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第4話 先生がいればこんな日常でも、

第4話です!

前回のあらすじ

先生にやり場のない怒りをぶつけてしまった璃音。

後悔を感じながら、次の日を迎える――

「ん…っ、せ、せんせ…」

素足でベッドに横になった僕に、先生の手が伸びてくる。

その手は戸惑うように僕の足の上で動きを止める。

「い、痛かったら…言ってくださいね…」

「あっ…やっぱ、待っ」


そして先生は強引に――…



時は今日の朝まで遡る。



昨日僕は、いつものようにいじめっ子達にいじめられていた。

いじめが終わって、しばらく蹲っていると、なぜか先生が現れたんだ。

こんな僕に喋りかけてくれて、傍に来てくれて、助けてくれようと…してくれたのに…

拒絶してしまった。

信じられなかったからだ。騙されるのが嫌だった。優しい嶋先生、という心の拠り所を失うのが怖かった。

でもそれは建前で、本当は、ただ…


「うぇーい!シャワーターイム!」


急に頭上から水が降ってきた。

床に小さな水溜まりができ、机の上の教科書もノートも何もかも水浸しになった。

「冷た…」

目線を上にすると、数人の男子…少数の女子も…僕を見て笑っていた。

「汚ぇーから綺麗にしてやったんだよ、感謝しろよ笑」

「あー、でもその辛気臭い顔は相変わらずだね」

誰かがそう言うと、ドッと笑い声は大きくなった。

僕は水による寒さと、クラスの雰囲気に耐えられず、立ち上がった。

「てかさ、それ以前にブサイクじゃん、何したって無駄でしょ~」

「わかる、生きてて楽しいんかな笑」

「いやいや、こんな日常で楽しいとか言ってたらMだろ」

好き勝手に言って笑うクラスメイト達に心底うんざりすると同時に、涙が込み上げてきた。

こうなったのも全部自分のせいなのに、傲慢だな…

周りをシャットアウトするように、目を伏せて教室を飛び出した。


それでも耳にこびり付いた笑い声は、胸を締め付けた。


ジャージに着替えた僕は、何でもないように授業を受け続けた。そうしていなきゃ、どうにかなってしまいそうだったからだ。

授業中は特に何もされないから楽だ。

されたとしても、ゴミが投げつけられるか、悪口が書いた紙を机に置かれるだけだ気にしなければ…なんてこと…

そんなことを考えていたら、机にあった消しゴムに手が当たり、消しゴムが転がり落ちてしまった。

落ちた消しゴムは隣の席の机の下へ。

僕は一声かけてから、消しゴムに手を伸ばした…が、その瞬間。

「いッッッ…!!」

その席の主が、僕の手を踏みつけた。それも思いっきり、なんの躊躇もなく全体重で踏んできた。おまけにグリグリと足を動かした。

「痛…っ……やめ…っ」

激しい手の痛みに耐えられず、口から声が漏れる。

潰れそうだ…痛い…!

僕の異変に気づいたのか、黒板を向いていた国語の柏田先生が声を荒げた。

「おい!!何立ち歩いてんだ!」

先生の声に反応したのか、手を踏む足の力が緩んだ。僕はその隙に手を足の下から引き向き、消しゴムを取って急いで座った。

「すみません!消しゴム拾っただけです!」

先生は「そうか」と一言、すぐに黒板に向き直った。


そして6時間目、教科は理科だ。

昨日のこともあり、少し気まずかったので、授業が始まる直前に理科室に入った。

授業中、何度か先生と目が合ったが、僕は反射的に目を逸らした。

まだズキズキ痛む手を反対の手で握りながら、授業が終わるのを待った。


放課後になって、僕はもう一生嶋先生とは話せないんだ、と悟った。

一人きりの教室で、机に突っ伏しながら。

そりゃそうだ。というか、自分で突き放したんだ。自業自得だろ。

先生は自分が聞いたことにしっかりこたえてくれたというのに…身勝手過ぎる。先生だって本当は僕みたいに、お前が何できるんだ、とかって言いたかっただろうに。

別にもういいや、先生がいなくたって大丈夫。もう…どうでもいいや。


「璃音さん!!」


突如…教室に声が響きわたった。

「ぎゃああああ!??」

驚きのあまり、椅子から転げ落ちそうになった。

そこに先生が椅子を支え、言った。

「昨日はすいません…何も…できなくて」

その顔は悲しげだった。

先生。僕のことをまだ心配して…?

「そんなことないです。僕の方こそ…」

「怪我、してるんじゃないですか?」

「えっ?」

真剣な顔でそう言うと、先生は救急箱を取り出した。

「痛いとこ、見せてください」



――そして冒頭に至る。

「この怪我。いつも自分で手当てしていたんですか?」

僕の足や腕を見て、先生がそう言った。

痣ができていたり、傷ができていたりした。雑に巻かれた包帯が赤く滲んでいた。

「ちゃんと消毒したりしないと…包帯とか全部、取りますね」

先生は優しく包帯を取っていく。自分で見るのも嫌な傷が見え、顔をしかめた。

それでも、先生の手があんまりにも優しいもんだから、嬉しくも感じた。

「先生…僕、昨日も言いましたけど、承認欲求がすごいんですよ。……だから、特別扱いしてください」

赤らめた顔を斜め上に向けて生意気そうにボソッと呟いた。

先生は、救急箱を漁る手を止めて、悪戯っぽく笑った。


「じゃ、璃音。僕のこと信じてくれる?」

キーボードを見ずに文字打てるようになりたい今日この頃。

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