第1話 夜のファイル
三日月未来です。
最新話の執筆再開前に、
「小説家になろう」で重複公開することにしました。
10月27日、加筆修正しました。
未来千鶴はミラーガラスに映る美しい少女にウインクして微笑んだ。
大きなあくびを押し殺して両手を頭上に突き上げる。
天を仰いだ瞬間、短い白いプリーツスカートが風に煽られ捲れる。
朝日がビルガラスに反射してキラキラ輝いていた。
千鶴の白いテニスシャツの汚れを朝焼けの光が包み込む。
紅色に染まるシャツの滲みがスローモーションで広がって行く。
千鶴の脳裏は緊急避難を告げていた。
[ーー 千鶴、何が起きているの]
内側から聞こえる不思議な声。
千鶴の身体は空中に舞い上がって落ちたはずだった。
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眉目秀麗な如月優は、空から降って来た童顔に見える少女を両手で抱えて我を忘れた。
優の手に少女の柔らかい臀部の感触と体温が伝わる。
優も突然の出来事に、何が起きたのか分からなかった。
空から美少女が降ってくるとは・・・・・・。
浦風が少女と男の頬を優しく撫でた。
桜の花びらがふたりの上に落ち風で舞い上がる。
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すっかり陽が沈んだ都会の街の夜景を大きな窓から眺めている如月碧。
ワイングラスを片手に弟の優を見て頭を抱えた。
碧は千年財閥ビルの展望台ラウンジで優の話に耳を傾けた。
廊下には常駐している配下の社員と警備数人が監視している。
「優、その少女、拐って来たの」
「姉さん、俺はそんな趣味ないよ」
「じゃあ、どうして気絶少女がここにいるのよ」
「姉さんに治療をお願いしたくて連れてきた」
「分かったわ。ちょっと見せなさい」
気絶している少女から呼気が漏れている。
「失禁していないわね。呼気も大丈夫そうだけど、この滲みは何かしら」
「姉さん、この子ーー よく見ると怪我していないみたい」
「じゃあ、どうして気絶しているのよ」
「だから、姉さんにお願いしている」
「そうね。分かったわ」
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碧は、その場で小声で詠唱してくるりと回った。
衣装が変わり髪も長く伸びて腰付近にまで届いている。
優の中では妖術のような姉の秘術が自慢だった。
陰陽師の正装になった碧は短い詠唱を小さな声で呟いた。
その瞬間、少女に起きた出来事が空中に照射され、映像になって浮かび上がった。
「碧ーー 姉さん、これは」
「光ね。この光の束が偶然にこの子の身体を吹き上げたのね」
「なんで、こんなことが」
「わからないわ。偶然なのか狙われたのか」
碧は腕組みして腕時計を見た。
「今夜は、遅いから私の部屋に寝かせるわよ」
優は、碧の言葉に落胆した表情を浮かべた。
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夜空の星々の間に浮かぶ満月を碧は見た。
暗い窓辺に月光が差し込んで反射している。
「優、この少女の持ち物は」
「俺が受け止めた時、落ちていたのは携帯電話と小さなファイルだけだった」
「それ、今ある? 」
優は空間にある自分のマジックボックスの中から、保管していた品物を取り出して碧に渡した。
碧は少女のファイルを開き、息を殺す。
「優、これーー 機密ファイルよ。しかもロックされている」
「姉さん、それでも開けないと」
碧は躊躇わずに秘術のあとに小さな声で叫んだ。
「開錠」
ファイルが開錠され紫色の気体が漏れる。
「姉さん、やばくない、この気体」
「そうね、普通に良くないかも」
碧は少女に千年グループの身辺警護を付けた。
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数分後、千年財閥配下の神社から巫女装束の女5人が入って来た。
花顔柳腰の姿に警備の男女も驚きの表情を隠せない。
碧レベルの巫女が追加された。
優は5人を招き入れ、ファイルの秘密を巫女に説明する。
巫女は碧の周囲に円陣を敷き秘術の浄化詠唱を発した。
「浄化」
室内に浮遊していた紫色の気体が金色に輝いて浄化される。
若い男の叫び声が廊下に響いた。
「千鶴お嬢様はいらっしゃいますか? 未来財閥の千鶴お嬢様、秘書の浅川です」
お読みいただきありがとうございます。
次話をお楽しみください。
三日月未来




