第3話 似たもの同士
第3話です!
前回のあらすじ
璃音は理科室にて、先生に何かあったのか聞くことに。
先生は何でもない、と笑うが、その目は寂しげだった。
その後、璃音が去った理科室で、嶋は璃音の悲鳴を耳にする。
「璃音さん…?」
なぜか分からないが、直感的にそう思った。
それと同時に、学生時代の記憶がフラッシュバックする。
嫌な想像をしてしまう。
机に置いたままのカッターを乱雑に引き出しに仕舞い、足早に理科室を出た。
――僕みたいな大人になってほしくないんだ。
僕は「先生」だから、守らなきゃいけないんだ…!
「先生」は笑顔で言った。
「待ってて、璃音さん」
僕は校舎裏に来た。声がこの辺りから聞こえた気がするからだ。
「う…」
小さな呻き声が聞こえた。
声のした方に体を向けると、座り込んだ璃音さんがそこにいた。
「璃音さん…!」
僕は璃音さんの元へ駆け寄り、前でしゃがんだ。
「だ、大丈夫…ですか…?」
顔を上げた璃音さんの顔は虚ろだった。
その顔に、ズキリと胸が痛んだ。拳を握りしめ、自分を落ち着かせた。
「…はは、先生どうしたの?汗だくだし、変な顔してるよ?」
璃音さんは笑ったが、すぐに笑顔は崩れた。
自分でもその事には気づいたようで、体育座りをしていた足に顔をうずめた。
僕は璃音さんの背中をさすり、隣に座り直した。
「何かされたんですよね…?」
少し間を開けて、璃音さんは答えた。
「何のことですか…」
顔を上げないままの璃音さんの体に目をやった。
そんな格好で言われたって、説得力ないよ。
長袖長ズボンで怪我は見えなかったが、ボロボロで汚れた制服が痛々しい傷や痣を想像させる。
「…相談してください。何か…トラブルがあるなら、解決しますし、一緒に乗り越えましょう。先生は璃音さんの――」
「それ、何なんですか。先生は皆そう言って…結局何もしてくれないのに。」
璃音さんは怒るように言った。何かに怯えるように口を震わせて。
「嶋先生だって、どうせ同じですよ。口だけなんですよ」
「そんなこと…」
「そんなもんですよ、教師なんて!」
その言葉が、僕の頭の中で木霊する。
自分の中の、何か大切なものを否定された気がした。
先生だって、皆が皆そうなわけじゃない。
少なくとも…あの人は……
「…そうですか。」
自分でも信じられないくらい冷たく言葉を発していた。
「…っ…僕は…面倒くさい奴なんで、誰彼構わず優しくする人のことなんて、求めてないんですよ。」
自嘲気味に笑うと、彼は立ち上がり、僕に背を向けた。
「承認欲求の塊なんですよ。…僕だけに向けられた優しさが…欲しいんです」
歩き出した璃音さんの背中を呆然と見つめて、自分の無力さに苛立たしくなった。
せっかくの先生の優しさを無下にした自分が馬鹿らしくて、先生が後ろにいるというのに失笑してしまう。
((本当…僕は最低だ))
3話にして、もう関係がギクシャクし始めましたね、、、
仲良くなるのって難しいよね(人見知り