表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不実の夢  作者: 神崎真紅
11/11

11

「あ〜、美味しかった。あたしこのお店初めて入ったけど美味しいね。」



「まぁな、あたしは蕎麦にはこだわりがあってな。中々美味い店ってないもんだぜ…って、あれ?華恋?」


「ねぇねぇ碧、まだ時間あるしさ、お茶して行こうよ?」


また始まったよ。


「本当に華恋って勝手だよな。」



「何それ?碧ほどじゃないと思うけどな。」


「てめぇ…、よーく判った。後で覚悟しとけよ。」


「ななななんなのよ、その言葉は?碧の意地悪ぅ。」

「午後からたっぷりと働かせてやるからな。」


「あ、あたし急よ…「大丈夫だ。仕事終わったら付き合ってやるからな。」」


あたし…。

昨日陸と別れたばっかりなんだけど…。



♪〜♪〜♪

華恋のケータイが突然鳴った。

陸…?


「どした?誰からだ?」


「…陸。」


碧の表情が一瞬曇った。


「出ねぇのか?出たくねぇのか?」


「出るのが…恐い…。」


「あたしが出るか?」


碧の思いがけない言葉に、華恋は戸惑いを隠せなかった。


そのままケータイを碧に渡した。



「もしもし?あんたが華恋の元彼か?」



「元彼?君、誰?何故華恋のケータイに出るの?」


「華恋が出たくねぇって言うからだ。」


「碧…もういいよ。陸に昨夜の事話せば…陸とは終わるから。」


ふん!

今はあたしの華恋だっての。

気に入らない奴だな。



「あんた、陸って言ったか?その耳でよーく聞きな。華恋はな、昨夜あたしが貰った。」


「貰った?どういう意味かな?」


「何だ、察しの悪い奴だな。貰ったって言ったらひとつしかねぇだろ?」



どひゃ〜…。

滅茶苦茶恥ずかしいんだけど。


「み、碧〜、もういいよ…。」


「あぁ?こいつが飲み込みが悪いからだろが。」


「ねぇ、君。華恋に替わってくれない?華恋の口から聞きたいんだけど。」


「…ちょっと待ってろ。」

碧は無造作に華恋にケータイを渡した。


「華恋の口から聞きたいってさ。ガツンと言ってやれよ?」


ふぇ?

あたしが自分で言うの?


仕方なくケータイを受け取り、沈んだ口調で話し始めた。



「…今碧が言った事、本当だよ…。あたし碧が好きなの。だからもう陸とは会わない。」



「え…。だって女同士じゃないのかよ?」


「それでもあたし碧が好きなの。」


「…俺が女に負けるなんてな。仕方ない、潔く身を引くよ。じゃ、元気でな。」



「何だ、ちゃんと言えたじゃねぇか。」



「う…っく、ひっ…く…。」



華恋の瞳から、零れ落ちる涙を見て、碧は何も言わずに華恋を抱き締めた。



「いいよ、泣けよ。但しあくまで今だけだからな。」


「ありがと…碧…。」



碧の細い腕の中で、華恋は泣いた。


涙が渇れるまで泣きじゃくった。


碧はただ、黙って華恋を抱き締めていただけだった。

何も言わずに…。


華恋には碧の存在だけが救いだった。



さよなら…陸。

本当に愛してたよ…。


これからあたしは碧を愛するからね…。


陸もいい人見つけて幸せになってね。


今までありがとう…陸。

偽りのない華恋の気持ちだった。



「華恋、仕事に戻るぞ。」


「はい?碧ちゃん、あたしこんな顔「あたしがついてるだろ?華恋には。違うのか?」」



「違ってないけどあたし会社に戻る気になれないよ…。」



「上司命令だ!」


また無茶言ってるよ…。


「職権乱用反対〜。」


「その元気があれば大丈夫だ。行くぞ。」



引き摺られる様に、華恋は碧に会社に連れ戻された。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