逃げるとでも?・待ち望んでいた再開
サンブレイクおもろいなぁ・・・てか眠いなぁ。特にここに書くことないけど書かないと負けた気がするんだよね。なんでだろうね。
「うぁ・・・な、に・・・これ・・・意味・・わかんない・・・」
全身が激しい痛みに侵されている、意識を手放したくなるような激痛が手足を自由に動かすのを妨げている。山のように聳え立つ壁から地面まで叩きつけられた、一体何メートル蹴落とされたんだろう。我ながら頑丈過ぎるなと思っちゃう。
崩落した壁が瓦礫の礫として降り注いでくる。潰されたら堪ったものではない、一旦この場を離れないと。
「・・・さいよ」
「あい?」
悲鳴を上げる体を無理に起こそうとしたとき真下から何かが呻く声が聞こえた。
「早く退きなさいよ小娘!!」
「わッ!」
私が退こうとする前に私の下敷きになっていた鴉が飛び起きて私を地面に落とした。そうだった、吹き飛ばされた時に鴉を巻き込んだんだった。クッションがあって助かった、私のダメージはかなり軽減された筈だ、ラッキー。
「アチキの羽は高級羽毛布団よ!気安く下敷きにしないで頂戴!!」
「黙っててよ、まずここから離れないと、瓦礫が・・・」
立ち上がってみると、痛みは大分引いてるし、傷もほぼ治った。もう動けるまでは回復してる。手を握ったり開いたりして感覚を確かめる。やっぱ私も化け物だなぁ・・・知ってるけど。
――よし、もういける。
零れそうなため息を飲み込んで、真上に迫った巨大な瓦礫はそこのカラスぐらいなら潰してしまいそうな大きさだ、でも問題になし!ふう、と息を浅く吐いてから細身の剣であっさり真っ二つにしてみせた。
その様子をみた鴉は目を丸くして驚いていた、鴉のクセに鳩が豆鉄砲を食ったような顏している。その直後「なんだい、意外とやるね」と、謎の上から目線に僅かながらイラっとしたが構ってる場合ではないから何も言わずにしておく。
切り裂いたのは瓦礫の一つだけ、まだまだ沢山降ってくるから、危険な場所から走って離れる、チャルを追う為壁の内側の方だ。広がる森林へ向けて移動する。どーせあの対自然ドMは森に入ってクマにでも襲われたいだろうから多分森にいる。因みに自慢なんだけど、地上を移動する分には飛ぶより走った方が早いのだ、私の場合は。・・・それよりさぁ。
「ちょっと!ついて来ないでよ!!」
後ろにピッタリと付いてくるカラスに文句を言うと「まだアチキ達決着付いてないでしょうがッ!!」と怒られた。なんで私が怒られてんの?そんな状況じゃなくない?だって――
「逃がすとでも?」
直ぐ真上からさっきの軍服の男の声が聞こえた。随分冷徹な喋り方をする、トラウマになったらどうしてくれるの?てかその殺気に気が付かない訳ないじゃん。
「逃げるとでも?」
軽く跳んで両足で地面を思いっきり踏みつけて魔力を流し込む、それと同時に翼を生やして剣を振りぬく体制を整える。
流し込んだ魔力の影響で周りの地面が鋭利な棘となり頭上の男に向かって伸びていく。しかし男は複数の棘の側面を全てナイフで刻んでみせた。顔色一つ変えず、実に冷静に。それも知ってる、この程度の攻撃効かないなんてわかってる。これは、いわば敵を釣る為の餌、撒き餌ってやつ。
翼を羽ばたかせると同時に地面を蹴り空に駆け出す。相手が最後の棘を折るタイミングに合わせて居合い斬りのように剣を振りぬいた。
「もういッッちょッ!!」
空中で踵を返すように頭を下に向け地面へ向かって羽ばたき落下する。地面に帰る途中もう一度男を斬りつけて加速した勢いと体重全乗せで着地する。
「ロックブロー!」
着地と同時に再び魔力を地面に流し込む、さっきより勢いよく着地したからより深くまで魔力を送り込める。地中深くのデカい岩を地上に引きずり出して地面からハンマー投げのようなスイングで遠心力を乗せて相手にぶつけそのまま叩き潰す。
まともな相手ならこれで挽肉になってしまうのだけど。
「小娘!後ろ!!」
「!」
カラスの声で後ろを振り向くとあの男の拳が目の前にあった。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
・・・ルドを追い返して、しばらく罪悪感に苛まれていた。
頭を抱えていると、なんの前触れもなく轟音が響き地面を揺すった。あまりに唐突な出来事にルドに対する罪悪感は頭の片隅に追いやられてしまった。
「何の音!?」
「様子見てくる」
揺れに対して恐怖心が沸く、襲われた時とはまた別の種類の静かに沸き立つ恐怖心だ。どうしていいか分からずにいるとローグは外に飛び出していった。
「まって、私もいく!」
置いていかれるのは嫌だ、流石に不安になる。他に誰も居ないなら仕方なし、たとえローグでも近くに人がいるなら今は離れたくない。・・・一応今の所、ローグは手を貸してくれているし。
ローグを追って家の外に飛び出すと遠くにぼやけて見える外側の防壁がIの字に抉れている。異常な光景を目の当たりにし、二人で一緒に言葉を失ってしまった。
「何が起きたんだ・・・?」
ローグが絞り出した言葉はそれだけだった。私も同じような言葉しか浮かんでこない。ただただ茫然と立ち尽くしていると、壁が崩れている方角から何かが飛んできた。それが地面にぶつかると隕石でも降って来たみたいに土を辺り一面に撒き散らす。飛んでくる粒てからとっさに腕で顔を覆い視界を守った。
