表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

※バッドエンド注意

作者: みやま

「魔王が死に際に、必ず一人で読め、魔王と魔族の秘密について書いた本だ、ってこれ渡してきたけど、魔王を倒したのに今更必要な事なんか書いてあるのか?」ペラッ

 


 これは勇者にのみ読ませる為に日本語で書いているが、読み終わったら分かるだろうが内容は他言無用だ。

 読んだ後は必ずこれを誰にも見つからない様に抹消しろ。


 これには私が知っている事、魔王として伝えられてきた事を全て記す。






 まず知っての通り、魔王は吸血鬼である。これはどの時代の魔王も変わらない。人間側は魔王はいつの間にか現れる、と考えているだろうがそれは違う。きちんとした流れによって生まれる者である。この流れは私も部下たちも倒した後だとしても変わらない。


 部下たちは私が血を吸うことで魔族となった。吸血鬼だからな。最初に会った時に見たように、あれ等は元は人間である。

 あの時話したように、私は洗脳なんてしてないぞ。彼等は望んで人間を辞めるのだ。お前も見ただろう、あの身分差に悩んでいた二人を。お前は止めようとしたが、二人は納得して私が連れ去った。今では身分差による価値観の相違で些細な喧嘩はする様だが、幸せそうな新婚生活をしているよ。こういう所はやっぱり人間と変わらないね。










 魔族が元は人間であるように、魔王も元は人間である。







 驚いただろう?目玉が飛び出たか?私も初めは驚いた。それまで人間側として一生懸命だったからな。突然人間の敵側へと変わるのだ。どれだけ恐ろしかったか。


 そうして、まず王国にて囚われている王族を解放する。お前も言われただろう。「魔王はまず王族を拐う」と。あれは逆だ。王族は王太子以外の子供を閉じ込めてしまう。魔王に拐われると教えられているのだろうな。閉じ込められた不幸な子供の完成だ。魔王のせいだとされるのなら、責任をもって解放してあげるべきだと思ってこっそり開放したのだが、どうしても本人が付いて来たがったのだ。いつの時代でもやせ細った王族とは思えない者がいるそうだ。私が行った時もそうだった。それが答えだろう。


 王族を開放した後は少しずつ魔族を増やしていく。これは簡単だった。今の王国はあまりにも酷い。お前も違和感を感じるくらいは有っただろう?人間として苦しむくらいなら魔族として新しい生き方に未来を託したくなる程の絶望だ。

 人間をどんどんと魔族にするのに戸惑いは無い。さっさと全員魔族にしたかったんだが、元は人間だから無理矢理にはしたくないから時間がかかった。まぁ、人間を全部魔族に出来ても、お前はその後今からと同じ様に苦しむ羽目になるんだがな。


 その後はお前の知っての通り、勇者と戦う。これは魔王が必ず負ける。それは決まっている。勇者は魔王を倒すまで復活し続けるからだ。魔王はようやくこのときに死ぬ。魔王は皆この時を待っている。



 そしてここからが大事だ。


















 

 勇者は次の魔王となる。魔王はみな元勇者である。みな日本から召喚され、勇者として魔王を倒し、魔王となり勇者に殺される。勇者は復活する。死ねないのだ。次の勇者が来るまでに少しずつ魔王へと変わっていく。私は500年を生きた。年も取らず、ただ見つからない様に、時期を待ち続けた。完全に魔王へと変わらなければ、日中を出歩く事すら出来ないのだ。


 お前も私を倒したなら、これから激しい痛みと恐怖、そして永い孤独を味わうことになる。



 私を倒したことを後悔しているか?それは無駄だ。

 この世界に召喚された時点でこのサイクルに組み込まれてしまうらしい。前の魔王に勇者以外のすべての人間を魔族にした者がいたらしいが、魔王は王として亡くなり、魔族は退化して人間になり、元勇者は結局魔王に変化してしまったそうだ。














 この世界がなぜ勇者として日本人を召喚できるのか。なぜ勇者は必ず魔王になるのか。なぜ勇者が召喚されるまで魔王は死ぬことができないのか。それは分からない。

 ただ事実として、お前はこれから魔王となるために仲間もいない苦しく永い時間を過ごすことになる。申し訳ないが私は一足お先にあの世に行って休むとするよ。頑張ってくれ。








魔王城に響き渡る絶望の声。

ただ一人生き残った勇者の戦いはまだまだ続く。



THE END

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