よそ者の悪党一行・救援要請・悪意の救世主
そういえば連載する少し前にツイッターで視点移動してはいけない、過去辺をやってはいけないって創作論が流れてきて「へぇ、そうなんだ」ってなった直後に「知るかァ!!こちとら30話ストックしてんだぞ!!今更書き直すわけねぇだろうがぁ!!!」って逆切れしてましたことをここで薄情します。これでも渾身の一作なのよ。そもそもアレだわ、三点リーダーアレルギーの時点でそんなの気にする必要なかったわ。あ、くっそキングダムハー〇ウエハースのカードまた13機関やんけ。ダブりまくりや・・・
「あい?ソウルアローン??なにそれ」
聞き慣れない言葉に金髪ポニーテールの少女が首を傾げた。
「魂だけの存在、残魂の塊だ。少しだけレンに似た存在かもな」
「私に・・・魂成獣ってこと?」
「そ、魂の複合体だからな。ただ実験体と違ってソウルアローンの場合偶発的に生まれることのが多い」
空色のツンツン頭に空色のコートを羽織った青年(?)がその瞳と同じ色の空を見上げながら鼻をほじり答える。
コートの背面には二匹の竜があしらわれており、二匹の尻尾が絡んでいる部分が紐になっていて先端には魔石によく似た黒いひし形の宝石が付けられている。その宝石は風に乗ってキラキラと光を弾きながら踊っている。
「ふーん知らなかったなそんなの。ねぇ、チャルは――」
一旦降ろした視線を上げるとコートの青年の姿が無くなっていた。
「あい?え?チャル!?どこ行った!??」
「チャルにぃならほら、あそこ」
白いシルクハットを被った十代前半ぐらいに見える男の子が空を指さす。その先にはヘリコプターと同じぐらいの立派な体躯をした鴉型の魔族が空色のコートの青年を咥えて飛んでいた。正確に言うならコートに付いてる黒い宝石を咥えている。青年は空中で逆さまのまま、まだ鼻をほじくりまわしている。
「ほぎゃあぁあぁぁああぁ!!!チャルが食べられちゃう!!」
少女の背中から白い翼が生えると一直線に鳥型魔族向かって飛び立った。
「ちょ!レンねぇ!!置いてかないでよ!!ポメラン、メルにぃ!!追うよ!!!」
「キャウ?」
「くぁ~・・・」
呼びかけたポメラニアンと茶トラぽっちゃり猫はどうでもよさそうにゆっくり歩いている。
猫に至っては欠伸するほど呑気にしている始末である。
「ちぇ、二人とも薄情でやんの・・・あれ?っていうかあの方角ってさ、ヤバイ国あるから近づくなって言われてた方角じゃない!?うわあああ!マズイ!!なんでチャルにぃ抵抗しないんだよ!!」
シルクハットの男の子の顏が真っ青になって二人の後を追い、その後ろを犬と猫の二匹はのんびり歩いてついていく。世界を滅ぼす為の彼らの旅はいつもこんな調子だ。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「はぁ・・・」
何回目のため息だろうか、数える気にもならない。理由は至極単純で軍用車は嫌いだから、自分一人で乗るのならまだしも他の兵士たちと乗ると必ず気分を損なう事になる。
「へへ、ルドさんも戦えるんッスねぇ?いいんスか?相手は空飛ぶ魔族ですってよ?それも大型」
「戦うと言っても肉弾戦ではない、兵器の扱いはわかってる。黙っててくれ、集中したい」
「は、王子様だからって図に乗っちゃって・・・母親なんかどっかの売婦のくせによ」
「・・・好きに言っててくれ」
・・・この調子だ、幸せが全部逃げてしまう程ため息をついてもまだつき足りないだろうな。魔族の相手する方がまだ気が楽だ、早く到着してくれないかな。まだしばし辛抱しないと――と思っていたら無線が入って来た。
『こちらD地区魔石回収班!!至急援助求ム!』
「こちらルド、何があった?」
『D地区エリア1820で!ぐあッ!!』
