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「さて・・・と、ハラも一杯になったし・・・って、おい、華恋。」
「え?な〜に?」
「だから勝手に消えるなって、言ってんだろが?」
「だってここのケーキがあたしを呼んで・・・。」
まだ食うのかよ?
冗談だろ?
「・・・買って帰れ、な?」
「うん。買って来る〜。」
はぁ〜・・・。
なんちゅう自己中な奴だよ、全くもう。
碧は縁石に腰を下ろして、煙草に火を付けた。
街行く人が、振り返る・・・。
それだけ碧は際立って目立つ程、綺麗だ。
「お待たせ〜。」
華恋の持っている箱の大きさから、軽く20個は入っているだろうと、容易に想像がついた。
「・・・誰が食うんだ?それ?」
「あたしだよ?」
・・・何処に入るんだ??
買ってきちまったもんはしょうがない。
「帰るか?」
「ん〜・・・。」
何となく、歯切れの悪い返事の華恋。
「ウチ、来いよ?」
「うん。」
その言葉を待っていたかのような、華恋の返事に、碧は笑った・・・。
「華恋?泊まっていくか?」
「えへへ〜、いいの?」
帰り道、碧が聞いた答えに、華恋は喜んで言った。
「何だよ?最初っからそのつもりなんじゃねぇか。」
「あれ?そうだっけ?」
惚けて答える華恋に、やれやれといった様子の碧。
「夕飯、どうする?」
「ん〜じゃ、あたし作ろうか?」
「マジ?お前料理出来んのかよ?」
物凄く不振そうに、碧は聞いた。
「お鍋でいいんじゃない?」
「鍋は料理とは言わん。」
碧はきっぱり言い切った。
やっぱりな・・・。
華恋が料理なんか、出来ると思ってなかったからな。
「いいよ、鍋で。材料買って帰ろうぜ?」
「うん。あとお酒もね?」
・・・まだ呑むのかこいつは。
スーパーでふたりで食材を買い込む。
「てめぇ、飯のおかずより酒の方が多いじゃねぇか。」
「いいじゃん〜。そんな事言ってあたしより碧の方が呑むくせに。」
「しかも何だ?このチョコレートの山は?」
「あたしチョコないと生きていけないの。」
・・・だからどんな生き物なんだよ。
さっきケーキだって買ってただろうが。
「あ〜もういいだろ?さっさと帰るぜ。」
これ以上いたら何買うか判らねぇしな。
「待ってよ〜・・・。」
華恋は荷物を持って、碧の後を追いかけた・・・------
華恋が荷物を持って、碧の後を追う・・・------
「貸せよ。」
そう言って碧は、半分荷物を受け取った。
「んふ、ありがと。」
「てめぇの歩くのが遅いからだ。」
そう言ったけれど、碧は華恋に気遣っていたのが、よく判った。
--------碧の部屋---------
「ねぇ〜これくらいでいいかなぁ??」
「てめぇ、どんな切り方してんだよ?」
「食べられればいいじゃんか〜。」
あ〜・・・----
やっぱりな。
でも、こんなに楽しい思いを・・・。
あたしはした事がなかったな。
碧は、子供の頃母親に捨てられた。
碧を育てたのは、母方の祖母だった。
反対に華恋は、3人姉妹の真ん中で、両親に甘やかされて育った。
・・・この華恋の性格は、そんな家庭環境から出来上がったのだろう。
「ふぅ〜・・・。やっと出来たぁ〜。」
「華恋が悪いんだろが?」
「えぇ〜??何であたしよ??」
「・・・自覚ねぇのかよ。いいや、食おうぜ?」
「よし、お酒持って来るね〜。」
・・・そういう時だけは、早いんだな。
碧が呆れて見ていた・・・--------