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『ジャックは思った。
ここで逃げちゃダメだ。
ここで逃げたらミーティア姫がどうなるか・・・。
「ミーティア姫は私が守ると決めたのだ!貴様らに手出しはさせん!」
ジャックは剣を振り上げ、多勢無勢の敵の中へ飛び込んだ。
だが』
「だが・・・」
この先が思い浮かばない。
話はもう、クライマックスに向かっているというのに。
中学生になった僕と沙希は文芸部に所属していた。
「あら、進。ずいぶん進んだのね」
楽しそうに覗いてくる沙希に僕は苦笑を漏らす。
「そんなことないよ。まだまださ」
元々僕は、沙希に誘われてこの文芸部に入ったのだ。
何の取り柄もなく、運動も苦手。
部活に入る気はさらさらなかった。
でも、沙希が誘ってくれるなら。
沙希がいるから、と思い文芸部に所属したのだ。
だが、やはり自分には才能がなかったらしい。
沙希は上手と言ってくれるが、僕の物語はさして深い話な訳でもないし、文も下手くそ。
正直、ここは場違いなんじゃないかと思い始めてもいる。
沙希ももちろん物語を書いている。
それもかなりの長編らしい。
まだ終わっていないからと、読ませてはくれないが、どうやら恋愛小説のようだ。
甘くてちょっぴり苦い初恋をする話だという。
「絶対沙希のが上手いに決まってる」
ニコッと笑って言った僕の言葉に、沙希は困ったような笑みを返した。
今回の話は長めなのかな?