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リアルでは物欲プアー

 エリア情報に周辺のモンスターが騒がしいとある。

 土地勘のあるポンとナナによるとそこは普段からよく騒がしくなるそうだ。

 危険警告じゃないので、注意を怠らなければ深刻なことはないだろうと言うことだった。

 クエストの書かれた依頼カードを手に取り、真ん中のネコミミ嬢へ笑顔で「よろしく」と寄っていく。

 いつものようにカードをカウンターに並べた。

「はい。確認させていただきます」

 ネコミミさんだけど手は肉球のない普通に人間の手をのばしてカードを手元に寄せながら、もう片方の手で失敗したときの違約金額を算出している。

 その金は冒険者が帰って来られない場合もあるので、先払いだ。

 算出していた手がふと止まった。


「この間引き依頼の内容は小型モンスターですが近くに少し大きめのモンスターが目撃されています。少し前に、確認と討伐のためにパーティが出発しましたので、影響は少ないかもしれませんが乱入される恐れがあります。危険度が上昇している依頼ですがどうしますか」

「受けます。そのときは、相手にも寄るけど、逃・げ・ま・す・!」

「はい、分かりました」

 算出が終わり、言い出しっぺのわしが金を払う。

 代わりにパーティメンツなどを記した受託証を依頼毎だけもらう。

 これがないと、クエスト完了にならず報酬の精算もできない。

「おまたせ。さぁ行きますか」


 門をくぐり、タクシー代わりの馬車に乗って採取目的の近くまで運んでもらう。

 採取に場所指定はなく、必要な物が必要数そろえばいい。

 そこで場所の指定されている討伐は、後に回すことにした。

 徒歩で行くと時間がかかるし子連れなのもあり、少々の出費はいたしかたない。


 あっちでは、ギルドクエストを受け、専用口から外に出るとそこはクエストエリアなのだが、こっちはリアルすぎる。


 ココで言ってる「あっち」とは通常版とβ版を含めた、従来の地域。

 「こっち」は、β版で初めてやってきた、街などの地域だからね。


 β版では、どちらのNPCも音声認識を使って、高度なAIが受け答えしてくれるのだ。

 立体視モードでは、画面が視界用に全面占領され、コマンド入力など出来ない。

 例えばアイテムボックスを開くのも「アイテムボックス、開く」とでも言わなければならない。

 自室で一人やっているときなんかはいいが、ファミレスとか外出先では、……。

 んー、不評だったんだね。なんかシャイなわしには理解できそ。


 揺れる馬車の中で、乗り物酔いつなぎでわしは回想する。

 最後のアプデの設定選択で、外部出力に対応したことを見つけたのだよ。

 ふふふ。わしは3D表示対応のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を持っていたんだ。

 早速やってみたね。しばらく使ってゲロ吐いたね。

 所謂3D酔いってやつ。

 乗り物酔いの薬が必要だなと、ドラッグストアで、薬じゃなくビールを買ってきてしまった。

 まぁ些細なことだ。グビリ。プファー、んー空きっ腹にも染み渡るぜ。

 いま? HMDは使っていないよ。

 そろそろ着く頃だ。


 幌から出て、地面に足をつけると、背伸びをした。

 アバターなので、疲れたりはしない。

 該当するのは、スタミナゲージで、こいつを注意していればいいだけだ。

 気分的なものだ。雰囲気を大切にしたいなと。体格は、標準よかすこし大きめで肩幅が広い。

 子供達に飛び降りないように言い、ボンとわしはそれぞれ下ろした。


 降りたところから、一つ目の目的地は、長い草の茂る所を進む。

 途中、幅の狭い小川にでくわした。

 川幅は2メートルほどで重ねた板で作られた橋が架けられている。

 その手前で銀髪の子が、顔を引きつらせて脚が動かなくなった。

 本人にも、怖じ気づいている自分に納得いかないのか吠えた。

「ただのタイガーホースなのじゃー」と、宣わく。


「はい、はい」

 脇の下に手を当て、足下を見せないように抱き上げるとそのまま渡りきる。

 緊張でガチガチになっているのが、よく分かった。

 色素不足で日光に弱いとか、不憫なガキだ。

 地面に下ろして、フードの上から頭をゴシゴシとしてやる。

「もう動けるか」

「いけるわい」

「大きくなったら美人さんになれよ」

「いやじゃ。美人さんは、見て触れて楽しむものじゃが、自分がなってはつまわんわい」

「ほほーっ、わかってるねぇ」

「じゃろぅ」

 げんこつをお互い当てあった。


 ペースを上げる意味もあり、ガキを肩に担ぎ上げた。

「なっ、子供扱いはやめろ」

 都合のいいときは、子供扱いしろと言うガキに、お姫様だっこがいいのかと尋ねると首を横に振った。

「その高さなら、もう少しで、植生がかわるのが分かるだろ」

「おおっ、そうじゃのぉ」

 思わぬパノラマに首を巡らせている。

「索敵か探査できるか」

「どっちも出来るわい」

「無理ならいいが頼めるか?」

「まかされた」

 ポンがうらめしげに二人を見ているのはスルーした。

 金髪幼児は察したのか距離をとっているし、体型は丸に近く、なで肩で肩に乗らない。

 ナナ○がクスクス笑う。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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