5話 目覚めし保持者
良い点悪い点どしどし言ってやってください。
目が覚める。やけに冷静だ……いや、冷静に見せてはいるが、内心では歓喜しており、優越感、全能感で満たされている。それもそうだろう。なにせ俺は……。
「ステータス」
名前:全上院立
職業:なし
Lv:1
種族:人間?
状態異常:なし
―スキル―
神眼Lv1
神気Lv1
並列思考Lv3
思考加速Lv3
異世界言語理解LvMAX
解析LvMAX
―隠しスキル―
神装【アース】
―称号―
巻き込まれし者【常時発動:運気低下(中)】
神装【アース】を耐えし者【常時発動:全能力値UP(極大)】
神装保持者【常時発動:全能力値UP(極大)】
まずはこの圧倒的なステータス。何にも負ける気がしない。だがLvが上の格上が相手なら?それも心配はない。俺には神装【アース】があるのだから‥‥。
などと自身に酔っていると、コンッコンッとドアをノックする音が聞こえる。恐らく俺を心配した誰かかもしれないと思いドアノブを回す。
するとそこにいたのはアルトニア第一王女サーリャ=アルトニアである。
「突然申し訳ございません。お体の具合の方はいかがでしょうか?」
俺のことを心配してきた?複数いる勇者の一人でしかない俺に?少し疑問を抱きながらも対応する。
「はい、こちらの部屋に運んでくださった方のお陰でなんとか」
「それは良かったです。その、少し聞きたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「? はい。答えられるものであれば何にでも」
聞きたいこと?この王女様と会話らしい会話をしたのは俺がぶっ倒れる直前しかない。それに特に気に障ったようなことを口走ったつもりもないが‥‥。
「実はあなた様が倒れられる直前に神気を感知したのですが何か思い当たることはないでしょうか?」
まずい。そう思った俺はスキル並列思考、思考加速をフル活用しながらも、この場での行動を決めていく。まずは彼女のステータス。鑑定では見えない事を神眼ならば全てを暴くことができる。
名前:サーリャ=アルトニア
職業:王女、聖女
Lv:58
種族:人間
状態異常:なし
―スキル―
指揮Lv5
火魔法Lv5
水魔法Lv6
風魔法Lv8
土魔法Lv4
光魔法Lv7
闇魔法Lv6
神聖魔法Lv2
降神術LvMAX
神装【ソーサリィ】
―称号―
神装保持者【神装装備時発動:全能力値UP(極大)】
王族【常時発動:成長速度UP(絶大)】
王女【常時発動:魅了(大)】
聖女【常時発動:全能力値UP(大)】
いやはやお強い。だがLv58の時点でこのステータスだと考えれば自分のステータスと比べてしまえばなんてこともなく思える。しかし降神術か‥‥。これは気をつけたほうがいいな。そして【称号:王族】。ゲームをプレイしていると王族との戦闘になったりする場面も出てきて、こいつ城に籠もってるくせにやけにレベル高いなと思ったことが何度もあるが、この称号の仕業だな。間違いない。
「神気‥‥というのが何なのかわかりませんが、俺の目の前に職業勇者の青年がいたのですが、恐らく彼のスキルか何かじゃないでしょうか?」
「そうですか‥‥。情報ありがとうございます。それでは、お体をお大事にしてくださいませ」
とりあえず、神気のことはあのガキに擦り付けることに成功したな。反省はしている(大嘘)。
しかし、これから先どうするか‥‥。お約束としてはまず、この城から出る。そして出会い!これは外せねぇなぁ。しかし妹である茜をどうするかだ。奴がついてくることにより、お約束その2である出会いがなくなってしまう可能性もなくはない‥‥。よし、手紙を置いて茜も置いていこう。
黙々とこの城から出ていく準備を整え、置き手紙も完成し、茜の部屋に行く途中、それは起きた。
「……迷った」
忘れていた。自分が自他ともに認める方向音痴であることを。
「やばいな。どうしてこうなった」
自身の所為である。
「くそう、一体どこに‥‥」
茜の部屋はあるんだと口に出そうとすると、サーリャ王女の後ろ姿が見える。
「こっち王族の部屋か?じゃあ反対側に来ちまってたか」
そうして大体の位置を把握できて戻ろうとしたが‥‥どうにも王女の動きがおかしい。まるで、誰かに見られることを警戒しているようにみえる。
「‥‥嫌な予感しかしない。だがここでストーキングしてこそ漢‥‥そうだろ?」
そう馬鹿なことを考えながらもこっそりと後をつけて行く。そうすると、王女はある部屋で周りをぐるっと見渡した後、その場所へと入ってゆく。それを見た俺はもちろんその部屋で聞き耳を立てる。
「もうよろしいですよ。ええ、大丈夫。誰もついてきていないわ」
誰と喋っているのかわからん。後済まないな、俺につけられてたぜ。
「勇者を召喚はしたけれど本当に大丈夫なのですか?私達の言いなりになりそうな方は確かにいましたが」
おいおいおい、お約束な展開になってきたんじゃないか?
「職業が勇者の神気を操るかもしれない青年。彼ならすっかり私のために闘うと意気込んでくれてます。お陰で殆どの方が私の言うことを聞いてくれるでしょう」
‥‥あの馬鹿はホントに‥‥ちゃんと考えろって言っただろうが‥‥。いや、だがまだ女教師がいる!教師権限で生徒たちを守るのだ!
「そうですね。教師の方は生徒たちを危険な目に合わせたくないと反発していましたが、なんとか押さえ込むことが出来ましたね」
‥‥お、女教師ーーーー!そんなバカな。
「後は、途中で倒れられたあの方。あの人は常に疑いの眼差しで私を見ていたので注意が必要かもしれませんね」
俺も目をつけられてたー!いや、まぁ今日出ていくし関係ないけどさ。
「今日の晩に来る予定の【知恵の聖女】彼女の動向は――――」
ん、俺達と関係ない話になったな。とりあえず神装【ソーサリィ】の使い手である聖女‥‥サーリャ王女は恐らく敵だ。茜にはおとなしくいう事聞いとけとでも手紙に追加しとけばいいか。
そして、俺は茜の部屋へと行くのであった。