6話 神装【ケリュケイオン】
妹である茜の部屋に手紙を置き、自室に戻った後、すぐに準備を整え城内から抜け出した俺は、城門付近の木に隠れていた。
「くぁ~‥‥デッカイ門だなぁ」
目の前にそびえ立つ門を木からはみ出ないように見上げる。
「こんな門どうやって門番に見つからずに抜け出せっていうんだよ‥‥な~んてな、そこで神装サマのお出ましだ」
神装【アース】
俺の隠しスキルであり、本来であればちゃんと使用する前に死んでいたかもしれないと考えると少し冷や汗が流れる。なにせ、こいつを初めて使用したとき、このスキルを使用するにあたり必要な情報を全て己の頭のなかに叩き込むのだ。並列思考と思考加速。この2つがなければ恐らく廃人になっていただろう。しかし、お陰で思考系2つのスキルがレベル3に上がり神装【アース】の使用法も理解できた。この強さを考えると死にかけるのも必要なのかもしれないと思える。
「まぁ、死んじまったら意味が無いんだがな」
そう言いながら目を瞑り神装の力を引き出していく。
自身の体から魔力が抜けていく感覚がして目を開くと、俺の手には神装【ケリュケイオン】がいつの間にか握られていた。
神装【ケリュケイオン】、ギリシア神話における神々の伝令であるヘルメスが所持する神装である。
俺の力、神装【アース】によって“本物”のケリュケイオンを“模造”し生み出されたものであり、その模造された神装の本来の持ち神の能力を再現。装備することでその力が付与される。
つまり、今俺の手にある模造品のケリュケイオンは本物とは全く異なる力を宿すことになる。だから、ケリュケイオン本来の能力である、死者蘇生などは使用することが出来ない。
そして、今回俺が使うケリュケイオンにはヘルメスの力が込められている。
盗賊の神とも呼ばれるヘルメスの力を使い、この場からの脱出を試みようとしたのだ。
「流石神装【アース】って所かな。しかし‥‥[地球の神々の能力をコピーした神装を召喚し、装備した者にその神々の能力を付与することができる]なんて馬鹿げた力を俺なんかに渡しても良かったのかね?」
まぁそのお陰で異世界で好き放題できそうなんだけどね。
これで城前の門番を素通りできると思っていたら、何やら馬車がやってきた模様。馬車の
窓から少女の顔が見える。とびきりの美少女だ。とりあえず名前を知りたくなり、神眼を発動させたのだが‥‥。
名前:メルティ
職業:聖女
Lv:24
種族:人間
状態異常:なし
―スキル―
指揮Lv1
水魔法Lv2
神聖魔法Lv1
降神術LvMAX
神装【ウィスダム】
―称号―
神装保持者【神装装備時発動:全能力値UP(極大)】
聖女【常時発動:全能力値UP(大)】
読書家【常時発動:魔力上昇(中)】
まさか聖女だとは思わなかった。しかし、聖女にしてはやたらとスキルの弱さが目についてしまう。魔法の聖女が強すぎるのか?それともこの聖女が弱すぎるのか?
そう考えている間に馬車は遠ざかって行く。
ようやく城門前に門番しかいなくなったところで“気配を完全に断ち”門の柱を駆ける。
ついに垂直の壁を走れるようになってしまったか‥‥
そしてやっとこさ城から脱出することに成功し、目的地を決めようとして重大な失態に気が付く。
「俺地図持ってないし、何処に行けば何があるとか全くわからないぞ‥‥」
しかし、今更悩んだところでどうにもならない。ならば行くしかあるまい。未開の地へ!
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