家出少女
私がいたら父と母の家の腹に火をつけてしまうの。部屋が炎症して身を焼いてしまうの。だから出たのよ。ギターが弾けて歌えるようになってからは生意気にもっと自由に振る舞えるようになったわ。軽率に騒いだり何事もこなしていくようにもね。
一つのところで苦しむよりいろんな場所で別の角度から全身批判されて苦しんだ方がましよ、一つのところじゃ深すぎるから 別の場所だしね 非難されるところが いろんなところが新鮮な気持ちになるのよ
常に人前に出ることに恐れはあまりないわ。少しはあるけど 毎回毎回隅っこに行って体が隠れる隙間に頭を打ち付け続けるなんて 見ている方は気味悪がって なんでかわからず通り過ぎた後でも少しの間引きずってしまうほどよ。 私の彼がそうだったけど、頑なに信じていたわ そうすることであの人達の気持ちと無感覚に陥らないためにビクビクと感じていられるようにするためには必要なんだよ。って
ほんとうは無感覚になって窪みに足を取られていたのよ お分かりだと思うけど全然健康的じゃないし おかしくなりそうになることしか そこからはないように思えるわ 無性格 理論詰めで自信を裁判官のように仕立てたい 社会の最下層の労働者を気取った 被害者の声を体現したい 犯罪を身近に感じている 危ない男 そんなところね 店の裏にはそういう人達がうじゃうじゃ蠢いているなんてご飯が不味くなるわ お客さんも気づいていたりするものよ
彼とは距離を置いてるの 人前に出るってことがそんな破滅的じゃなくてもいいってことがわかっていないの ビクビクしないと人前にでちゃいけないなんて思い込みも 何か失って傷ついてしまう危険を察し続けるなんて 人と話せるわけないわ
別に嘘でいいのよ 社会上のマナーなんて それこそ武器のように身を守る気の利いたことにしておけばいいの ほんとに魂とかが傷ついてしまうんだったら誰も店頭で働きやしないわ 演技ってことを知らないと駄目よ 人の中に行き交うところがあるわ 触れるだけで やましいことやそんな危険なことはないのよ それを知らなきゃ。 どこへも行けやしないわ
それにそんなに我慢も待つことも私にはできないの 感心しちゃうわ それこそ 魂を傷つけてるじゃない
まったくこっちが気が滅入りそうよ 遊びに行きたいわ 1日でも同じ場所にいないこと 同じ仕事をしないこと 人前に全身をさらけ出すこと 恋人といること 窓から肘をついて車で走り去るわ 人間らしさを得るためにみんな店頭で働いているように見えていとおしくなる。 きっとそうよ
1日の達成感が何よりも健康にするんじゃないかしら そんな疲れた顔をしないで (私達は人間で) いとおしい人達。