鼻血ほじほじ・順神格との遭遇
またしても大量の誤字報告ありがとうございます。おかしいな、確認してから投稿しているはずなのにどうしてこんなにガバガバなのだろうか・・・まあ今から夜勤だから気にせず寝ます。
「なあなあ、そろそろ離してくれていくね?」
空中でコートの紐を咥えられたままの空色の青年が未だに鼻をほじりながら大カラスの魔族に問う。鼻をほじり過ぎたのか指を突っ込んだ隙間からボタボタ血があふれている。
「あ゛~、鼻血が脳みそに浸透しそう」
ちなみに結構高い所を飛んでいる。雲を間近に見て取れる高さだ、そんな高いとこだから強風が酔い易さを助長している。酔い防止に遠くに視線を向けてみると超巨大な人工物が視界に映り込んだ。
「なんかクソでけぇ壁見えてきたぞ、景観を著しく悪くしてんぜアレ、許せねぇよ、なあカラ公?」
物を咥えた状態で大カラスが返事などする筈もない。
それにしても本当にデカい壁だ。下手な山よりも高度があるだろう。しかも緩やかにカーブを描いているその壁は地平線まで続いている。
恐らく国を囲むように壁が出来てるのだろう、青年はそこに違和感を覚えた。敵からの侵入を想定するにしてもこの規模は過剰と言わざるを得ない、それにこれを作るのにどれだけの年月と手間がかかるのだろうか?現実的な規模ではないのだ。入れない為の防壁ではなく、あらゆる者を出さない為の牢獄。なんとなくそんな気がした。
「・・・天使臭ぇな」
この場所は調べねば、青年はそう決断する。
そんな事を考えていたら後ろから聞き慣れた羽ばたく音が聞こえてきた。
わざわざ金髪のポニーテールの少女が追いかけてきたようだ。
「あ~、頭に血が上って来たわ~、ブランブランして酔いそうだしよ~」
「ちょっとチャル!何呑気・・・鼻ほじんなやボケナスがよぉッ!!」
レンが翼をはためかせて追い付いてきた。必死の形相である。
「お、レンどうした?散歩?」
「あい!?ふざけてんじゃないわよ!死ね!!鼻血脳みそに詰まらせて5・6辺死ね!!」
レンの顏が真っ赤になっている。熱せられたタコのように赤い。どうみてもブチギレてるのは明らかだ。
「静かにしろよ、俺は優雅な空の旅を楽しんでんの。見てわからんの?」
「鳥に誘拐されてるのに優雅もクソもあるかァ鼻血野郎がッ!!」
レンは更に必死に羽ばたいて遂に俺の横に並んだ。
青年はレンに関心する。あの翼は人間の体に無理矢理生やしたもの、相応の苦痛が――
「うるッさいッわねェッッッ!!!ペチャパイは引っ込んでな!!」
「!?」
二人の真上からドスの効いた怒鳴り声が響いた。なんと大カラスが喋ったのだ。そしてついでに大カラスは禁句を口にしていた。青年の顔は一気に渋くなる。
そしてカラスがしゃべったと言うことは青年は当然地面に真っ逆さまに落ちることになるだろう。
しかしでもそれよりもペチャパイの方がヤバイ、ヤバイというかメンドクサイ事になる。
「・・・・の事・・・・・・・・た?」
レンの体が小刻みに震えている、スイッチが入ってしまった証拠である。
「おぉん!?なんだいペチャパイのクセにアチキの宝石盗もうったってそうはいかないよ!!」
青年のコートのはただの飾りで宝石ではないしお前のものではないとツッコムべきか瞬間的に迷ったが口に出さないでおくことにした。すでにメンドクサイことになっているから。
「・・・の事・・・・私の胸の事なんつったァアァァアァァァア!!?」
「はッ!何度でも言うたるわよ、まな板はすっこんでなッ!!」
「ぶっ殺すッ!!磨り潰してつくねにしてやらぁ、鶏ガラがあぁぁあぁああ!!」
「つくねか鶏ガラかどっちかにしなさいよ!プラスチック製のまな板がァ!!!」
「つ、ツルツルってことかゴラぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?!?」
「しかも抗菌仕様だよ!どんな男もそんな胸にゃ寄り付けないわねぇぇぇぇえぇぇ!!」
鴉が翼で中指立てるっぽい動作してる。関節的に不可能なポーズであると思われる、流石は魔族である。
