コレをするためのネカマじゃないんだからねっ!
覆面と変装して中にはいると、ターゲットの他に同じような境遇の者複数、とても強面する達摩男の兄とその取り巻きが2、3人てとこ。そしてわしよかLv.が倍以上もあり、装備のグレードから廃課金してるマレビトが用心棒でいた。この街の裏社会の一端なんだろうな。
(あちゃーー! こりゃ、ミッション失敗になるかも?)
で、疲れたので、結論だけ言うと、それでもなんとか全員捕獲した。というわけで、許して。
だめかな? ホントのとこ、冒頭の会話ぐらいで戦闘に入ってから、余裕無くて覚えてないんだ。
保護対象は殆ど女性だが、少年も混じる。ふむふむ、そっちの需要もあるんだね。
「ちぃーす」
「騒々しくしてたのはお前か」
「みたいっすねー」
「何のようだ」
「奴隷解放戦線(仮)から、ご協力の要請に参りましたーーっと」
「バカめ」
「えっ、なんと?」
「バカめだ」
「だから、なんですと?」
兄貴が、ターゲットの頸に、刃物を当てて、『これが見えないか、おとなしくしろ』とか言ってきたので、『どぞ』と返した。
「殺るなら、ちゃっちゃとやっちゃって。その方がアンタをぶち殺す口実になるからね」
この後、ガス玉をめいっぱい投げつけて、煙で視界が悪くなるほどの中、状態異常の耐性も高そうな敵のマレビトがのそりと近寄ってきた。
「ちよっち待ってね」
自分に跳ね返るダメージを大抵だが、ここは秘策を使った。
素早くつば広麦わらに白ワンピといういかにもなコスプレする。覆面をとり(変装だが)素顔を晒して、髪を手櫛で整えると小柄なわしは少し近寄って上目遣いに見上げる。
「ねぇ、お兄ちゃん。あたしとオニゴッコしよっ。さぁ捕まえてごらん」
身体をくるりと反転させて、朗らかな笑い声とともに軽く駆け出した。
「あははは、待てよーーー」
相手はまさかののりだ。わしは自分の中の大切なナニかが崩れていくのを感じながら、ミッションを遂行していく。
わしは距離をとりながら、ガス玉を投げつつ、ボットを裏方として手伝わせ回収を済ませていく。まぁあっちも、当てるつもりのない大ぶりだったからな。SSレアものの大剣だし当たったら、そこでお終いだと思っての余裕なんだろう。
煙で床を被い隠す程度になっているので補充も兼て逃げながら、直接当てないように足下へガス玉と中から小鳥・かわいい系小動物・ハートマークとかの視覚効果が出てくる玉を投げる。
いくら耐性があっても、いくつものガス玉を浴びたらアレだ。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるで、とうとう膝を着いた。いや、早計はよくないか。スタミナが切れただけなのかもしれない。
「どおしたのお兄ちゃん。もう遊んでくれないの」
演技かもしれないから、おそるおそる地下より、首を傾けて顔を覗くと、にまっと返して手を伸ばしてきた。
「まだだ、まだ終わらんよ」
「きゃー、ずるいよお兄ちゃん」
あははははと、楽しそうに笑い声を出すと反比例するようにわしの心は闇に近づいてゆく。
余裕のあった残り時間がもう僅かしか残っていない。
懸念するのは、無課金のわしでさえ全ての状態異常を回復するアイテムを持っていたのに、この課金プレヤーが持っていないと考えるのは容易ではない。
相手の動き方を見て、アプリには相当課金してるようだが、使っているデバイスは少し古いのか、動作の一部が欠けている。これはスキとなるか無敵期間となるのかやってみなくちゃわかんないか。
煙の中に隠れさせていた2体のボット、影分身の1体、達摩男から貰った腕箱を使って翻弄し、止めは、縦ロールに依頼したこの一見ショートソードでしかない、2本のガンソードだ。
