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「今日何か予定あるのか?」
「ん〜・・・買い物でも行こうかなっては、思ってたけど?」
華恋は激甘のコーヒーを飲みながら答える。
「なら、あたしも付き合うよ。暇なんだ。」
「本当に〜?」
「何だよ?おかしいかよ?」
「違うって。ひとりじゃ詰らないから雛でも誘おうと思ってたんだ。」
「雛って、誰だっけ?」
「・・・自分の部署の人間の名前くらい、覚えようよ?あたしの同期の子だよ。」
碧はう〜ん、と首を捻って考えていたが。
「ああ。あの子か。」
・・・ようやく思い出したんだ。
雛ってそんなに存在感ないかなぁ〜??
「華恋。出掛けるぞ。」
「えっ??早い〜。」
「お前が鈍いんだろ?」
見れば碧はすっかり支度が済んでいた。
・・・と言っても、着てる物少ないんだけど。
「碧?服それだけ?」
キャミソールと・・・ミニスカートにジャケット。
「何で?あたしのポリシーだよ。」
細いからなぁ〜・・・。
いいなぁ〜。
そんな着こなし真似出来ないよ。
「華恋は?昨日の服だろ?何か貸そうか?」
「・・・サイズ的に無理だよ。気持ちだけ借りとくよ。」
その言葉に碧は、弾ける様に笑った。
「華恋・・・最高に笑えるよ。」
ふたりは街に出た。
よく晴れていて、気持ちいい。
「・・・あれ?華恋?」
碧が華恋の姿を探すと、可愛い雑貨の店の中にいた。
「きゃぁ〜。可愛い〜。全部欲しい〜。」
ひとりで盛り上がってるよ。
「華恋?勝手にどっか行くな。探すだろ?」
「ねぇねぇ。碧??これ、このカップ。可愛いと思わない?」
「別に。」
ガ------ン!!
「何その素っ気無い返事ぃ〜。」
「いや、本当の事を言ったまでだ。」
「・・・昨日のお礼にお揃いで買おうかと思ったのに。」
昨日のお礼・・・?
「お礼なんか、欲しくねぇよ。」
「え・・・?どうしてぇ?お揃いじゃ嫌なの?」
碧は笑って言った。
「華恋がいればいいよ。」
「やっぱりそっちの趣味なんじゃんか〜。」
「何だよ?悪いのかよ?」
「碧だけだからね?だからこのカップ、お揃いで買ってもいいでしょ?」
「あ〜あ〜。好きにすればぁ〜。」
「何その投げやりな言い方・・・。碧とお揃いで使いたかったのに・・・。」
「判ったから、買ってこいよ?もう昼だよ?メシにしようぜ?」
んふふ〜・・・。
華恋はウキウキとレジに向かって行った・・・------。
「さて…と、昼飯何にする?」
碧の問いに、華恋はう〜んと考える。
そして…。
「碧が決めてよ?」
「あっそう。じゃ華恋はドッグフードでも食ってな。」
「何それ?あたし犬?」
「可愛いじゃねぇか。キャンキャン吠えてよ?」
「じゃあ、碧は猫だね〜。あまのじゃくだし?」
ははは、と碧が笑う。
楽しいな…。
「華恋、この店入ってみようぜ?」
「あ、ここあたしも来たかったんだ。」
ふたりは遅めの昼食を取るべく、店内に消えて行った…―――