ルミナの謎
ルミナの素性を確かめるべく、アクト達は後をつける事にした。
後をつけることに対し後ろめたい気持ちもあったが、ルミナの本当の気持ちを確かめたいという気持ちの方が強かった。
ルミナが向かっていたのは街外れの小さな村だった。
決して裕福とは言えないその村のようだったが、村人達は笑顔が溢れていた。
「お久しぶりです。お祖父様」
ルミナは優しい笑みで声を掛けた。
「戻って来られたのだな。元気そうで何よりじゃ」
老人は嬉しそうにルミナの手を取った。
「皆が喜ぶだろう。今日は宴をしなくては」
「いえ、今日は任務の前に顔を出しただけです。村のみんなが元気そうで良かった」
ルミナは辺りを見渡し、笑顔で言った。
「また任務ですか……。無理だけはしてはなりませんぞ?あなた様は女性なのだから」
老人は心配そうにルミナを見つめる。その気持ちを重く受け止めるルミナ。老人の手を優しく握り返し、そっと頷く。
「ありがとう。絶対にまた戻って来る。だから待ってて」
そう言ってルミナは村人達に声を掛けながら村を後にした。
その一部始終を見たアクト達はしばらく黙っていた。
自分達への態度とは違い、優しく穏やかだったルミナを見て、正体を突き止めるはずが更に混乱を招いてしまった。
すると、先ほどルミナと会話をしていた老人が近寄って来た。
「貴方方はもしやルミナ様のお知り合いですか?」
「 ルミナ様!?」
サーシャは大声をあげた。
「えぇ。彼女はこの村の出身なのですか?」
クロートはサーシャの前に立ち、老人に聞いた。
「貴方方の素姓が分からないままお教えする事は出来ません。何故そのような事を知りたいのですか?」
そう言う老人の瞳は疑念に溢れていた。
「僕達は傭兵をしています。今回の任務でルミナさんと出会ったのですが…」
アクトは老人に自分達の事を説明した。老人はその言葉をしっかりと聞いていた。そして、何かを確信したように頷く。
「貴方の言葉には嘘は無いでしょう。きっとルミナ様もそれは分かっておいでだ。私がお教えできることは少ししか有りませんが、それでもよろしいのならついて来なさい」
アクト達は老人の後に続いた。
「まず、ルミナ様はこの村の生まれではありません。モアナ前領主様の1人娘様です。それ以上は私の口からは申し上げることはできません」
老人は寂しそうな表情で外を見つめた。
アクト達はルミナがこの街の領主の娘という事実を聞かされ再び意見が割れた。
エドワード伯爵に手をかしている。ルミナはそんな事をしない。心の中ではそう否定したくとも、疑念もその心に絡みついていった。