1本には簡易とはいえライフリングを刻む。技術的難度の問題もあり先込式とあまり変わりないが、擬似的なリボルバーにして多弾式にしている。リボルバーのシリンダー内に、弾頭、火薬、発火部を一塊にして仕掛けておくのだ。まだ金属の薬莢が開発できなくて現代の銃弾と呼べるモノはなく、火縄銃の時代にあった早込めの筒、紙の早合またはペーパーカートリッジを進化させた紙製銃弾だ。
行政官の端くれである兄貴達の執務室から、幾つか書類を懐に入れた。
終わって、窓から街の灯が見え眺めて重いため息が出た。現実が重くのしかかる。
この屋敷には、正門の衛士の何人かと、各階での取りこぼし数名が残っている程度だろう。とんだミステリー事件となるだろうな。
すぐさまログアウトしたいところだが、まだだ。保護した、奴隷達の受け渡しがある。
闇の中、寄り道をした後、門をくぐらず塀を越え、速歩のスキルで、寂れて無人の村となった地へ向かった。
そこは元より、バケットの街から西、すこし遠いが道を整備すればさほど苦でもなくクエスト地にほど近く、冒険者から復興の願いがある地である。
方角の東西南北を各々スプリング、オータム、サマー、ノースを付けて表す慣習から、リーブ村といい、街から西方向にあるためオータムを冠せてオータム・リーブ呼ばれている。
近くに泉の他、小高い山があり食用となる実を付ける木も多く、漁村からのルートからも遠くない。まとまって定住する人たちさえいれば、復興は近いだろう。
村の広場には、シューロと見覚えのある者達が立つていた。魔獣となったイノシシで負傷した者達だ。彼らとはこのアバでは初対面となりボロを出さないぞと。
外敵から自営できるまで、村の警護を頼んでいる。
お飾りのリーダーである縦ロール事、アンナ嬢には別な大事な役を与えている。そんなときに限ってコケるキャラでないことを祈るしかない。
「お待たせしたね」
「用意がほぼ終わったとこでしてね、仕上げ前の休憩で待っていませんよ。そちらは仕事前の確認ですね」
「仕事は済ませてきた。さっそくで悪いけど、打ち合わせに依頼していた匿う施設と手伝うケアスタッフを案内して貰いたい」
「……ああ、それでどこまで来ているんだ」
シューロは、被保護者らの姿が見えなくて、わしの後ろを探しているが、わしはせかして、村の集会所へ案内してもらう。改装して、仮設の宿泊所にしている。
そこには、わしにとって素性はどうでもよいが、条件として信頼できる者くくりで、宗教がらみじゃなく心のケアをする者、医者など、健康がらみのスタッフを用意してもらった。
ケアスタッフのリーダー格らしい人物に声を掛ける。
「謂われなく無理矢理ひどい目に遭わされてきた方々がほとんどです。よろしくお願いしますね」
捕獲バッグから気を失ったままの保護対象をベッドの上に寝かせていく。メインターゲットの母娘もだ。
彼女たちはケアを進めながら、状況に応じて、ケアスタッフを技能を教え、この村を使って社会復帰を目指してもらう。ただすぐには、周辺の風当たりもあるだろう。
永久奴隷の烙印があっても、一部を除いて社会的な処遇は所有者次第なのだ。
縦ロールには、前所有者から譲り受ける覚え書きを領主である父親に認証してもらいに行かせたのだ。勿論、次兄が書くはずもなく、ポン○謹製の贋作だ。二次作品の完成度は本物以上だ。
計画として、民家を再生し、村民として生活をさせ、針子の適正があればいずれ、『ナナ○とポン○の店』と提携しコスプレ衣装製作とかを担っもらおうかと。
帰るべき所があり、帰りたい者はケアが済み次第、解放する。
また冒険者ギルドの出張所を置いてもらい、そちらのスタッフへも廻らせる。
勿論彼女達だけで村が成り立つはずもなく、縦ロール達に各方面の人材確保を依頼している。
その夜の内に、小間使いは眠らせたまま屋敷内に返し、私兵達は隣町の奴隷商の牢へ放り込んだ。
残り?なんか忘れてるみたいだが、眠いから忘れることにする。




