになった。


 ダウンしている『今が、チャーンス!』だ。


 他のゲームUIなら、頭上に踊るヒヨコかまわる星マークがでているのだろうな。


 わしは二本のショートソードを順手に持ち替え所謂双剣乱舞で後脚部にダメージの上乗せをしていく。

 ナナ○はピヨタイムの延長を狙ってか頭部へ執拗にハンマーを打ち下ろす。

 そしてポン○は頸を落とそうとしている。


 さてウィとミィは股間の宝玉をパチンコで狙い撃ちしている。当たる度にピクッとしている。

 ミィはけたけた笑ってるし、ウィはてめえも無くしやがれとかつぶやいている。

 あまり追求しない方が、いいと予感した。


 止めさせたいが、視野のどこかに入れておかないとまた独走されるとと思うとね。

 早く楽にさせてやるぞ。だから……墜ちろっ。墜ちてくれ。


 わしは攻撃を続ける。ぴくっとからだが一瞬動いた。


「起きるぞーーー」


「心得たでござるっ」

「承知」

「あははははは」

「もげろーーー」


 返事に聞こえないのもあったが。みんな気づいていたみたいで、すぐに返ってきた。

 飛び退きざまに可燃ネットを投げるのとモンスターがブルッと身体を震わすのが同時ぐらいだった。

 ゆらりと立ち上がり、四肢を踏ん張る。

 浅いとはいえ、わしが連続攻撃をした脚にダメージが入っているようだ。


 アイテムボックスから取り出した瓶の栓を引き抜くと、スティックが顔を覗かせる。

 キャップ部分をべしっと剥がすと着火した。

 狙いを定めて投擲する。


 わしの[投擲]スキルは低いが、近いのと大きく動いていないターゲットで命中した。

 オイルとアルコールが混合した中身がぶちまけられ、背を覆う。

 遅れて炎もまわり、ネットともにナナ○の矢も燃え上がる。

 ヘイトを獲得して、こちらに走り出してきた。


「イモを焼きたい衝動に駆られますなあ」

 スピードの乗っていないモンスターのボディアタックを交わし、わしが軽口を叩く。


 やはり燃えているという現実に、モンスターのストレスが上がって通常攻撃に身が入らないみたいだ。

 とうとう我慢できなくなったのか、寝転がって火を消し始めた。


 わしとポン○は駆けより、これでもかと攻撃する。

 炎が消え、立ち上がろうとしたので、脚に思いっきり打ち込み、そのまま転がって後方へ逃げる。

 ポン○は反対側で、死角側にいたわしよか少し多めに、転がっていた。


 回復力以上にダメージを与えられたようで、以前ほど動きがよくないのが見て取れる。


 どっちを向くか振り返ってみると、モンスターの正面には、またウィが立っている。


 しっかりターゲットにされているぞ。

 ナニやってんだーーーー!


 キバを失い、速度も勢いこそ無いが、それでも脅威は変わらない。

 ウィを狙っているのは確かだ。

 状態異常弾を連射しているが、たいして効果はない。


<BreakCut name = "We" text = "あの脚運び、タイミングを合わせば、わしのサイズなら十分躱せる。失敗するのは運がないときただけだ。" />


 プレヤーのわしは万が一があっても、死に戻りできるが、NPC冒険者には適用されない。

 少なくとも交友のある者が、いなくなるのは寝覚めが悪い。

 まぁいつまでこのサーバに来られるのかも不明だがね。


 走るわし。

 リアルでやったら、何メートルも進めないだろうな。

 なんて考えながら、わしは走る。


 追いついて、前に出る。

 死角側からウィに飛びつき、後頭部に掌を当てみぞおちの臭いを嗅がせるように押し倒しながら盾になる。


 ドスッ。


 駆け抜けたモンスターの足が、わしの肩上部を踏み抜いた。

 血しぶきの演出が画面に描かれる。

 プレヤーのわしには、もし致命傷でも痛みはない。

 行動不能にも障害になるわけでもなくHPゲージが減るだけだ。

 首を巡らしモンスターを探す。


 はやくも方向転換をして、わしらを狙って駆けてくる姿があった。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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