『百年の孤独』の文庫版がヒット、と聞いて
ガルシア・マルケスの『百年の孤独』が文庫化されて、ベストセラーになっているんだそうだ。最初にニュースで見たときは、どういことだか良く分からなかった。
『百年の孤独』は、南米の『マコンド』という架空の村を舞台に、ブエンディーアという一族の栄枯盛衰を描いた物語で、ノーベル文学賞作家であるガルシア・マルケスの代表作。
なぜ今、ガルシア・マルケスなのか。経緯は良く分からないが、長い間単行本だけだったものが、文庫になったことで購入者が増えたらしい。こういう人の心理も、私は良く分からない。家電製品とかなら、わからなくもない。
本を読むなら、別に購入しなくても、図書館で借りればいいし、古本だったら文庫よりも安い値段で売っているだろう。
そういうことではなくて、ガルシア・マルケスも『百年の孤独』も知らないが、単行本で出た、というニュースで知って、有名な作品らしい、ノーベル文学賞作家の作品らしい、等と言う興味から手に取る人もいる、ということだろうか。
私が『百年の孤独』を買ったのは大分前で、1990年代の半ばくらいだから、かれこれ三十年くらい前だ。手元にあるのは、新潮社の単行本で、1982年の12刷のもので、白と青のシンプルなデザインの表紙のやつだ。表紙に書いてある値段は1500円。古本の値札がまだ貼ってあった。600円。ページは300ページほど。ただし、上下二段だし、文字も小さい。
きっかけは、たしか、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『伝奇集』という岩波文庫から出ている短編集を読んだことだったと思う。あまりラテン・アメリカの作家の小説なんて読んだことも無かったな、と思って、『伝奇集』のあとがきにもあった、ガルシア・マルケスの作品を読んでみようかと思ったんじゃないだろうか。
ガルシア・マルケスで、最初に買ったのは、筑摩文庫の『エレンディラ』だったか。サンリオSF文庫版もあったようだが、それは入手困難だった。その後、『青い犬の目』(福武文庫)と読んで、『百年の孤独』は文庫にはなっていなかったので、古本屋で単行本を買った、という経緯だったかと思う。
思い返すと意外と読んでいる。何が気に入ったのか知らないが、当時ガルシア・マルケスは続けて読んでいたらしい。
『百年の孤独』は買ってきてから読み始めて、続きが気になってその日の夜遅くまでかかって読み終わったと思う。「マジックリアリズム」とか言われる手法は、すでに2冊短編集を読んでもいたからか、気にならなかったようだ。もっとも、SFやら幻想文学やらを読んできているので、そういうことを気にするようなこともなかっただろう。
読後感は、歴史小説を読み終わった時とかと似た感じだった。ちょっとした、ノスタルジーを含んだ、感傷的な気持ち。パール・バックの『大地』とか、そういう作品も頭に浮かんだように思う。私が、古代史とか歴史が好きということもあるのだろう。
単行本を見て思ったが、上下二段の細かい字は、老眼の年寄りにはちょっときつい。再読するための買い替え需要、というものも、文庫版にはあるのかもしれない。