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新しい春を迎えた。
桜並木から降り注ぐ桃色の雨を浴びながら坂を上る、どこにでもあるような通学路。
ワタシは、何人もの生徒の合間を縫いながら歩いていた。
あの日の交通事故は運転手の飲酒による居眠り運転が原因だった。
進の両親も友達も、運転手ばかりを責めて、誰もワタシを責めてはくれなかった。
ワタシの、せいなのに・・・。
あの日、やっと決心がついたワタシは、進に謝るために遅くまで残ってた。
でも、なかなか進が来なくて。
諦めて帰ろうとした時に、後ろから声をかけられた。
ああこれで、やっと謝る事が出来る。
そう、思ったのに・・・。
ねぇ、どうして?どうしてワタシを庇ったの?
あなたがいなくちゃ、謝る事が出来ないじゃない。
『避けてごめんね』『受賞おめでとう』って。
言うことが出来ないじゃない。
ねえ、進。あなたの最後の言葉の意味を教えてよ。
あれはワタシに対して言った言葉って思ってもいいの?
だったら、ねえ。撤回して?
その言葉、ワタシから伝えたかったの。
ワタシから、言いたかったの。
進・・・。
「好きだよ」
上を見上げると、幾枚もの桃色の花びらが、風と一緒に踊っている。
新しい春を迎えたワタシは、あなたが好きと言ってくれた笑顔で、声で笑うから。
あなたがなりたいと言っていた雲になって、見守っていて。
これにて最後になります。
そう長くもない話でしたが、読んでいただきありがとうございました!
こういうのは初めて書くので、未熟な部分も多くて恥ずかしいかぎりです。
ではでは
またどこかにお会いしましょう!