「おい?どうした!?おい!?」
それ以上いくら呼びかけても返事は来ない。
「チッ、めんどくせぇなぁ・・・どうします?ルドさぁ~ん」
「銃剣一本持っていくぞ、僕一人で救援にいく。降ろしてくれ」
「一人でいいですかい?」
「こっちに向かってる大型魔族の対処の方が優先的だろう、どうせニエに思わぬ反撃を受けたとかそのあたりだろ。一人で充分だ」
「一人で怖くてチビらないようにしてくださいねッルドぼっちゃま!」
「・・・言ってろ」
車道が分岐しているところで車を止めさせて一人で降りる。降りた時に気が付いたのだが銃剣がほんの少し軽い。またもやため息が漏れた。マガジンを外しみるとやはり銃弾が抜かれている。
「幸せどころか不幸まで吐き出しきれそうだな・・・」
銃剣の大まかな形状はアサルトライフルをもっとメタリックにして更に凹凸を少なくして武骨に仕上げた感じ、銃身のほとんどは刃の部分が占めており銃撃よりも斬撃を重視した武器ではあるので弾丸が無くてもそれほど大きな問題はないけれどムカツクことには変わりない。
駆け足で車道を半刻ほど進んだ、銃剣はとにかく重い、少なくとも20キロ近い重量があり背中に背負ってても体力が奪われる。だからといって止まる訳にもいかないので、汗だくになりながらも止まらずに走り続けた。
当然僕は兵士を助ける気なんてさらさらなくて、ニエが絡んでいるのならそっちに肩入れするつもりだったが――
「え?」
正面から軍用車がとんでもないスピードでこっちに向かってくるのが見えた。正確には車道を走ってたから僕に突っ込んで来たわけではないけれど。一切速度を落とす気配がないので車道の外に飛び出して車を避ける、やはり車はスピードを落とさないで走り抜けていった。運転していたのは間違いなく兵士、何を焦っていたのか?と疑問が思考を埋めた。
あそこまで急いで戻った理由はわからないがあの焦りようはニエ絡みではなく魔族の仕業かもしれない。なんにせよ確認しに現場までは行かなくては。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
魔石を集めていないのに容赦なく兵士が魔石回収にやってきた。咄嗟に鍵をかけて毛布に包まり来るはずもない助けを求める。そんな私の声は銃声に喰われて消えた、同時にドアノブが吹き飛ばされて、兵士が入ってくる。もうだめだ、毛布に包まったまま震えていることしかできない。辛い記憶が沢山、沢山私の頭の中で暴れまわる。
「おいクズ!てめぇ何してんだ!あぁ!?」
こっちの精神をこそぎ取るような剣幕で兵士が銃剣を私に向けながら近づいてくる。お母さん、お父さん、音痴さん・・・私を助けてくれる人はもう誰も居ない。それでも、誰でもいい、お願い
「たすけて・・・・・・」
私の声はちゃんと言葉として口に出たのかもわからないくらいか細いものだった。
「ぐわッ!!」
「おい!どうしたんだ!?」
「わからん!何かに殴られたような・・・ぐえッ!!」
祈りが通じたのか外から短いうめき声が聞こえた。外の二人の兵士の声だ。私に銃口を突き付けた兵士が後ろを振り返った直後何者かが兵士の顔面を殴り、床に叩きつけた。
「ま、こんなことだろうと思った」
兵士が殴り倒されたことで私を助けてくれた人の姿が見えた。
「ローグ・・・」
ローグは人差し指を自分の口に当てると「しー」と息を漏らして言葉を続ける。
「見えない化け物に襲われてる、助けてって、大声で。劇的にな?」
そう言って愉快な笑みを浮かべながらローグは私にセリフをなぞるように促してきた。
不覚にも彼のドヤ顔に少しだけ安堵を覚えてしまう。
「見えない化け物が居るの!!お願い助けてぇッッ!!」