白い翼と黒い翼が空中でぶつかり合う、しかし青年はそれより更に下に別の気配を感じ取る。気配の方に視線を向けると壁の天辺で人が集まって何かしている。
「大型鳥魔族補足完了ォ!!」
「よし、迎撃ミサイル発射ァ!!」
直後ブシューッと空気を震わせるほど大きな音が響くと先端が赤くそれ以外はほぼ白い鋭利な楕円形みたいな物体が煙を吹きながらこちらに向かって複数飛んでくる。とどのつまりミサイルだ。文明進んでるなぁ~、と青年は呆れた。
「小賢しい小娘め!乳首ついばんであげるわ!あぁ~っと!これは失礼ッ!!ついばむほどの胸がありませんでしたねぇぇぇぇえッ!!!!」
「△゛×゛※゛◇゛ッ゛ッ゛ッ゛〇゛■゛☆゛!゛?゛!゛?゛!゛?゛!゛?゛」
レンの怒りが最高潮に到達したらしい、口から怨嗟の念が漏れている。漏れ過ぎてて何言ってるのか聞き取れないが。
レンが自分の翼から羽を一枚むしり取ると魔力で包み武器を形成していく。一枚の白い羽は細長い白銀の剣へと姿を変える。繊細な見た目と本人の背丈より長い刀身が目を引く片刃の武器、ブレードランスのお目見えである。
武器を出したという事は本気でカラスを殺しにかかるらしい。ホント、レンは胸の話になると周りが面白いほど見えなくなる。因みに自分より胸の大きい相手とは敵対する、それ即ち全女性は彼女の敵ということである。
レンが剣と共に握りしめた殺意を振るおうとした直後、下から放たれたミサイルが大カラスに直撃して爆発した。一発でも充分な威力に見えたが間を置かずに何発も着弾しては爆発を繰り返す。火薬の臭いと焦げ臭さがすぐに青年の鼻をくすぐる。
「ま、レンなら平気か」
落下してたおかげで爆発に巻き込まれずに済んだ。青年は思い至る、この距離であれば自分とレンの姿は視認できていないだろう、つまりカラスに気を取られてる今が壁の内側に侵入するチャンスであると。
落下を止めて空中に着地、見張りの目が薄そうな場所とタイミングを見計らう・・・
「じゃーなレン!俺ここで食料でも調達してくるわ」
「あい!?ちょ・・・」
「アデュー!すぅ~ぐ戻ってくっからよ☆」
「嘘つけ!!また私達から逃げる気だろーが!!」
「何か言ってるけどわからんな~。だってメッチャ爆発してるもんな~、逃げる気だろとか聞こえねーなー。ナンノコトダローナー。ワカンネーナー」
「絶対捕まえてシバクからなッ!!」
「おー、怖い怖い。怖いから全力で逃げちゃうもんね」
空気を蹴り「ほいっ」と掛け声一つで壁の内側に飛び込んだ、数キロのデカい一歩。不法入国達成だ。
「なんか変な物体が防壁を超えたぞ!追え!!」
「後だ!先に魔族を仕留めろ!!攻撃を緩めるな!!!」
どうやら一瞬だが俺の姿を捉えた奴がいたらしい。しかし壁の上から攻撃して来た連中の動きに統率が無い。集団行動ってのに無頓着な青年でも分かるくらい動きがバラバラだ。おかげで青年は追手をそんなに気にしないで済みそうである。
下を見ると遥か下には緑が生い茂っている。このバカみたいに高い壁の周りは全く手入れがされていないらしい。姿を隠すにはうってつけではあるので好都合、ありがた~く利用させてもらうことにしよう。
頭を地面の方へ向けてもう一度空気を蹴って緑の中に思いっきりダイブした。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
ミサイルがこちらに飛んで来ては爆発を繰り返す。ただでさえ鴉に胸の事言われてイライラしてるものだから私の怒りは既にMAXに達している。
「うがあぁぁぁああぁぁ!!テメェ等その攻撃止めろやぁ!!!」
爆風に乗って翼を羽ばたかせ限界以上の速度を出す。私の地属性の魔力の使い手。勢いが大事な魔力だ。相手の攻撃でも利用できるなら利用してやる。
壁に余裕で到達できる速度に到達したら空気抵抗を減らす為翼を一旦消して壁にそれこそ砲弾みたいな勢いで接近する。
「このクソガラスをぶっ殺すのは私なんだよ!邪魔するなァ!!!」
ダァン!!
