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第一話 「閉じ込められた?」

 予定では全26話を予定しています。これから引きこもりの怜奈が成長する物語ですのでご声援をお願いいたします。

 夏の昼下がり、一人の老婆が田舎道を手押し車を押していた。直前まで夏野菜を植えた菜園で草むしりをしていたが、携帯が至急来て欲しいとのメッセージを受け取ったので、作業服に麦わら帽子という姿のままだった。手押し車にはさっき取ったばっかりのトマトが沢山乗っていたが、アシストスーツのアシストなしに軽々と押していた。彼女は歳の割りには体力があるようであったが、腰は大きく曲がっていた。


 その日青い夏空が広がり遠くには入道雲が立ち上るかのようにそびえていた。彼女は本当にゆっくりとした足取りで畑脇の道を進んでいた。どうもそれ以上のスピードはでそうになかった。ここは、山林の間に川に沿って畑や家が所々点在しており、本当に寂しいところであったが、小高い丘の上にある巨大な施設は別であった。そこは老婆が設立した団体が運営する先端技術の粋を集めた施設だった。


 その施設は巨大なドーム状をしており、周囲の風景から見れば異世界から飛来したような建築物だった。口の悪い地元住民からは「墜落してきた宇宙船」などと揶揄されていた。この施設の入り口から、つなぎの作業服に白衣といういでたちの女性が飛び出してきた。


 「会長、どこにおられるのかを連絡していただいたらお迎えにあがりますよ! いくら足腰が丈夫で立つからと言ってこっちに向かう途中に熱中症で倒れられたら、私らの責任問題になりますから。それに家庭菜園の域を超えるほど畑をするのは、今年でおやめください」


 会長といわれた老婆は本年八十五歳の武村寿美枝たけむらすみえだった。彼女は世界有数のパワードスーツメーカーの「グローヴァル・メタルテック」の創業者夫人であるが、かつて武装パワードスーツで身を固め戦場を駆け巡った女戦士でもあった。夫に先立たれた後は総帥として経済界で活躍していたが、今は経営そのものは息子や娘達に任せていた。ただ、いつも来るこの団体の施設だけは別で、会長職にもう三十年近く留まっていた。


 「山川さん、気を使いなさんな! わしはお迎えがいつ来たって驚くことではない。それが天命ということでいいじゃないか。そろそろ夫や昔の戦友と一緒にあの世で楽しくやりたいんだから。ところで、新入りの女の子に問題があったというメールが来たけどどういうことなんじゃ? 来てから説明するということだけじゃわからんじゃろによ。なにか言いにくい事なんだろ! あんたが、都合の悪い事を報告する際、肝心な事を書いてよこさん癖がでているぞ」


 作業服に白衣を着た山川聡美は「グローヴァル・メタルテック」が運営するプロ格闘技団体「グローヴァル・メタルガール」の専属メカニックの一人で、主に新人マシンガールレスラーをサポートする責任者だった。この団体が行うマシンガールプロレスとは女性がパワードスーツを着用し戦う格闘技で、二十一世紀末の現在、世界中で人気を集めていた。彼女は女性を戦士にするパワードスーツをメンテナンスをしていた。この施設は新人の研修から所属レスラーのトレーニングや新型スーツの開発まで一手に行う団体の本拠地だった。


 「実はその、申しにくい事なんですが、会長の曾孫ひまご怜奈れいなさんの事です」


 「なんじゃい、あの引きこもり娘の怜奈か? 今年高校に上がったと思ったらいきなり登校拒否になったん親不孝な奴か。まあ親も親なら子も子だわ、まったくもう! その怜奈がどうなったんというんじゃ? ここにぶち込んで根性を鍛えなおそうと思っていたが、なんか迷惑をかけるような事でもしたんかい? まあ、研修生から上のステージには行かせないと決めただろ今朝!」


 「はい、そのように聞いておりました。怜奈さんは成績は程々でも取り立てて優秀でもないし、他の有望な研修生に番を譲れということでしたから、そのようにしていました。しかし第六十六期生のために準備していたスーツの素体調整の時の話ですが、あのーそのー何故か選抜されていた竹上麗那たけがみ れいな研修生がいなくなった代わりに・・・怜奈さんにいつのまにか入れ替わっていたようでして、機械娘の中に閉じ込められたのです! 作業の途中ですり替わりに気付いたのですが、装置を止めることが出来ないので続行しました」


 このとき聡美が言った機械娘というのは、文字どうり機械の身体の中に閉じ込められた女性のことで、中身は人間のままでも、外見上はロボットのような姿にされる事を意味していた。マシンガールプロレスには様々な種目や階級が存在していたが、職業としてマシンガールレスラーになる場合、適応能力の有無を実戦で確認するため、研修生が次のステージの実習生になるためには、全身を機械の外骨格で覆われた機械娘になることが義務付けられていたのだ。

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