第一話
この物語はすべて架空のできごとです。この物語、作品、作中のあらゆる描写はフィクションであり、実在の人物、団体、事件、もの、事象などとは一切関係ありません。
ある日を境に劇的に強くなった日本のバレーボール
オリンピックで金メダル
世界選手権でも1位
ワールドカップでも1位
常勝日本となった
しかしある時を境に低迷
何があり強くなったのか、そしてなにがあり低迷したのか
そこには表舞台には決してでてこない事だった…
ある時、チームに入ってきたバレーボール未経験の人物、彼女が入ってきてから変わり始めた
どういう事かは分からないが、チームの方針がガラリと変わった
パワーバレーに振り切った
選手層は全員高身長
練習はサーブとスパイク等得点に絡む攻撃の為の練習に全振り
淡白な試合ばかりになった
彼女は常に無表情だった
小柄でひょりとしていたがとにかくよく食べていた
そして目の前にはノートパソコン、右手側にスマホ、左手側に電卓を常に置いていた
ホワイトボードにはよく分からない数字等がびっしりと書かれていた
練習時間は極端に短くなった
リベロはほとんど使われず機能してない
ほぼ六人がアタッカーでツーアタックもこれまでの常識にはない頻度で使われていた
攻撃は後も3枚
高身長の為最高到達点まで速い
ある意味パワーバレーでありスピードバレーである
勝ちすぎではないかと言うほど勝ってしまった
そう勝ちすぎてしまったのだ
彼女は派遣会社から大量に派遣された派遣社員の1人だった
最初の業務は突合業務で何の変哲もない他の派遣社員と同じ者だった
入社手続きでの書類への記入では他の人より遅く他の人は書き終えペンを置いていても、まだ書き終えていなく、書き終えた時にペンを落として隣の人に拾われていた
他の人とは違い彼女だけは毎日黒のスーツで出社していた
これは朝の時間を効率良くする為に何を着ていこうか迷う時間と判断するエネルギーを削減する為だと言う
「できるだけギリギリまで寝ていたいし、面倒だから」
との事
彼女はミーハーな面もある
バレーボール未経験だが推しの選手がいるらしく原動力になっているみたいだ
彼女は良く食べる
社食で大好きなメニューがあるといつもの無表情は相変わらずだが上機嫌だと言う事は伝わってくる
社食の人の話ではそのメニューがあると目を輝かせ、それが大好きであると一目でわかるぐらいの表情らしく社食の人の方から彼女へ話しかけたらしい
その後、顔合わすたびお喋りするらしい
そんな彼女がどう言う経緯か詳しくは不明だがチームに絡むようになってから日本の黄金期が始まった
まず監督や、コーチが肩書き十分で見た目的に素人目には強面に見える人材に変わった
それにより選手達に有無を言わせない雰囲気を醸し出していた
それはまぐれなどではなく短期で幕を閉じたわけではなかった
しかし、ある時終わりが始まった
世代交代等も、うまくできていたはずで今後もその強さは続くはずだったが、【チームの活性化・多様性】という大義名分によりチームメンバーの一新、方針も短所を伸ばすという名目でバランス型のチームへ
そこから転落が始まった
その後常に5位付近を行ったり来たりし続けた
時には3位になり、もしかした1位になれるかもと言う希望、手に汗握るラリー
それらは彼女のバレーにはなかった
黄金期のそれらは全て誰でも再現できるように手順書等の財産は残されていたのにそれらは使われる事は無かった
一新後のチームのメンバーは多種多様、高身長のオポジットもいれば低身長のリベロもいる
極端なツーアタックもなくなり無理してでもセッターからのトスを打つというオーソドックスなバレーボールだが多種多様なバリエーションの攻撃していた
勝っては負け、負けては勝つ、そして連勝する時や連敗する時もある
徐々に強くなっているように見せているように見える
チームメンバーだけでなく、ファンだけでなく、国民全員で強くしていこうと言うバレーボールになっていた
世界ランキングも4位、5位付近をキープし続けた
彼女のバレーボールはそれらが全く無かった
それが終わりの始まりの決定打だったのかも知れない
それらがあればあの大義名分の名の下にあれは起きなかったと
彼女のバレーボールは【ありのままの純粋なバレーボール】と呼ばれていた
彼女は自分が天才などではなく何もできない存在と自負していた
なので良く「餅は餅屋」等と言ってその道のプロフェッショナル等に全て任せていた
暗算もできないので計算は機械に任せていた
失敗できないような事象の時や自信が全く無い時や大事な時には機械が出したものを計算得意な人にダブルチェックさせていた
自分に責任が来ないようにしていたのが皮肉にも成功の一因でもあったようだ
そして【ありのままの純粋なバレーボール】ではなくなった時から1位になり続けるのを拒否するように1位なったら必ずと言って良いほど転落し、また不死鳥のように復活する姿を見せていた
そこが彼女の【ありのままの純粋なバレーボール】と【ドラマティックな感情揺さぶられるバレーボール】との決定的な違いだった
彼女のバレーボールは【素人だからこそ成功した】【シンプルで一度手順書を作れば再現しやすいルーティンがあり素人だったからこそのシステム】で多様性無く複雑とは程遠い正に【純粋なバレーボール】だった
しかし
このままだとドラマ・バレーボール物語にならないのであの大義名分が下され、彼女と彼女の周りの者は契約更新されずに日本のバレーボールのレベルは急落したのだった
敵なしになってしまったからこのような結果を招いてしまった
どちらにせよ、彼女は推し活を楽しんでいるようだ
あの時も今も社食で目をキラキラ輝かせてお喋りしている時のように
私に今も語りかけてきている
ブルーバードプロフェッショナル 神話の功罪
この番組は当時の関係者の方にお越しいただいたりインタビューした内容を放送いたします
「いやー、びっくりしましたよー。だって監督もコーチもトレーナーも全て変えろって言われたら誰だってびっくりしますよー」
「まずは強面で実績も有って有無を言わせなさそうな監督を最優先って言われましたね」
「巷で言われているような無表情な人では無かったですよー。初対面の時は寧ろ愛想良すぎる感じでしたよー」
「本当に良い子でしたよー!あんなに美味しい美味しいって言ってくれた人いなかったから嬉しかったわよー!社食だからほとんど交流なんかなかったのに仕事楽しくできたわよー!」
「突合業務の時も処理速度は一番遅かったですよー。でも正確で品質は抜群でした。何かあると自己判断せずに、必ず管理者、責任者に質問したりとにかく報連相を徹底していた人でしたねー」
「とにかくミスを0にって言われてました。無理してミスをした1点と、相手にスパイク打たれて取られた1点も同じ失点1だから無理せずミスをしないようにと最初から言われてました。」
興味深い証言がまだまだ続きますがお時間になりました
それではまた次回