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不実の夢  作者: 神崎真紅
1/11

―伊藤華恋 22才

彼女の恋人の名前は、陸。

でも華恋には誰にも言えない秘密があったー…―



誰にも言えない片想い。

その相手は…


同じ部署の上司である

川野碧―…


そう女性だった…――…

―――あたしの名前は伊藤華恋。


一応彼氏持ち。彼の名前は陸。


けど…。


あたしには、秘密があるんだ。


誰にも言えない秘密が…―――






「華恋〜。暇ぁ〜?」


就業間際に、声を掛けて来たのは、同期入社の永井雛子。


「まぁ…暇だけど。」


苦笑しながら、華恋は答えた。「聞いてよ〜。」


「何?また愚痴なの?」


雛子がこう言って来る時は、大抵彼氏と喧嘩した時だから。


「…立ち話も何だし、呑みに行こうよ。」


…やれやれ。


「雛のおごりね?」


―――女ふたり夜の喧騒の中に消えて行く。


「で、今回は何?」


華恋は、素っ気なく聞く。


「浮気だよ。」


「な〜んだ。そんなのウチの陸に比べたら、可愛いもんじゃない?」


陸は女癖が最悪だ。


今夜だって何やってるのか、分かりゃしない。


「ほっとけば?」


華恋は言った。


「でもさ〜、悔しいじゃないの?」


「じゃ、自分もしてみたら?浮気?」


雛は目を丸くして驚いた。


「華恋はあるの?浮気?」


「まさか。馬鹿馬鹿しい。」


陸に裏切られるのには、悲しいかな、慣れちゃったよ。


それよりも華恋の心を支配している人物がいた・・・-------


華恋の上司。


しかも・・・女性。


名前は------川野碧。


黒いショートヘアに、丹精な顔立ち。


しかし・・・気性が荒い。


部署内で碧の怒鳴り声が聞こえない日はないくらい。


「おい、山口。てめぇ何年働いててこんな凡ミスしやがるんだ?」


「す・・・すみません、川野主任。」


「すみませんで済めばケーサツはいらねぇんだよ。」


誰もが苦手な川野碧。


でも。


華恋はいつからか主任の姿を追うようになっていた・・・---------




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