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11-2 潜入

 「最果ての孤島」――世界地図の端に描かれた、大海原に囲まれた謎の地。

 その島の外壁は、高い岩盤が幾重にも重なり、まるで来訪者を拒むかのように聳えていた。


 旅行系VTuber、危野あぶのソラは、その凶悪な地形をものともせず、<無許可ツーリズム>のスキルで侵入を果たす。

 カメラをしっかりと構えて、観光レポートの“素材”を集める様子はどこか楽しげだ。


「はー、やばやば……ちょっとしたクライミングになっちゃったよ。

 でも、あたしはこの程度じゃへこたれないもんね!」


 ソラが軽口を叩く一方、もう一人のVTuber、息音いきおとひそめは、ギリースーツに身を包み、険しい顔をしていた。


 彼女は人付き合いは不得手だが潜伏スキルは一級品。そんな理由から、ニニギが提案した“斥候チーム”に加えられてしまったのだ。


「……なんであたしまで来なきゃいけないの……」


 小声で愚痴りながらも、二人は島の中心部へと足を進める。


 岩壁を越えると、鬱蒼とした森と荒地が広がっていた。

 その先には、暗雲を引き連れるように屹立する巨大な城があり、邪悪なオーラを放っている。


「うわ、あれが魔王城かな。

 パシャパシャッ……よし、写真撮りまくり!」


 ソラは嬉々としてシャッターを切り、記録を残そうとしている。

 一方、ひそめは森の陰に身を潜めつつ、嫌そうに眉を寄せる。


「もう確認したし、帰らない? ここ絶対ヤバいって……」


「だーめ、まだ戦力を把握してないでしょ? ナマの情報が大事なんだから!」


 仕方なく二人はさらに城の近くへと進む。

 黒く染まった外壁の門は、重苦しい雰囲気を漂わせているものの、驚くほど静まり返っていた。


「……誰もいないわね。

 罠かもしれないけど、このまま引き返すのももったいないし……行くよ、ひそめちゃん!」


「はあ……分かったよ。潜伏スキル、いつでも使えるようにしとく……」


 城内に足を踏み入れると、まるで時間が凍ったように静寂が支配している。

 焦げたような匂いや、崩れかけの壁はあるものの、見張りらしき存在は見当たらない。


「ほんとに罠くさいね……。でも、行くしかないか。

 謁見の間っぽい場所があっちにあるから、覗いてみよう。」


 注意深く廊下を進み、重厚な扉をそっと開ける二人。

 そこには、荒れた玉座の間が広がっていた。


「……玉座?」


 いかにも王の威厳を示すかのような椅子が鎮座している。

 しかし、その玉座に腰掛ける人物を見て、ひそめは目を丸くする。


「は? おっさんやん……」



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