第3話
アビはシンが倒した魔王には、魔界の奥底に仲間が大勢居るようで、戦いは新たに始まるだろうと言って立ち去った。
アボパパは、
「そうだな、とりあえずアマズンに行って、イヅとイデの様子見だな。真太、ついて来い」
「俺も行くの」
「お前が元凶なんだ。今、言っただろう」
「で、俺がどうするわけ」
「愛想笑いぐらいしていろ。それ以上は誰も期待していないからな」
「ちぇっ」
しばらくは滞在かも、と荷物をまとめている真太である。そこへ学校から帰ってきた千佳由佳がやって来た。
「真太、アマズンに行くんだって?」
「イデは中身が変わっちゃったってね」
千佳由佳がしばしの別れで、懐いてきた。
「うん、急に決まったんだ。さっき、アビが来てね」
「また、アビー。あいつが来たらろくな事ない気がする」
由佳が言い出すので、
「どんなろくな事?」
真太は参考までに聞いておくことにした。」
「えーとね、きっと真太とイデ、喧嘩するね。真太が勝つに決まっているけど。あいつ、懲りないから」
「あは、由佳は先のことわかるのかな」
千佳が小声で、
「あまり当たらないってば、空想半分ね」
「そんなことないよ、あんまり変なことはちょっとどうかなと思って黙っているけど、当たりは7:3よ。この前も、あんまりだから黙っていたけど、烈がさらわれて結婚するのは分かっていたの。言ったら千佳の機嫌が悪くなると思って黙っていたの」
「じゃあ、今はしゃべって良いわけ」
そう言いながら千佳は由佳を蹴りだしたので、真太は慌てて止めた。
由佳は千佳の足が届かないところへ逃げて、
「前から千佳は烈がステキとか、渋くてカッコいいとか言うのよね。あたしは年の差がある人はあまりタイプじゃないの」
真太は思わず、言ってみる。
「じゃあ、年下とかがタイプかな」
「年下も、ちょっとね。一緒にいたらきっと老けた感じに見えるから、遠慮したいな」
アボが、声をかけて来た。
「真太、行くぞ。と言うか、連れてけ。体力というか気力は温存しておきたい」
「はいはい」
千佳由佳は、
「パパ、もう行っちゃうの」
「うん、でもすぐ迎えに行くからね。良い子で待っていろよ」
等とパパは言い、千佳由佳は甘えに行った。
実のところ最近、真太は千佳由佳の様子からみて、パパはアビが言っていたように、能力の開花に影響する力があるような気がしてきている。
アマズンに着いてみると、アバの家にイヅとイデ、ちゃっかり住んでいる。真太は、家に入ると、
「やっぱりね。アバんちしか居られないよな。俺も泊まらせてくれるよな。イヅ、と言うか、ここの世帯主、イヅで良いんだろ。まさか、イデじゃないだろ、黄泉から出るときアバに家もらったとか無いだろな」
「ふん、じゃあ、俺の事はもう知れている訳だな」
「ああ、聞いてる。アビが当分こっちにはいかないとか言うけど、俺以上の事、やってるのかなイデは。自覚の上で」
「だったらどうなんだ」
「それ、やっちゃダメなヤツだから。きっと死んだとき、向こうで誰かにしめられるからな。」
「お前のしたことはどうなんだ」
「そういうお前だって、シンを支配しようとしていただろ。変な考え吹き込んでいたな。霊魂捕らえる罠があったから、シンは生身の人間に生まれ変わるしか手がなくて、大統領に取り付いていた奴を始末するのが目的だったんだからな。イデにどうこうされる筋合いはないんだ、崇高な目的ってやつだったんだからな。俺が邪魔したのは正当なことだから」
「お前も知っていたのか」
「後でな。霊魂捕まえる罠は、奴らの手口のひとつだ。その罠には、アビもやられていたな」
「そうか」
「うん、最近は争い方が複雑になって来て、少し奴らに押され気味だな。向こうの方が死んだ奴らは多いけど、こっちは使える龍神は数えるほどしかいない。だから段々滅びの坂道って感じになっているな。レディ・ナイラがアボの能力をかっているけど、たぶん勘違い。今にそれが分かると思うけど、やって来ちまった。香奈ママが金に目がくらんだからね。そう言う訳で、イデは、自分の能力開発、真剣にやってよね。はっきり言っておくけど、アボパパは当てにしないでやってね。きっと内心困っていると思う」
「お前ら親子、なかなかいい味出しているね。知らぬは本人達だけってところだな」
イデが奇妙なことを言うと、イヅも「うん、うん」と頷いている。ということで真太も首を傾げ内心、『どういう事?』と思うが、外が騒がしいのに気付き、そっちに気を取られる。
外に出てみると、舞羅一家、真奈伯母さんはもとより、爺さん婆さんまでついてきているし、舞羅と翼が来るとは思っていたが、悠一とロバートは何故ここにいるのか、不思議である。真太は、
「お前らまで来たのか、どういう事?」
「人間の英才教育もするっていうんだ。真太の周りの奴はみんな連れてこられるんだ。魔界の奴らに狙われる可能性があるってさ。レディ・ナイラのお抱え龍神さんたちに運ばれて来ちまった」
大勢知った顔がそろっていて、それを見たアボパパは、
「アマズンに皆来ることになっているのか。じゃあ、千佳由佳と香奈ママだって連れてこなくては・・・。真奈さん、アビはそういう手筈とか言っていたのかな」
「そうよ、こっちの動きを魔界の奴らに感づかれる可能性だってあるから、と振れて回っているよ。アボさんは聞いていないの」
「うん、とりあえずイデを何とかしろって事で、アマズンに来たんだが。どこかに学校を造る件はまだ先の事のようだったが」
するとロバートがアボに小声で、
「アビって奴、前から思っていたんですけどね。大丈夫なんっすかね。ずっと例の魔女に育てられていたんですよね。最近聞いたけど、霊魂って言うのはコロコロ変えようと思えば変えられそうじゃないっすか。本物とか偽物とか誰が見極めているんですかね」
アボパパ、顔色が変わる。
「真太っ、戻るぞ」
「うん」
真太はパパを抱えて瞬間移動した。
家では、香奈ママと千佳由佳は晩御飯の最中であり、二人が何故か帰って来たので、ママは、
「あーら、忘れ物でもしたの」
と、愛想よく言うが。千佳由佳は、アボパパや真太に目で訴える、
「ママが変」
「言っておくけど、たぶん仕事から帰って来た時からみたいね」
由佳が、口パクで言うが、生憎それはママに感づかれているようだ。愛想よく、
「二人ともアマズンに行ったものと思っていたから、ご飯無いわよ」
「それは良いんだけどさ・・・」
真太は言いよどんだが、アボパパはパパ最大限の素早さで、本物の方の御神刀を手にし、香奈ママの中に恐らく入っていると思しき魔族の急所を刺した。千佳由佳は悲鳴を上げる。ママは床に転がり倒れて動かない。眠ったのだろうか。