喉が張り裂けるんじゃないかと思う位の声量が出た、自分でも、こんな声がでるのかと、驚くほどには。必死なのもあった、多分半分は演技では無かったと思う。
「と、透明の化け物だと!?」
殴り倒された兵士が飛び起きて銃剣をデタラメに振り回す。その滑稽な様をローグが指さして笑っている。
「あ~、面白くなってきた!」
そう言うとローグは兵士の背後に回り込んで勢いよく足払いを仕掛けた。
「なッ!?」
見えない相手からちょっかいを掛けられても対抗する術などない。兵士の重装備が床に叩きつけられ
鈍い音が家に響いた。咄嗟にローグが兵士の銃剣を奪い取る。銃剣は兵士の手から離れた瞬間に兵士の視界から消えたらしい。
「お、俺の銃剣が消えた!?おい、無線だ!!救援を呼べ!!!」
目の前で武器が消えてパニックに陥った兵士は、腰を打った痛みのせいか恐怖に腰を抜かしたのか、四つん這いのまま無様に家の外に飛び出した。そんな兵士を尻目にローグは銃剣をまじまじと眺めていた、マガジンを外して中を確認したり引き金の硬さなどを確かめている。
満足したのかマガジンを戻すと笑顔で兵士を追って外に出た。その無邪気な笑顔にゾッとする。私に向けられていた悪意と似た感情を感じたから。これからローグが兵士にする仕打ちはいずれ私にそのまま降りかかるかもしれない・・・。
「こちらD地区魔石回収班!!至急援助求ム!」
『――』
「D地区エリア1820で!ぐあッ!!」
『――』
無線を使っているようだ、無線の向こうの声は聞こえない。けど無線を使っている兵士が必死になって助けを求める叫びは、はっきり聞こえる。
「く、クソ!な、何がどうなってやがる・・・!?
うぎゃああぁぁあぁああああぁああああぁあ!!!」
兵士の断末魔だけが耳にこびりつく、ローグの声はなぜか聞こえない。
嬉しそうな声が聞こえてきてもよさそうだけど・・・。
――そしてその断末魔を最後に静寂が訪れた。
ローグが家に入ってくる、耳を立てていたのに直前まで気配も感じなかった、足音も何も。ローグの姿が見えても私はベッドの上から動けないままでずっと震えているだけだった。
「すまん、やり過ぎた。本当は逃がして化け物がいるって情報流して今後兵士が来ないようにするつもりだったんだけどさ・・・ま、無線使ってたからしばらくしたらまた兵士がくる、今度は手加減するからさ」
「うん、ありがとう・・・」
ローグが私のいるベッドに近づいてくる。正直ローグが怖くて仕方がない、「来ないで」と拒絶したくてたまらない。
・・・・・・でも助けてくれたのは事実で今は嘘もついてない。ローグの右手を両手で包んでもう一度「ありがとう」と伝えた。ローグは「おう」と言って軽く頷いた。
今気が付いた、人に触れるのが久々過ぎて忘れていたから。森の中では気が付かなかったけどローグの手は触れるのに、温かさは感じなくて、なんか、変な感覚だった。
安心と不安で私はゴチャゴチャになっちゃって、ボロボロ涙が溢れてきちゃった。
それ見たローグは戸惑ってた。
人物紹介 エフィー・メイ・ウィン
18歳 女性
肩甲骨付近まで伸びた白い髪が印象的な子。クセッ毛で所々髪がクルンと反り返っている。
白い髪に映える黒いカチューシャは母の形見。
人の感情を見ることに長けており声を聴くことで相手の感情をある程度読み取れる。
性格は本来イタズラ大好きっ子だったがニエの生活でそんなことをする相手など居なかった。
割と乱暴な所がある。
幼いころ母は行方不明となり父の死を目の前で目撃してしまう。
その後ビリーブ国王から身分をニエに落とされ安全な内壁から危険な外壁へ移住させられる。
今まで奇跡的に生き残れた理由は二つあり
一つはなぜか魔族が襲ってこないこと。
もう一つはまだ一人で生活できないエフィーを手助けした一人の兵士がいたからだ。
そんな彼は音痴だった。