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不実の夢  作者: 神崎真紅
4/11


あたしの気持ちは、碧さんにとって迷惑なんだ、と思ってた…――


なのに…?


嬉しい…?






「華恋、仕事終わったら呑みに行こうか?」


「え…?」


「あたしとじゃ嫌か?」


「そんな、嫌な訳ないじゃないですか。」



(むし)ろ嬉しいよ〜…。



「あはは。じゃ決まりな。」



「はい。」






就業時間を、これほど待ち焦がれた日はなかった…―----



陸との待ち合わせですら、こんな気持ちにさせてはくれなかった。




あたしにとっての、碧さんは




『憧れ』




そう。


その言葉がぴったり当てはまる人。






…これは恋心じゃないの?


違う。


ただの思い過ごしだよね?




…――――――就業。




「わりぃな。待っただろ?」




…―――30分はそこに立ってただろうか。




「いえ、あたしも今来たとこですよ。」


「そっか。行こうか?あ〜…何処がいい?」


「特には…。メニューの多いとこがいいな。」


「じゃ、居酒屋か。美味い店あるんだ。」


「主任に任せます。」


「任せるのはいいけどさ、仕事じゃねぇんだ。碧って呼んでくれよ?華恋?」


「碧…?呼び捨てで?」


「いいじゃん。あたし達友達だろ?」


「友達…そうですね。」






…あたしの感情って




『友達』




なのかな…?




「華恋、ここだよ。」


「碧さんらしいお店ですねぇ。」


「だから敬語やめろって、言ってんだろ?」


「・・・いきなりは、ちょっと抵抗ありですよ〜。」


「じゃあ、とことん呑もうぜ、な?」


「それはOK!行きましょ。」




・・・・-----ふたりの姿が店の奥に消えてゆく。


「華恋、何飲む?」



「取りあえず生ビール。」


「じゃああたしも。生ふたつお願い。」


そう言ってから、碧はポケットから煙草を取り出した。


「あ、煙草いいか?」


「あたしも吸うから、大丈夫。」



碧の煙草・・・。

セブンスター・・・------。

陸と同じだ。


「華恋、乾杯しよ?」


「何だか会社とは別人だね?」



子供みたいにはしゃぐ碧にそう言った。



「あたしさ、こんな性格だろ?女の子同士でこんな風に話した事ないんだ。」



ふっ・・・と、寂しそうに言ってから、紫煙を吐き出した。



「あたしが・・・いるじゃない。もうひとりじゃ、ないよ?」



その夜あたしは、陸の悪口を散々碧にしゃべっていた。


碧はけらけら笑いながらも、ただあたしの話を聞いているだけで、自分の事は何一つ、話しはしなかった。





「・・・ここ何処・・・???」


見覚えのない部屋。


隣りに眠っているのは・・・。

碧??

あたし。

また潰れちゃったのかぁ〜・・・。

華恋はあまり酒に強くない。

のに、飲みだすと記憶がなくなるまで呑む癖があった。


そっとベッドから抜け出して、財布だけ持って近所のコンビニに走った。

昨夜の化粧も落としてない。

それから・・・。


華恋はコンビニで朝食の材料を買って、急いで碧の部屋に戻った。



・・・----その頃、碧は・・・。


「・・・あれ、華恋??」

ぼ〜っとしたまま、隣りに寝ていた筈の、華恋の姿を探していた。


部屋には、華恋のバッグが無造作に置いてある。


「買い物でも行ったのか・・・?」


昨夜あまりにも楽しかった碧は、少し二日酔い気味だった。

バスルームに行き、浴槽にお湯を溜める。

その時、ドアが開いて華恋が入ってきた。


「あ〜おはよ〜。起きてたんだ。」


「・・・何?そのでかい袋?」


「朝ごはんだよ?」


「朝メシ〜??食えるか。それより風呂、入るだろ?」


「入る。でも・・・折角買って来たんだし、あたしご飯作るよ?」



「いいって。マジで食えねぇから。風呂入るんなら、一緒に入るか?」


はいいい???


「碧さんって、もしかして・・・?」


「おま・・・今、何か誤解しただろ?」


「え?違うの??」


「ちが〜うってば。じゃなきゃ彼氏なんか作るかよ?」


あ・・・そうでしたね。


「昨日の話、最高に面白かったぜ。」


「あれはあたしの不幸話なんだけど・・・。」


けらけら笑いながら、碧は服を脱ぎ捨てバスルームへ向かう。


「華恋?早く来いよ。」



・・・本当に一緒に入るんだ。

あたし女の子と一緒にお風呂入った事ないよ〜・・・。






華恋は恥ずかしそうに、そっとバスルームに向かった。


「何照れてんだよ?風邪引くから早く入れよ。」


えぇ〜い!



勢いで碧の入っていた浴槽に入る。


ふたり・・・向かい合って話し始める。



「昨夜面白かったな。あたし女の友達って、いないからさ。」



「そうなの?信じられないけどなぁ?」



ふふ・・・------。


「華恋があたしの初めての友達だな。」



「碧さんの初友達かぁ〜。」



「おい、さんはいらねぇだろ?華恋幾つだよ?」


「あたし22。」


「あたしも22だよ?同じ年なんだからさ、敬語使うなよ?」



「えぇぇ〜??同じ年なの〜?信じられない。」



「何だよそれ?あたしがババァに見えるってか?」



「言ってないから、そんな事。ただ・・・綺麗だから年上かなって。」



「ははっ、綺麗かよ?言われた事ねぇな。」


そう言って笑った碧の透き通るような、横顔は完全にあたしの心を掴んでしまった・・・-----。



「・・・華恋は可愛いよな。彼氏何処に目付いてんだろなぁ・・・あたしが貰っちゃうかな?」



「は、はいいい〜??みど・・・碧?何言って・・・。」



その言葉を遮ったのは、碧の柔らかい唇だった。




――・・・突然の碧からのキス…―――




「み・・・碧?そっちの気はなかったんじゃないの?」



「何だよ?キスくらい、挨拶だろ?」




…本当にそうかなぁ〜。



まぁいいか。


陸より良かったかもね。




「先に出るぞ?」




そう言って、碧はバスルームから出て行く。




華恋は少し遅れて上がって来た。




リビングからはコーヒーの香り。




「飲むだろ?」


碧がカップを渡す。



「ありがと。ついでに牛乳と砂糖、貰える?」


華恋は相当な甘党で、ブラックでは飲めないのだ。



「おま…だから会社の砂糖とミルクの減りが、うちの部署だけ早いのか。」



「何〜?あたしのせい?」


ふたりは顔を見合わせて、笑った…―――



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