「今度は何!?」
速過ぎて何が飛んできたのかは見えなかった。それが何か認識する前に声が聞こえてくる。
「痛いなぁ!!乙女相手に本気出し過ぎじゃないの!?」
砂煙の中から女性の声がする、信じられないけれど飛んできたのは人、それも・・・女だ。更に口ぶりからまだ余裕がある。飛んできたのが人だと分かるとローグが咄嗟に私の手を掴んだ。・・・正直、驚いて肩がビクンと跳ね上がってしまった。
「少し離れて様子を見よう」
「わかった」
ローグに触ってる間は誰にも見られない、こんな状況ではこれほど頼もしい能力はそうそうないよね。ローグ自身危険人物であることは間違いなさそうだから信頼しきることはできないけれど。
私達がその場から動こうとした直後、もう一つ物体が飛んできた。最初の女性とほぼ同じような速度だった。やっぱり何が飛んできたのか認識する暇はなかった。次の瞬間金属が激突する音が響く。その衝撃がこっちの肌までビリビリと伝い、砂煙を攫い後ろへ突き抜けていく。
顏がヒリヒリする、砂利が強く顔に吹き付けたから。今度は腕で防ぐ間もなかった。
目を開くと視界が開けてる。
ナイフを装備した兵士と大剣を持った空色コートを着た空色ツンツン髪の男が鍔迫り合いをしている。その後ろに金髪の女性がいた、さっきの声は彼女のもので間違いなさそうだ。兵士の顏はこちらからはよく見えない。でも私はその後ろ姿に既視感を覚えていた。
「よぉ、レンが世話になってるみたいだな。俺、カルマってんだ。忘れちゃやーよ☆」
「・・・」
「うわー、不愛想!表情筋絶滅してる系?」
「チャル!ふざけないで!!そいつ「おいおいおいおいおい、俺は今まで一度たりともふざけたことな・い・ん・だ・ぜ?」
鍔迫り合いの最中空色の方が女性の言葉を遮り、挙句に女性に舌を出してピースサインを送る。
「・・・」
「あ、レンの表情筋も絶滅系?顔面氷河期到来!?」
気持ち悪い、あの男、気持ち悪い。立ち振る舞いとか見た目じゃない。いや、言動は普通にキモイんだけどそうじゃなくて。何を思っているのか、感情が微塵も見えない。それがこの上なく気持ち悪い。こんなこと今までで一度もなかった。まるでジャミングでもされてるみたいで、感情を見ようと思ってもザラついてて何も見えない。
私の目には得体のしれない化け物に映る。カルマ、二度と会いたくないと、一瞬でそう思ってしまうほどに、気色の悪い存在。
「ローグ・・・アイツ嫌だ。もっと離れよう」
「ああ、分かった」
繋がれた手につい力が入る。それに答えるようにローグも手に力が入った。ローグに手を引かれ距離を取る、ローグがいなかったら巻き込まれていたかもしれない。そう考えると生きた心地がしない。
「排除する」
兵士がそう言うと大剣を払うように押し返した。空色の方は押し返された直後飛び退き――
次の瞬間には兵士の後ろに回り込んでいた。速過ぎる、回り込む動作がまるで見えなかった。ローグもやはり見えなかったようでポカーンと口を開けて「劇的すぎんだろ」と頭の悪そうな事をつぶやいている。
「な~にカリカリしてんだよ、便秘?おっと!!」
空色の方が兵士の肩に手を置こうとしたら兵士が振り向きざまに閃かせた銀の筋が首を掠める。空色の方はまたも飛び退いて距離を空ける、その場所は私たちのすぐ目の前だった。
「お、見学か?」
「え?」
カルマと名乗った空色がこっちを見てイヤらしいニヤケ顔で話しかけてきた。私以上にローグが驚いて私の手を離して前に出る。手を離してから「しまった」って顏してたけど私の視界は別の物しか映っていなかった。
「音痴さん・・・?」
奥の兵士の顏だ、あの顔の傷には覚えがある。あの傷は私のせいでできたもの。だから・・・忘れる筈も、見間違えるはずもない。私の顔を見た音痴さんはほんの少し、目を丸くするとむき出しだった殺意が瞬く間に霧散した。僅かに立ち尽くした後、音痴さんは「やめだ」とボソリと零す。
「ねえ音痴さん!!私ずっと言わなきゃいけないことが――
私の言葉を待たないで音痴さんが後退る。
まって お願い行かないで
その言葉が心を伝い喉から出る前に音痴さんの背中から新雪のような白銀に輝く神秘的な翼が生える。シルクでできたカーテンのようにしなやかで力強くも美しい飛膜がある。そう、飛竜のような力強い翼だ。矛盾してるかもしれない、でも確かに神秘的で、しなやかで、それでいて力強いと感じた。そして――
なぜか音痴さんとは違う懐かしい気配も。知らない、見たことのない翼なのに。なんでそんな風に感じたんだろう?そんな事を思ってる間に音痴さんは翼を一度羽ばたくだけで嵐のような烈風を巻き起こし、飛翔した。
「逃がすかよッ!」
空色の奴が血相を変えて空へ駆け出し音痴さんを追う、瞬きする頃にはもう姿は見えなくなっていた。
人物?紹介 ポメラン
ポメラニアンの姿をした魔族。毛並みは薄茶と白の二色。
水属性と地属性の使い手。
人語は話せないが意味は理解している。
友達を探す旅の途中カルマと出会い、友達と似た雰囲気を感じ取り旅に勝手についてくるようになった。友達探しをやめたわけではない。
スタンプロッドという木製の杖で戦う陣士。
陣については別のあとがきで解説するとしよう。
性格はわがままで旅仲間の食材を頻繁に盗み食いする。バレると逆切れか逃走の二択。
友達と月に行くのが夢。