壁に蹴りをぶち込んだ音と衝撃が響く、その勢いに乗せて足から壁に魔力を流し込む。魔力を流した一瞬の後、私の魔力が作用して壁にヒビが入って、ガラガラ音を立てて崩壊した。一部だけね、全部崩すには大きすぎるし危ないし。壁の上の兵士達は突然の壁の崩壊にパニック状態になっている。
ま、人は巻き込まないように崩した筈だから大怪我してる人は居ない筈。軽い怪我してる人はいるかもしれないけど。こっちは爆撃されてるからね。それに比べたら安いもんでしょ。
「お待ちなさいこの小娘ぇぇぇええぇぇえ!!!」
「うわッ!」
カラスが爆撃をものともせず私を追ってきた。咄嗟に翼を生やし上へ飛び上がる。爆撃の中心に居たはずのカラスの体は綺麗なもので爆発による傷はもう回復しているようだ。この回復速度、結構魔力を蓄えた強い魔族ということだ。思っているより面倒な敵らしい。魔力が尽きないと首刎ねても死なないからホンット魔族の相手は面倒くさい。
「そ、総員退避!!」
兵士の誰かがそう言ったのを合図に兵士たちは持ち場を離れて一斉に逃げ出す。それは正しい判断だった。兵士が逃げた直後、ヒビの入った壁に対してカラスが操縦不能に陥った飛行機の胴体着陸みたいな乱暴な着地をしたものだからひび割れて脆くなった壁が耐えられず大きく崩壊する。
「ちょっと、危ないじゃない!」
「お黙り小娘!決着をつけようじゃないの!」
カラスはは放たれた弾丸のように一直線にかつ豪速でこっちに飛んでくる。だったらこっちも突っ込んでやる、一度真下に向かって羽ばたいてから翼を消して空気抵抗を減らし最大限加速させる。
「上等よ!アンタ仕留めればしばらく鳥肉に困らないわ!」
剣を握り直し迎撃の為に呼吸を整える。間合いを図って・・・
・・・ここだ――
「!?」
振りぬこうとした剣がピクリとも動かない。一体何をされたのか理解が追い付かなかった。
「なんだいお前!邪魔するんじゃないよ!!」
カラスのその言葉でようやく私の後ろの気配に気が付く。剣が誰かに掴まれていた。
「邪魔なのは貴様等だ」
振り向き様に一瞬見えたのは迷彩柄の軍服に身を包む中年の男、栗色の逆立った短髪。
無機質な表情が不気味さを醸し出している。そしてなにより顔を斜めに横断する3本線の太い傷跡が無機質な不気味さを助長していた。
軍服の男が私の剣を離したと思った瞬間、稲妻のような蹴りが胴体に撃ち込まれる。
その猛烈な衝撃に肺の空気が口を結んでいない風船のような勢いで血と共に吹き抜けていく。
胴体から瞬時に全身に痛みが広がり筋肉や骨がズタズタになり地面に向かって体が吹き飛ばされる。
「きゃ・・・
短い悲鳴と同時に何かにぶつかった感覚があった、どうやらカラスを巻き込んだらしい。人を丸飲みしそうな巨体の鴉を巻き込んで、それでも勢いは死ぬことなく私たちが崩した壁に叩きつけられた。
しかしなお勢いは衰えず、そのまま頑強な壁を破砕しながら落下を続ける。壁が崩落する轟音と共に壁の根本に埋め込まれた支柱までむき出しになるほどの衝撃で叩き落された。
人物紹介 レン・フェアリー・ハート
金髪のポニーテールに緑の衣服が特徴。すぐ裸足になれるようにクロックスを愛用している。
地属性の魔力の持ち主。
カルマのことが好きでともに旅をしている。
言動が乱暴でキレれやすく攻撃的な性格。
料理好きでもあり手際よく完璧な調理もこなし盛り付けのセンスも抜群である。
ただし本人が▼※★◎のためお察しである。
胸部のサイズがコンプレックスでサイズは男と同格である。
無いといっても過言では・・・うわ、なんだ何をする やめ
だれ す たす
け
あ