クエストに行こう
またバグフィックスらしきアプデがあったのか。
開く前に改修情報を見ようとストアにいくと、通常版を残して消えていた。
突然だな。正規版になるのが、近いのか凍結されたかだな。
興味がわいて公式サイトを開くとおしらせがあった。
理由として、端末との相性とβサーバへの負荷が予想以上だったのとUIの見直しのためとしてサービス終了が決定したそうだ。
課金もしてないし、実害は少ないが新しいフィールドへ行けなくなるのかと思うと残念に感じる。
よし。ちょっと覗いてみるか。
起動させると、ローディングが延々終わらないとか、ホストサーバが見つかりませんとか無く、通常版で最後に利用した街でログインした。
アプデの影響か、設定オプションが変化している。
停止までのタイムリミットがどれだけあるのか不安だが。今は、遊ぼう。
拠点間転送で、あの4人のいる街へ跳ぶ。
「ぅあっと!」
これからクエストに向かうパーティーとぶつかりそうになり、声が出た。
雑踏する、街の広場に出てきてしまったようだ。
見覚えある相手にギロッとにらまれて、とっさに「スマソ」と謝る。
あのオンナ冒険者だった。
ぷいっと正面を向き、パーティーを先導して離れて行く姿を少し目で追いながら、『ナナとボンの店』へ足を運ぶ。
ひねりが無く、聞かされたときは、リアクションに困って魂が抜けそうになった。
ツッコミさせて欲しいものだ。うむ。
店先で、仮想ののれんを片手ではらい、くぐるマネをして、一言。
「邪魔するでぇー」
「邪魔するんなら、帰ってっかー!」
店員のそばで、店番のお手伝いをする幼児の一人が、いつもの反応を返してきた。
相方が、客に向かってそれは、ないわーと蹴りを入れる一連のシーケンス。
「大将は、おる?」
「おるよー。呼ぼかぁ?」
「おう、頼んます」
フードを外して、銀髪の幼児がテトテトと奥に走り込んでいった。
通常版のNPCは、決められた同じ反応しかしないが、ここのNPCは、生きているように反応が返ってくる。
たしかにサーバーの負荷も尋常じゃないよなと納得。
「あー、こんにちわー。行っきませんかぁー」
奥からのそっと出てきたポンに向かって、にまっとする。
NPC相手に、なにをやってんだかと自笑する。
「ようこそー。またマルチでもいいですか」
なぜかナナ○もポン○も何度かクエストに同行する内に「ござる」ロールを止めてしまっていた。
相手によって、学習して対応を変化させるだと。このアプリ、凝り過ぎだよ。
やはり端末側よかサーバの処理負担が多いんだろう。
パソコンでなら、も少し負荷の分散ができたかもしんない……なに、考えてんだろわしw。
「いいっすよー」
クエストの難易度ランクが、こっちが低い。
あっちでG扱いの低ランククエストが、最高でEで張り出されていることもあるんだ。
実力は別にしてね。楽に報酬と貢献値が手に入るんだよ。
所謂オイシイってもんだよね。
このゲームではパーティ人数の上限はない。
報酬など頭割りになるから受託人数は少ない方が得なわけだ。
ただし難度は上がるよね。
ナナが顔を出して、簡単に挨拶を交わすとちびっ子を奥へ呼んだ。
店員に声をかけてからポンも奥に行くようだ。
「支度をしてきますから、適当に店番していてください」
「あはは、そうしますよ」
子連れだと低ランクのクエストになる。
誤算だったな。ちびっ子たちも連れて行くのか。
ナナ○とポン○はリュックを背負いいつもの恰好で出てきた。
頭部保護がバンダナなんだよな。
もう突っ込まないぞ。
この二人はわしよか一つ上のDランクだ。悔しいけれど経験が違う。
さておちびちゃん達は登録してから数回の採取だけ。なので、まだGランクだ。
パンツルックに軍手と胸当て、肘と膝にプロテクター、頭巾に、リュック。
手には採取用のクワ。腰には、ナイフを帯びている。
「ルーキーさんは、いつもより重装備ですね」
「そろそろ野生動物の多いエリアを含めて行きますので」
えっとポンを見上げる銀髪幼女は表情がこわばっていた。
大丈夫、大丈夫と肩に担ぎ上げて、機嫌取りをしょうしたが、顔面を蹴られて拒否られてしまった。
痛くはないが、嫌われているのかと思うと凹むよ。
一部始終を見ていたポンはなにか残念そうにしている。
いゃ、あんたは肩に担がないぞ。
ギルド内であれこれと、クエストを吟味する。
メインは採取対象が隣接範囲になるようにして、移動時間のロスを減らし、ちびっ子向けのすばしっこくない小動物の討伐を一つ加えた。
選んだクエストはどれもわしの技量からはずいぶんと低めだ。
しかし土地勘のない者にとっては、いい経験と情報収集ができる。
新鮮に感じるのは、あっちでは基本ソロだからかもな。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。