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雷下の改新〜霹靂伯の異世界教育改革〜  作者: 囲魔 美蕾


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第11話 初めての授業

 使用人たちの教育プログラムを組み、人員を拡充し、シフトを組み、教室を整えた頃には2ヶ月が経過していた。これでもかなり急いだ方ではある。ただ、下手な者を使用人として雇うわけにも行かないし、受け入れに最も時間がかかったんだよね。おかげで使用人の数は三割増しになり使用人たちの労働改善にもなったためとりあえずは好評である。一部はもっと働かせてほしいと言ってきたけど。




 そして準備が整った今日、ついに使用人教養教育の初回である。参加者は家令のゴードンとメイド長のテレサの二名。まずは使用人のトップ二人が経験して下の者に参加を促すようにさせる狙いだ。講師は読み書き計算が僕、それ以外の地理歴史などがティア、簡単な護身術がアルゴである。成人前の貴族の息子が使用人に勉強を教えるなど良いのかとも思うが、前世でそれなりの勉強をしていた関係でティアより僕の方ができるので仕方ない。あと、教育方法をティアに見せるのも必要なので僕が担当する。




「起立! 礼!」




 さすがは家令とメイド長、見事な所作である。礼に始まり礼に終わるというのは大切なことであり、敬意を表す以外にも、ここからは集中してね、これで楽にしていいよ、の合図でもあるのだ。




「二人はどの程度の算術ができるの?」




 生徒の進度確認は重要だ。既に修めていることをやっても勉強にならないし、難しすぎても理解できない。




「私は四則計算と帳簿の管理であれば」




 ゴードンが答えると、




「私は四則計算くらいでございます」




 とテレサも答える。最低限のラインは二人とも超えてきているみたいだ。




「じゃあ確認テストね。二十題あるから、五分で解いてみて」




 二人は驚いた顔をする。二人に手渡したのは真新しい真っ白な紙に四則計算の問題が二十題書かれた紙だ。この世界ではまだこういう紙は価値が高く、気軽に使えるものじゃないんだけど、錬金術を使えば木材から普通紙だろうとティッシュペーパーだろうと簡単に作れるので僕にとっては痛い出費じゃない。あ、ティッシュペーパーはアイデアをミラー商会に売ったのでまた結構なお金が入ってきたのはこちらの話だ。


 二人は驚きつつも計算を始める。始めは順調だったペンの動きが次第に遅くなり、最後まで解ききれずに時間が来る。




「はい、じゃあ回収します。丸付けするからちょっと待ってね……。うん、ゴードンが十七問回答して十三問正解、テレサは十五問回答して十四問正解だね。」




 今回のテストにはレベルを設けてある。レベル1が加減計算のみで八問、レベル2が乗除計算のみでこれも八問。レベル3が四則混合計算で四問。これは問題プリントを作る際の鉄則で、どこで躓いているかわかりやすくしている。ゴードンは計算は速いが少し正確さに欠けるタイプ、テレサはゴードンに比べてゆっくり正確に解いていくタイプみたいだ。ちなみに間違えた問題は二人とも乗法と除法が混じった計算で、確かに少し難しく作っている。混合計算は二人に共通する課題、ゴードンは正確性を上げること、テレサは速度を上げることが課題だね。アプローチの仕方はそれぞれで変えた方がいいな。


 という結果と考察を二人に伝えるとすごく驚いていた。曰く、




「たった一枚の紙でそこまで考えを張り巡らせるなんて……」


「苦手なことがこんなに簡単に言語化されるのですね……」




 とのことだが、これが教育である。プロである教師はもちろんだが、本当は親だろうが上司だろうが教育に関わる大人には身につけてほしいことなのだ。それが子どもや後進を育てるのに役立つ、というかそれがない教育はあまりにも受ける方が可哀想だと思う。専門職とされる教師だが、人間のほとんどは生きていればどこかで教育に関わるのだから教育学は一般教養じゃないかと前世では常々思っていたものだ。




「小数、分数、百分率は知ってる?」


「それらの言葉は……」


「存じ上げません……」




 見れば見学しているティアも知らないというふうに首を横に振っている。




「例えば大陸に三つの国があるとしようか。これらが均等に国土を持っているとき、一国あたりが大陸の面積のいくらを持っているのかを表すものだよ」


「それならばわかります。三分の一ですね」




 ゴードンが答えるとテレサもティアも肯定する。




「そうだね。それが分数。そしてそれを横並びの数にしたのが小数だ。数が十倍になったら右に0をつけるように、数が十分の一になったら左に0をつける。基準の、1の位っていうんだけど、そこのすぐ右に小さな点を打つ。これが小数だよ」


「そんな表し方もあるのですね!」




 ティアが目を輝かせて言った。長く生きた故に知らない知識には興奮しちゃうか。




「それで、その小数や分数を、百の内のどれくらいかで表したのが百分率。例えば、十分の一なら百の内の十に等しいから10%とも言えるね」


「ぱーせんと……ですか。聞き慣れない言葉です」


「まあ一般的じゃないなら別に覚える必要はないかな。分数がわかれば十分だと思うよ」




 うん、算数を教えると同時にこちらの世界の常識を教えてもらう。ウィンウィンで良きかな。




「ところでアイン様はこのような知識を何処で?」


「えっ!? あ、えーと、錬金術を学んだときに古い本に書いてあったんだよ」




 あっぶな。確かに自分たちが知らない知識を子どもが知ってたらそうなるよね。ありがとう錬金術。この恩は忘れない。




「じゃあ一先ず今日の算術は終わりね。次回はまた別のことをやるけど、計算力チェックは毎回やるからね。じゃあ起立、礼!」




 と言い僕の授業は終わり。読み書きは既に資料を扱うゴードンには必要ないので今回はパスだ。本格的に始まったら授業内容を先に明示してそこに出るべき者が参加するようにしよう。ということで十分ほど休憩を取った後で次はティアの授業だけど……。




「では始めます。起立、礼!」




 どうやら僕の授業スタイルを真似しようとしてくれているようだ。嬉しいね。

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