ジミに痛い
ポン○のバスターソードが、モンスターの背から、腕を一本奪った。
ミィはナナ○に寄り添っている。
ポン○が挑発をして自分のヘイトを上げてくれた。
ここは、しばらくポンとナナに任せておこう。
わしは、ウィを抱き抱えたままに、その先でへたり込んでいる冒険者の下へ行く。
3人のうち一人が、最優先だ。
アイテムボックスから、回復薬を3本取り出す。
彼らに見せる。
「自分で飲めるか」
「ああ、飲める。それを俺たちにもらえるのか」
「口に合わない物は、飲めないかもしれないわ」
この期に及んで減らず口とは、案外な女だな。
ウィを降ろし、一本の封を開けて返事をしない男の傷口と口に、少し垂らしてから、頭から残っている足先まで残りをかけてやる。
一本づつ男と女に渡すと、自分の言葉を忘れたのか女はすぐに飲み干した。
男はしげしげと容器を見ながら、なかなか飲もうとしないのでせかすことにした。
「まだ仲間が闘っているんだ。のんびりしてらんないから、早く飲んでくれ」
「そうなんだが……」
離れた位置に転々と倒れている方を見ながら口ごもった。
視線を追い、そんなことかと察する。
「もう息をしてないヤツは無理だが、手持ちの本数は足りるだけ残っている。応急処置だがな。早く飲んで、この負傷者を向こうの陰に運んだら隠れていてくれ」
男は無言でうなずいて、飲み始めた。
「で、そっちのあんたも仲間の手当ぐらいは出来るよな」
「それぐらい、出来てよ」
腰に手を当ててふんぞり返っているから、殴りたくなった。
ココは我慢だ。ゲンコツを握りしめる。
「ウィは勝手な行動しちゃ駄目でしょ」
手加減してゲンコツを脳天に見舞う。
「っう……」
<BreakCut name = "We" text = "ゼッタイ、やつあたりだ。" />
頭に両手をやり、涙目になって、こっちを見上るが自業自得だろとにらみ返す。
いかに壊滅的であっても別パーティの狩り場に足を踏み入れ、引き受けていないクエストに首を突っ込むのはマナー違反だ。
ガキだからこそ手は抜かん。
独走させちまったのは、大人の責任だし。
「目立たないようにミィのトコ行ってなさい」
まだポン○のヒットアンドウェイとナナ○のヘイト管理でしばらくは保ちそうだ。
しかしスタミナが切れたらと思うとぞっとする。
『もう少しです、お願いします』
近くの倒れている負傷者から、回復薬をかけていく。
一人づつだが、処置をしてから少し運ぶ。
運がよかったのか手遅れの者はいなかったが、身体の欠損のある冒険者も少なくない。
だが欠損部分がどこにもないことから、喰われたのだと推測した。
わしの持つ回復薬は、身体の欠損を再生させるまではしない。
命は取り留めたものの、冒険者を続けるのは困難だろう。
小物狙いの装備だもんなぁー。どおしよっかな。
やってみなきゃわかんないし、このまま行くか。
徐々にモンスターを負傷者から離してくれていたようだ。
注視しながらヘイト地を上げないように接近する。
不意打ちという、アドバンテージを失いたくないからだ。
なにかヘンだ。切断したはずの腕は再生し、不完全だが背から、人の手が生えてきている。
と同時に、山形に射るナナ○の矢が見事に、所狭しと刺さったままだ。
こいつは、おそらく……。
野生の獣が、魔素を取り込み、魔獣となって人を喰って変化しているのか。
再生もするようだから、時間をかけて討伐することは危険だ。
前屈みになって少し走る速度を上げる。
つぅても、戦闘時に画面を自分の指で隠したくないから、BTで接続したコントローラのスティックを既にめいっぱい倒し上限にしていたので、気持ち程度だ。
接近するまでの間に、片方の手でトマトベースの野菜ジュースを飲む。
少し塩が欲しいが、血圧が上がることを思うと我慢するか。
ポン○とナナ○に挟まれる位置で、モンスターがポンへ方向を変えようとして、こちらにも後ろを向いたときにたどり着いた。
『おまたせしましたぁー』
跳び上がった落下を利用して、後ろ足に攻撃を入れね。
逆手に持ったショートソードが殿部側面に二本の筋を作る。
振り下ろした勢いのままに、膝の腱を狙う。
再生するだろうから、効果は薄いだろう。
しかし、わしの狙いを集中すれば、跪かせることぐらいは、出来るかもしれない。
モンスターがこちらに見ようと振り返ったので、とっさに反対方向へ転がり回り込んだ。
ソロの習慣が出た。これまで、うまく姿を隠していたナナ○を見つけてしまった。
ミスった!
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