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そうだ、図書館へ行こう!

 向かい合うように抱き上げ、そのまま左側にずらし、お尻の下で支える形をとった。


 周囲から二人はどうとらえられるのだろうか。

 設定はAge.17。歳の離れた姉妹当たりか。従姉妹あたりが妥当か。


 飲み物を買い足し、商業域を越える。公園がつづく更に奥が目的地だ。

 木陰が多くなり、風が気持ちいい。見つけたベンチにすこし休憩する。

 この程度のVRユニットですら、すげえ再現力だな。

 ただ公園には、爆発しやがれと言いたくなる場面もちらほら。


 抱き上げているのは三歳児でも、こちらも華奢な体つきだから、見た目に負担感があるかもしれないが、今回もステータスバーを視野の端に置き、スタミナが下がってくれば、ペースを落としたり休憩を挟み、ひときわ大きな建物の前まで来た。

 建物には多くのガーゴイル像、入口には双頭のオオカミ像が飾られている。


「着いたぞ」

 ウィを降ろす。彼女は、ぽかんと開けた口のまま、目深に被った麦わらを少し上へとずらしながら建物を見上げた。

「おおっ、ここで得た情報で少しでも進展すればよいのだがのぉ」

 ここに来たかったのは、わしでなくウィだった。記憶の共有で知っていたので、声を掛けたのだが、しかし。

「ねぇねぇ、どおして見ず知らずなのに着いてきたのかなぁ」

「えっ……? あっ!」

 わしを見上げ、まじまじと顔を見てやっと初対面だと気づいたようだ。

「どおして?」

「そのぉ……、優しそうなお姉さん……だから……?」

 硬い笑顔で、身体がガチガチになっているのがバレバレだ。

 ぎくしゃくした動きになったが、その中に見覚えのある動作が含まれている。

 他人には不可視のアイテムボックスから何かを出そうとしているウィの頭を掌で掴んだ。


「こんなところで、武器を出しちゃいけないよ」

 頭を掴んでいる指に力を込めた。所謂アイアンクローってやつ。

「っ痛ぅ……」


「わしは痛くないよ」

 何かに気づいて、わしをまじまじと見上げる。

「知ってる。でもそれ「わしのオリジナル」」

 ここまでやれば分かったみたいだ。


「じゃれるのはここまでにして、中に入いろうか」

 こくんと頷く。

 物でつられて知らない者にホイホイついてく、あとでしっかり、この危機意識の無さを正さねばなるまい。


 入ると大きな受付があり、利用料を支払うと手の甲に無色のスタンプを押された。

 このスタンプがあると、今日一日の出入りは自由になるという。

 館内に食堂はなく、お昼をまたいで利用する場合などに効果がある。どっかで聞いたことがあるのは気のせいだ。


 利用料は、当図書館の運営に役立ってますっうポスターも貼られている。

 残念ながら、蔵書の貸し出しはない。もし持ち出そうとすると、なにかの仕掛けが作動するそうだ。

 ウィがガーゴイルとオオカミに魔力を感じると言っていたから、関係あるのかもしれない。使役ゴーレムかなと想像した。


 書棚ではウィをおぶったり肩車をしたりと、めぼしい書籍を取り出した。

 選んだのは文字の少ない絵本、魔法入門と伝承についての本だ。


 ウィは絵本を持ち空いている席の傍らに立ち、わしが腰掛けるのを待つ。

 そしてウィが膝の上に乗り、机の上で絵本を開き、一文字ずつ指を添えて小声で何度も読む。

 わしはその横に自分の持ってきた本を置きウィにも見えるようにすこし立て気味に開いた。


 ウィの幼児としてのプニプニとした肉感と触感が膝の上にある。普段のアバなら……、やめとこう。

 ウィはわしの双球をヘッドレストにしている。何度も弾ませて弾力を楽しんでいる。

「こぉーら、図書館内では静にしましょう」

 小声で耳元でつぶやき、息をふぅっと吹きかけた。

 ビクッと身体を震わせて、わしの言わんとしていることを悟ったようだ。


 実のところ図書館に来たかったのはウィで、わしはその事を知っていたからだ。

 年齢的に幼児であるウィが一人で来るには注目を集める。そこで一方的だったが、わしが連れて来る形でカモフラージュになったのだ。


 ウィは声を出しているのだが、絵本を読むフリをして、生活魔法とその応用を読んでいる。

 声は、この世界の文字を知らないわしに対してだ。

 二人とも、言葉と文章はギフトのスキルで翻訳されて意味は分かってしまうが、そもそもの文字が数字も含めて分からない。

 この世界のフツウを少しでも知っておいて、時間以外にソンは無いだろう。

 現役の保育園児に教えを請うわし。


 わしの場合、プレヤーなので魔法は条件を満たせば、自動で覚え、コマンドから選択して使うが、ウィの場合は、実体付きでこの世界にいるから、ここの魔法も使える可能性があった。

 可否は別として知らないよか、知ってる方が、便利だろう。


 ウィとミィは見かけ通りのエルフで幼児で、少しだけ両親から冒険者として手ほどきを受けている設定?


 重要そうなことをウィはメモ帳に書き写している。

 一人ではたいへんなので、わしはスクショで応援する。


 帰ったら早速、手に入れた生活魔法の基礎を試すらしい。


 そして創世神話について。


 幾つか見つけた多くの本では、気づくと現在と同じ環境のまま数百年は続いているがそれ以上は記録がない。

 各人種ともに、各々の役割を持って生まれてきて、それ以上でも位下でもないとされる。


 装丁の立派な、『聖者教会』監修の本では、魔の蔓延るこの地に神からの使いが降り立ち平定し、人間の祖となったとある。

 『魔の多くを討つが滅せず、後に魔が現れるたび、神からの使いを呼びこれを調伏する。しかし未だ滅せず。しかし太陽と月、そして星(地水火風空)の使いが終止符打つ……』わしの翻訳スキルでもこの程度だ。

 最後のは、要領得ないがパーティ構成を表せているのだろう。一般的には、最後のパーティは、勇者・聖女・賢者となっている。『聖者教会』があるから、聖者は含まれなかったのかも。


 地図を見つけたので、広域で周辺地図をスクショした。

 ついでに王都と周辺諸国、情勢などもすこしな。


 旅人の不思議な話で、何も無かったところに広大な結界が張られ、入れないが中には森だとか見たことのない遺跡が出現するが、しばらくすると何事もなく、消え去り元の風景に戻るらしい。

 モンスターと闘う人影を見ただとか。

 この現象は、どことなくインスタント・ダンジョンを連想させる。


 さて今日はこれぐらいかな。


 図書館を出ると陽は傾き始めているが、夕方と言うにはまだ早い時刻。だが日差しは幾分和らいでいる。


 途中、ウィの水分補給に甘ったるい飲み物を飲ませながら、店に送り届けた。


 日が暮れるまでまだ少しあるから、ぶらぶらすることにした。


 路地裏を曲がったら視界を塞がれ、衝撃を感じて意識を手放した。


うっかりと、「ログイン」と「ログアウト」にする予定が、「ログオン」と「ログオフ」の言葉が混じっています。修正がまだなところは、適宜都合のいい方に読み直してください。


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