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不実の夢  作者: 神崎真紅
7/11


「ねぇ?ここ賃貸?キッチン広くていいなぁ。」



華恋が食器を洗いながら聞く。


「あたしは一応主任だからな。ここは賃貸だよ。家賃はびっくりするぜ?」



碧はコーヒーを淹れながら答えた。




「…あたしもここに引っ越しちゃおうかなぁ〜。」



華恋はケーキを皿に取り分けながら言う。


まだ食うのか…。


何処に入るんだよ?


呆れ顔で見つめながらも、碧は段々と華恋のマイペースさに癒やされていた。



…初めてなんだ。

女友達ってさ。


…―――いいもんだな。



あたしはいつもひとりだったんだ…。



母親に捨てられて以来、誰かを信じる事が出来なくなっていた―――



碧の悲しい生い立ちだった…――――



「華恋、此処に引っ越して来いよ?」



「えっ??」


「その代わり家賃半分出せよ?」



碧の突然の言葉・・・。


何を言っているのか、きょとんとしていると・・・。


「一緒に住もうぜ?な?」

「本当〜??」


華恋の瞳が輝いていた。

楽しかった碧との時間。

それがずっと続くの・・・?



「きゃぁ〜。本当にいいの??」



碧に抱きついて華恋は聞いた。



「あたしがいいって言ってんだぜ。当たり前だろ?部屋ひとつ余ってるしな。」


「いやぁ〜ん。碧大好きぃ〜。」



「その代わり、プライベートはきっちり別けろよ?」

「何それ?」


「あたしに黙って男なんか連れ込むなって事。」


「そんな事しないよ。男なんかより碧の方が大事だもん。」



そうだよ・・・。

陸なんかよりずっと大事だよ。


ずっと・・・。

好きだったんだから。


ただ・・・。

遠い人だと思ってたから。

あたしには手の届かない場所にいる人だって・・・。


「えっ?ねぇねぇ?いつ越して来ていいの?」


「華恋の好きにすればいいさ。これ合鍵渡しとく。」

・・・これは夢???

夢ならお願い覚めないで・・・-----。




碧から合鍵を受け取ったその日のうちに、華恋は荷造りを始めた。



「どうせ家具付きのアパートだもん・・・。」



持って行く物は、身の回りの物だけだった。


そして・・・。


陸に短いメール。



『会社の女の子と一緒に住む事にしました。ここは陸の好きにして下さい。』



「ピッ・・・と送信っと。」


直ぐに折り返して、陸から着信が入った。



「「華恋?何?このメール。」」



「何って、書いた通りだよ。あたしここ出て行くから。」


「「随分急なんだな。俺の意見はなしか?」」


「陸に意見される覚えはないよ。」


「「ふぅん・・・そっか。判った。」」



ツーツー・・・と、虚しく響いた電話の音。



「あれ・・・?変だな・・・。」


知らずに涙が零れ落ちた。

華恋はそれをグイッっと袖で拭って、立ち上がった。

これから始まる碧との生活に期待を膨らませて・・・-------。




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