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異変の始まり

初めての投稿なので、温かい気持ちで読んで頂けたら嬉しいです。

もし良ければ、感想もお願いします!

この世には2つの世界がある。我々が暮らす現実の世界。そして、人々の思いで作られたもう一つの世界。2つの世界は決して交わる事は無い。この世の秩序がある限り世界は別々の道を進むのだ。しかし、その秩序はある人物によって壊される事になる。ゆっくりと、確実にこの2つの世界は進むべきではない道に足を踏み入れて行く。



自然豊かな国、"フュセー"。人々は共に助け合い、幸せに暮らしていた。そんな国の城下町"ローゼ"にある酒場から賑やかな声が聞こえてきた。

酒場には、4人の若者が居た。赤い髪の女性がビールを一気に飲み干し、ジョッキをドンっと机に置いた。

「なあクロート!!アクトの奴は何処に行ったんだ?」

両肩に刺青がある男性、クロートは酒の入ったグラスを置く。

「外の空気を吸いに行った。そろそろ帰って来るだろう」

その返答に女性はつまらなそうに再びビールに口を付ける。

「サーシャさん……お酒は控えた方がいいと思いますよ?」

サーシャと呼ばれた赤髪の女性はムスゥと表情を曇らせる。しかし、酒を飲む事は決してやめない。

「何だよ珊瑚!酒は命の源だぜ?やめるなんて無理無理」

先ほどサーシャに注意した黒髪の少女、珊瑚はため息をつく。毎日のように大量の酒を飲むサーシャを心配し、いつもやめるように言っているのだが……。サーシャは一切聞く耳持たない。

「サーシャ。酒を飲むのはいいが、二日酔いにはなるなよ?」

クロートは苦笑いをしながら問いかける。

「うるせーなクロート!!アタシはそんなへましねぇよ!」

サーシャはクロートに怒りをぶつけた。

「いらっしゃいませ!」

酒場の扉が開き、女性店員が席に案内する。

「ただいま」

案内された青年は騒いでいるサーシャ達に声を掛けた。

「アクトさん!お帰りなさい」

珊瑚は青年に気づき、返事をする。

「遅かったね」

長髪の青年、リヤンは読んでいた本を閉じ、アクトの方に向き直った。

「風にあたっていたら遅くなっちゃったんだ」

そんな会話をして、とても和やかな雰囲気が酒場全体を包み込んでいた。しかし、クロートの一言で彼らの空気が一気に変わる。

「全員が揃った所で明日からの任務についての説明をする」

皆の顔に緊張がはしる。

彼らは傭兵として旅をしている。そして明日、新たな依頼者の元へ向かうことになっている。

「今回の依頼者はエドワード伯爵だ。伯爵が納める町で、大蛇が町の人を襲っているらしい」

「大蛇?」

アクトは椅子に座ったまま聞く。

「そうだ。細かい事は分からないが、今回は手強い相手になるだろう」

クロートの表情は険しいものだった。リーダーである彼をそう言わせるという事は、より危険な任務ということだ。魔物の討伐が多い彼らの任務にはもちろん危険がつきものだ。しかし、今回はその比でないのだろう。

皆の表情からはそれ相応の覚悟が見て取れた。

そしてその後、彼らは明日からの戦いの準備を始めるのであった。



任務遂行の為、アクト達はエドワード伯爵が納める"モアナ"に向かっていた。

モアナは大きな湖という意味があり、町近くには美しい湖がある素晴らしい所だった。

「素敵な所ですね。私の故郷の様に自然豊かです」

珊瑚は広大な自然を見渡しながら懐かしんだ。

「日本国ってこんな感じなのかい?」

アクトは珊瑚の歩幅に合わせ、問いかける。

珊瑚はこのフュセーのある大陸出身ではない。珊瑚だけではなく、サーシャ、リヤンもそれぞれ別の大陸出身だ。

「はい!日本国は自然と人が一緒に暮らしている素晴らしい所です!」

珊瑚は嬉しそうに故郷の話をする。幼い珊瑚にとって、故郷への思いは小さな心の中で大きく膨らんでいる。

そんな話をしていると、目的地である"魔の洞窟"と呼ばれる洞窟の入口付近に到着した。今までの美しい景色とは違い、不気味な静けさと湿った空気がアクト達を包み込んでいた。

「ここが大蛇のいる洞窟?」

「何だよリヤン。ビビってんのか?」

サーシャは肘でリヤンを突き、からかう。

「そんな事あるわけないだろ」

リヤンは不満そうに言い返す。

「いいか」

クロートが息を潜めて全員に声を掛けた。1人1人の顔に緊張が走る。

「大蛇はこの中だ。慎重に行くぞ」

皆、声を出さず頷く。

洞窟からは相変わらず不気味な空気が漂っている。アクト達が洞窟内に入ろうとした時だった。聞いたことのない奇妙な音が聞こえてきた。不思議に思ったアクト達は木陰に身を潜める。

