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あれやこれや

 インとアウト、男アバと女アバの切替が小刻みで、わかりにくい表現で申し訳ない。


 もう一度、服を調達しなくちゃいけないので、ログアウトをして戻ってきた。

 正直、一休みもしたいしな。HMDをはずしてトイレに行き、冷蔵庫から冷やしたプリンをだして食べた。


 こっち(リアル)の実時間とあっち(ゲーム)の時間は進み方が違う。リアルの24Hは、あっちでは12Dayになるのだ。

 3~4日分ほど昼寝した。


 ログアウト直後にウィへ近況を伝えるように添付ファイル付きのメールで依頼していたのだ。返事は次の日から、街娘の捜索が始まり、店にも幾度となく聞き込みが来たそうだ。

 縦ロールも2度ほど来たとかは、いらぬ情報だろう。


 情報と言えば、街娘が倉庫街にある倉庫の地下に連れ込まれ、仲間(?)を呼んで乱闘を行い、裏の世界の者と領主の家族に修復不可な傷をつけ忽然と姿を消した。

 そして図書館で目にしていた、王都のマークと上に描いた二つの目の視線の先に、パリス=バケットのマークがある。まぁこれは攪乱の意味を込めてだったが。なんか中央からの密偵が潜んでますよって印象を与えたかな。本物さんが来てたら、きな臭くなってスミマセンなぁと。

 こんなあたりで動いてそうだな。因みに街娘のときは、アバも少し弄って金髪碧眼でセミロング。成長したアリス風に仕上げていたが、生き残りにその姿を覚えているのは……ああ、いたか。あの達摩が2個。

 そおいやあ、縦ロールも金髪碧眼だったっけな。もう一人、フレンドに弓使いで似たのが居たっけな。


 しばらく様子を見て女アバで行くのは控えたほうがいいだろう。だが、そう思うと逆のことをしたくなる。


 いろいろ考えているとウィから人とあわせたいとメールが来た。

 男アバでギルドに転移し、向かうと想像していたとおり縦ロールが付き添いといた。



 ゲームの仕様でログイン直後は、いつもプレヤーの街からはじまる。

 ショートで栗毛黒瞳の冒険者姿に戻した女アバをパリス=バケット街の外で転移させた。中へ入った記録を公的に残させる目的のためだ。

 プレヤー特権というか、メインでもサブでも拠点登録にしたギルド内の所定位置か、立地する街にオベリスクがあれば、ソレを基点にどれぐらい距離を離すかを決められる。近ければ広場へ、遠くすれば街の外へ現れることになる。転移直後は周囲のNPCに認識障害がかかるようで、「あれ、いたのか」程度の反応になる。


「路銀が少なくなったから、稼ぎに寄った」

 旅の冒険者の定番を言い、門番に頸のタグを見せながら、儲け話はないかと問う。

 髪を数本抜かれて酒に浸した後、染色していないと認められた。

「以前来たときは、こんなことしなかったぞ。めんどくせぇなあ」

 男女を問わず冒険者にありがちな、がさつな物言いで悪態をつくと、小遣い稼ぎ程度の人捜しがあると聞かされる。


「おっしゃ、それらしいの見かけたら警邏兵に言やいいんだな」

 門番に礼を言いギルドへはいると、視線が集まった。値踏みでないことは明らかなので、何食わぬ態度でお気にのカウンターに行き、「しばらくこの街でやっかいになる」と滞在申告をした。ギルド内でも食事は可能だがついでに酒の肴のうまい安い飯屋と安宿をいくつか聞き出す。

「ありがと、たすかるよ」

 掲示板の前で腰に手を当ててふんぞり返り、中級のカードに目を通す。このアバで持つジョブで一番レベルの高いのが、片手剣に盾のファイターだ。双剣使いだとまずいなという考えもあった。

 このころになると金髪碧眼の街娘とは月とすっぽんと判断されたようで、新参者だからという好奇の目でしか見られていない。


 声を掛けられるのが嫌なので、「腹減ったなぁ。まずはめしだー」とつぶやいて外に飛び出した。確かに街の雰囲気は以前と変わっていた。至る所からジロジロと見られている。少し前に、男アバで来たときも街からおねーちゃんの姿が激減していた。

 違っているのは、自分に向けられる、ものすごい数の様々な視線だ。


 ギルドから出てきたとこから、本職と素人にしばらくつけられていた。本職はギルドから出てきたという点とこれ見よがしに首から提げている冒険者のタグで早めに他へと去っていった。素人をまくのはたやすい。露天屋台で、買い食いを続けながら人混みの中をいろんな方向に移動すると見失ってくれたようだ。

 移動する人混みの中で、ログアウトする。



 夜の時間帯になった頃、ログインする。あの姿をプリセットでメモリーしていた。メインのジョブを忍者へ変える。

 いつも転送はお任せランダムだが、普段使わないオプションで、方角と距離を指定する。

 ドンピシャだった。すこしズレて欲しかった水の中。もしやと息を止めていて良かった。

 昼間に、水堀のぎりぎりで方角と距離を計測していたのを少し補正していた。

 縦ロールの依頼を受けての行動だ。断っても良かったのだが、この街が王都に目を付けられているのは事実のようで、ウィとミィ、そしてポン○とナナ○の生活に多少なりとも影響が出るかもしれない。


 内容は、縦ロールの義兄の屋敷から、かの中央官僚の妻子を救出するミッションだ。最初に話しを聞いたときに、命はあっても心身ともにボロボロなのに助ける価値はあるのかと返すと、後は縦ロール達が何とかするというので、身柄を引き渡すことにとどめる形になりそうだったのだが。



 ナナ○とポン○の店の応接室を借りて、わしの対面に縦ロールとシューロで話し合った。

「わしに忍び込むなんて芸当は出来ないぞ。人と闘ったこともないし正面突破すら無理だしな」

 かいかぶりすぎだ。マレビトだからってわしをスーパーマンと勘違いしている。それに男アバに隠密行動が可能なスキル持ちはいない。

 目が点になった縦ロールを見て、満足するわしがいた。

 気に入らないことがある。助けるのは、その母娘だけで、他の謂われのない罪で奴隷に落とされた者達には救済の手は出さないのかということだ。


 拉致られてから地下でのログアウトまで、録画していた。母娘と縦ロール似のくだりを編集し、メールに添付してウィに送り、それを縦ロールに見せた事に始まる。

 わしとしては、この世界のことは、現地人であるあんたらでやってクレとしておきたかったのだがねえ。


 そうか。ウィがわしから送られた映像としたからだな。


 直接は関係ないが、酒場で言付かっただけだといいはろう。

 まるで犯人グループと関係あるとみたいじゃないか。あれは、このアバじゃないからな。

 そのときの人物には、以後会ってないから再接近は無理だぞと。


 だから、心当たりがある人材に依頼する形でどうだろうかねぇと。


 そして、伝言役に徹した形をとった。


「引き受けるに当たって、出来れば準備してもらえないかって物があるんだが」

 わしは、女アバが地下で没収した銃をテーブルの上に置き言葉を続けた。

「預かり物なんだがね、見覚えあるかい」

 縦ロールは横に振る。

「見覚えありませんわ」

「君の兄さんが持っていたものだ。決行までにこれをこんな風に加工して欲しいそうだ」

 簡単に描いたメモを開いて、可能なら望むレベルと妥協できるレベルを説明した。

「さて、報酬なんだか……」


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