3
――――朝。
華恋は、何時もより少し早めに、会社に着いた。
昨日雛に話した事が、引っかかっていて、眠れなかった…。
「お早う。伊藤華恋。」
その聞き覚えのある声に、振り返る。
「川野主任。お早う御座います…随分早い出勤ですね?」
「ああ。ウチの部署は役立たずばっかりだよ。」
…また怒ってるんだ。
今回は誰が犠牲者なのかな?
「華恋、コーヒー。」
って…呼び捨てですか?
「はい、どうぞ。主任…―――。」
あたしの手からカップを取り上げ、碧の手が頬に当たっている…。
ひんやりと冷たい感触―――
「華恋…可愛いな。」
はははい??
「しゅ…主任?あの…?」
どうしたらいいのか、困っているあたしに気づいた碧は、笑いながら言う。
「わりぃな。びっくりしただろ?」
そりゃあ…。
正直心臓バクバク言ってますよ。
「あの…?主任?あたしに何かミスがありましたか?
…恐る恐る聞いてみる。
「華恋はねぇよ。あってもお前の事は怒ったりしねぇ。」
…??
どういう意味に取ればいいんだろう??
「主任?」
「碧でいいぜ?誰もいねぇしな。」
ふふ…―――
微笑んだ碧は、とても綺麗で…。
あたしにはやっぱり叶わない夢なんだなって…―――
「華恋?どうした?」
咄嗟に言葉が出た。
「あたし主任が好きなんです……。あっ、迷惑ですよね。今の聞き流して下さい。」
―――多分呆れた顔をしているだろうな。
そんなの見たくないよ〜。
焦って自分のデスクに戻ろうとした華恋の手を、碧が掴んだ。
「あたしの事を好きなんて言ったヤツは、後にも先にも華恋だけだよ。」
「え…?でも主任には彼が…。」
「とっくに別れたさ。」
そう…だったんだ。
「ごめんなさい…。あたし余計な事を…――」
華恋の言葉を遮ったのは…?
碧の華奢な白い指先だった。
「いいって。気にすんなよ?華恋の気持ち嬉しいよ。」
「本当ですか?・・・いや、気を使ってくれたんですね?」
「そう思うのか?」
そう言った碧の表情は、何だか凄く儚げに見えて、あたしは思わず碧の手を握っていた・・・-----
「あたし、好きです。しゅ・・・碧さんが。」