すると、洞窟から8つの頭を持つ大蛇が姿を現した。

「あれは!?」

大蛇の姿を見た珊瑚は目を疑った。

「どうした?」

珊瑚の様子に気づいたクロートは大蛇に意識を残しつつ、珊瑚に問いかける。

「あれはおそらく……ヤマタノオロチ……」

「ヤマタノオロチ?」

リヤンが聞き慣れない名前に反応する。

「はい……。日本国に古くから伝わる神話に出てくる蛇です」

「おい。とりあえずアイツがターゲットならとっとと殺っちまおうぜ?」

サーシャは戦いを前にうずうずしている。

「俺が合図をしたら、アクト、サーシャ、俺の3人で攻撃する。リヤンと珊瑚は魔法で援護してくれ」

クロートはヤマタノオロチの動きを見る。手をあげ、一気に振り下ろす。アクト達は一斉に木陰から飛び出し、攻撃を仕掛ける。

ヤマタノオロチの攻撃を難なくかわし、攻撃をする。

「この!!」

隙を狙い、攻撃をしているはずなのに。ことごとく攻撃をかわされる。隙ができたとしても、8つも頭が個々に動いて、致命的な攻撃はすべて邪魔をされる。

「クロート!!攻撃が当たらないんじゃきりがない」

アクトは剣で攻撃を振り払いながら叫んだ。

「珊瑚!!コイツの弱点とかないのかよ!?」

サーシャは攻撃を加えながら叫ぶ。

リヤンは宙に浮き、魔法陣で炎を繰り出す。珊瑚も魔法で応戦をしつつ、記憶を辿っていた。

ヤマタノオロチを倒した須佐之男命(すさのおのみこと)。大量の酒を飲ませ、酔って寝た所で止めを刺した。しかし、今ここに酒などあるはずもない。代わりになるものを探している時間も無い。

「何か方法は……」

懸命に考えている珊瑚。そして、ある作戦を思いついた。

「リヤンさん!氷属性の魔法で敵の周りを囲んで下さい!!」

リヤンは頷き、呪文を唱え始める。

「ネイジュ・グラス・フルール」

リヤンの周りに大きな魔法陣が浮かび上がり、氷が地面に突き刺さる。それを確認した珊瑚はクロートを見た。クロートはその意味を理解し、指示を出す。

「アクト!サーシャ!氷に隠れて攻撃のタイミングを測れ。アクトは出来るだけ多くの頭を地面に近づけさせろ。サーシャはその援護をしてくれ」

アクトは氷を強く蹴り、ヤマタノオロチの頭上に飛び上がった。素早く剣を天に掲げると、剣包むように風が渦巻き始める。アクトはそのまま振り下ろす。

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

ヤマタノオロチは衝撃に耐えられず、地面に頭を叩きつけられた。

「水の精霊よ。(なんじ)の力を我に示せ」

珊瑚は両手を前に出し、ヤマタノオロチの頭を狙う。リヤンはそれと同時に再び呪文を唱える。珊瑚の魔法で現れた水が、リヤンの魔法によって凍らされる。

完全に氷ついた瞬間に、クロートとサーシャが尻尾を容赦無く斬りつける。アクトもすぐにサポートにまわる。

『ここだけ異常に硬い……』

アクトはヤマタノオロチ全体を見つめる。8つの頭が凍っているにも関わらず、体はゆっくりとだが動いている。

「アクト!!早く止めを刺さないとまずいぞ!!」

 リヤンは氷を増やし、動きを止めようとしている。

「分かってる!!」

アクトは体の上を走り、頭の方へ向かって行く。クロートとサーシャは攻撃の手を休めること無くアクトのサポートをする。ヤマタノオロチは体力がなくなってきたのか、動きが鈍くなってきていた。

「ったく。どんだけタフなんだよこいつは」

サーシャは双剣を振り回し、同時に2つの頭を攻撃する。

『このままじゃまずいな』

アクトはいまこの状況に危険を感じ、剣に力を込めた。剣の(つば)もとに魔法陣が浮かび上がる。それと同時にアクトの周りに風が渦巻く。

「ヴァン・ソニード!!!!!!」

アクトは剣を天に掲げ、一気に振り下ろす。風が斬撃を包み込み、だんだんと威力が増していく。ヤマタノオロチは避ける事が出来ず、攻撃をもろに喰らった。

奇妙な音がまるで悲鳴のように響き渡り、体は硝子のように砕け散った。

その様子を5人はただ静かに見つめていた。








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