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受賞したのは僕だった。
雑誌の端の方だけど、確かに載っていた。
そこに、沙希の名前はどこにも無かった。
雑誌を見ながら俯く沙希に、声をかけようとしたが、沙希は避けるように部室を出て行ってしまった。
何となく気まずいまま、僕らは三年になってしまった。
受験勉強の為、塾に通っていた沙希は部活を辞めてしまい、ますます僕を避けるようになった。
せっかく同じクラスになったのに、会話はほぼゼロ。
良く分からないけど、多分僕が悪いんだ。
何とか謝る機会を伺っていたが、見つからず、気付けば肌寒い季節になっていた。
陽も落ちるのが早くなって、部活が終わった頃にはもう薄暗かった。
車が行き交う大通りの歩道をトボトボ歩いていると、前に同じ学校の制服を着た女子が歩いている事に気付いた。
「・・・沙希?」
近づいてみると、やはり沙希だ。
「沙希!」
思い切って声をかけると、沙希はびっくりしたように振り向いた。
「もう暗いし、危ないから送るよ」
僕はニコッと笑って沙希の隣についた。
「・・・沙希、最近ずっと僕を避けてたよね」
「・・・そんなことないわよ」
ポツポツと進む会話。
沙希は俯いていてこちらを見てくれない。
あの大好きだった笑顔を最後に見たのは、いつだっただろうか。
「沙希、僕はね・・・」
沙希の方を見た僕の目に映ったのは、俯く沙希と、逆走してくるトラックだった。
「っ沙希!!!」
反射的に沙希を押しのけ、僕はトラックによって宙を舞った。
「・・・む、・・すむ!!」
真っ赤になった世界に、沙希の顔が浮かぶ。
ああ、せっかく可愛い顔なのに、涙でぐしゃぐしゃじゃないか。
沙希、良かった。無事だったんだね。
どうやら喉がやられているらしい。
ヒューヒュー、と空気がか細く抜けるだけで声にならなかった。
「進!!今救急車呼んだからね!進!進!!お願いっ、もう少しだから頑張って!!」
沙希、僕ね。
ずっと謝りたかった。
謝って、仲直りして、また全てが元通りになったら、伝えたい事があったんだ。
ねえ沙希。
「す・・・き、だよ」
そこで僕の意識は途絶えた。
急展開ですね