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6-9 一皮剥けば

 重い体を引きずるようにして、美咲は建物の外へと出た。

外は焦げた匂いが立ち込めている。先ほどの爆発音の原因を確かめるため、痛む足を踏み出すたび、息苦しさが増していく。


 視界の先には、鎧に身を包んだ獅子の顔をした獣人、ミヴァレオンが猛々しい姿で立っていた。エルフたちは後ずさり、悲鳴や嘆きがあちこちから聞こえてくる。


「おいおい、誰がアリどもを全滅させたんだ?計画が狂っちまったじゃないか。」


 ミヴァレオンは苛立たしげに辺りを見回し、手近な家屋を爪で引き裂き、エルフをあぶり出そうとする。エルフたちは腰を抜かして震え、抵抗できない。


 その光景を目にして、美咲は拳を握りしめたが、今の彼女は猫神ルナではなく、ただの人間、美咲でしかない。どうすればいいのか分からず、動けずにいる。


「美咲、配信を始めて、ファンの声を聞こう。君がルナでなくても、彼らはきっと応援してくれる。」


 みけのすけが小さな声で促すが、美咲は首を振る。


「無理だよ…もう中身がバレたのに、応援なんて、してくれない……」


(そんなことない、美咲、それを証明してあげるよ)


 美咲が弱音を吐く中、みけのすけは黙って鼻先でVTubeスタジオのUIを操作し、ひっそりと配信を再開する。美咲は気づいていないが、コメント欄は再び動き始めていた。


「くくく……」


 ミヴァレオンが足元を見ると、転がったエルフの女がいた。鎧の下から発する圧倒的な重量で、エルフの女を踏みつける。


「命乞いしてみろ。さすれば情けをかけてやらんでもないぞ?」


 エルフの女は青ざめた顔で呻く。


「お……おねがいです……助けて……くだ……さい……」


 だが、ミヴァレオンは鼻を鳴らし、嘲笑する。


「足りぬなあ。ではそこにいる、人間にでも頼んだらどうだ?」


 踏みつけられたエルフの女は苦しげな表情で美咲を睨む。視線にはプライドと屈辱がないまぜになっている。


「下等な人間よ!今すぐ私を助けなさい!」


 美咲は言葉を失う。彼女を軽蔑してきたはずの高貴なエルフが、虫ケラを見るような目で、自分に命乞いをしてくる。その醜さに、美咲は胸を抉られる思いだった。


「ははは、エルフが高貴だなんて嘘っぱちだ。一皮剥けば人間もエルフも等しく醜く矮小な存在よ。」


 ミヴァレオンは哄笑し、さらに破壊を続けようとする。美咲は痛む体を支えながら、どうすればいいのか分からず、混乱したまま立ち尽くす。


 しかし、背後では配信画面に再びコメントが流れ始めていた。


「ルナちゃん…中の人さん、聞こえてる?」

「大丈夫だよ、俺たちはまだいる!」

「姿がバレたって応援してるぞ!」

「戦えなくても、僕たちが応援する!」


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