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第八話「感激の怜奈」

 今の時代、紙媒体の書籍というものは珍しい存在だった。そのような本を出すのは余程のことであった。寿美枝の家にあった本は、一般には公開できない事実を記録したもので、怜奈が読んでいたのは祖母・麻紀に関するものだった。


 麻紀が機兵隊に入ったのは適応力があったのと母の寿美枝を助けるためで、戦闘そのものが嫌いだった。そのことは公になっていないことだった。しかも怜奈の母である広海のことをいつも気にしていたということが書かれていた。


 そのような事を母の広海からは一切聞いた事が無かった。いつも聞かされていたのは、幼くして捨てられたのと一緒だ、だって死ぬのがわかるような戦地に行ったのだからと。でも怜奈の読んでいた本には、本当に不意打ちを食らった仲間を助けるため、自分も最後に脱出するはずだったのに、結果として犠牲になったという事の次第が書かれていた。


 「お前の祖母の麻紀だが、お前の年頃はもっとしっかりしていたし、凛々しかったぞ。お前は麻紀の生まれ変わりみたいに瓜二つだけど・・・まあ平和な時代なんだから当然かもしれない。あんな戦闘能力が必要になるような時代なんか二度とごめんだし」


 そういって寿美枝は怜奈の横にあった雑誌を拾い上げてみたところ、思わぬものに丸をしていた。それはマシンガールプロレスラーに関する記事だった。


 「なんだあ、お前、それに興味があるんかよ?」


 そういったら怜奈は首を縦に振った。すると別の雑誌を開いていた。そこにはマシンガールプロレスラーの養成施設入学の広告があった。しかも「グローヴァル・メタルテック」とはライバル関係にあるところだった。


 「なんだそりゃ? うちじゃねえだろう。そりゃ、うちがやっている構成コースは入学時の審査が厳しいし、実際にレビューするのも難しい! だけどその広告の養成施設はなあ金ばっかりとって実際にレビューするのが難しいところじゃぞ! まあ、お前のグウタラな状態じゃあ、そこも入れないだろうな。ワシもお前の母親も金なんか出さんからな」


 そういったところで寿美枝はある考えが浮かんだ。どうせ家で手伝いもせずお菓子を食べてグウタラして暮らしているぐらいなら、いっそうのこと養成施設「グローヴァル・メタルテック・テクニカル・スクール」にぶち込んでやろうと思った。

 どうせギブアップするか適応能力なしと判断されるかして脱落するかもしれないけど、少しの間でも鍛えてもらえば根性も少しはマシになるといいかなと。そう考えた寿美枝は怜奈にこういった。


 「そうか?お前マシンガールになりたいのか? そいならやらせてやろうじゃないか? どうせ、失うものなんかないのだろうお前には。そしたら次のクラスからはいりんさい!」


 寿美枝のその言葉に怜奈は感激しているような表情だった。思えば、この頃の怜奈は自分の言葉で話すことはない少女だった。


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