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破滅願う王

キングダムハー〇のウエハース食い過ぎて絶対体に悪い。


デモ カード欲シイカラ モット食ウ。

オデ、カードコンプ スル(30種)

―― 白竜城 鐘楼闘技場 ――


『さあビリーブ国王は戴剣式30連勝を成し遂げるのか!?それとも新たな王の誕生かぁ~!!

どちらに勝利の女神が微笑んでも恨みっこなぁぁぁああぁあしッ!!レディー・・・ファァァァァぁああイツッッッ!!!』

「・・・」


心を落ち着かせると静かに伏せた目を上げ、黄金の切っ先を挑戦者に向ける。観衆が発する雑音など耳に入らない程に目の前の相手へ意識を傾ける。相手に向けたその切っ先は重りのように自身の心にズシリとのしかかる。


「来なさいレーダリア、後悔がないように全力で」


戦いの始まりに闘技場の盛り上がりは最高潮に達している。会場は鼓膜がどうにかなりそうな騒音と熱狂に濁っているのに対し王の声は湧き水のように透き通ったような落ち着いた声だった。


「な、なめんな!余裕こいてんじゃねぇ!!!」


何の変哲もないただの剣で空気をかき乱しながらレーダリアが迫ってくる。


――その様をみて愕然としてしまった。

子供が駄々をこねて拳を振り回しているのと同じような滑稽さだった。一目でわかってしまう、彼は剣の訓練などしたことが無い。握り方、振り方、重心、一瞬見ただけで全て駄目だとわかってしまう。どう足掻いても剣では相手にならない・・・レーダリアの剣戟を見極め剣を弾き飛ばすのはあまりに容易く、造作もなかった。


剣は闘技場の端まで飛び、そのまま石畳にぶつかると回転しながら下に落ちていく。


「・・・歴代の挑戦者の中で君が最も若く、一番弱い」


儂にこんな弱き者まで殺せというのか?どこまで命を弄べば気が済むのだ・・・

何を思ってレーダリアを挑戦者に選んだ?目的がまったくわからない。


――いや、目的はなんとなく検討が付く、愉悦だ。儂が苦悩する様を楽しみたいとかそんな理由だろう。アイツはそんな奴だ。


ワインのコルクを飛ばすかのように軽々と飛んでいった剣、しかし剣を降ろし追撃しない王に会場はどよめき、やがてがブーイングで一つとなる。


「な、なんのつもりだ!!」

「こんなことで命を懸けるなんて馬鹿げてる、降参してくれ。君は若い、まだ死ぬべきではない。

このまま白ければ戴剣式は中止になるだろう」

「ふざけんな!上から物を言いやがって!!生き恥かけってか!?」

「命を軽く見るな、捨てていい命なんてない。恥など気にするな」

「命を軽くみるなだぁ!?どの口が言いやがる!!30年近く王座にしがみ付いてに挑戦者を殺してきたクセによぉ!!」


観客から「いいぞ」とか「さっさとしろ」とか品のないヤジが群れを成して耳になだれ込む。耳なんか千切って捨てたくなるような衝動をグッと堪え目の前の青年を見据えた。


「・・・そうだな、違いない。確かに、儂は殺人鬼と言っても差し支えない」


言葉を発しながら思わず目を伏せた、彼の言う通り王座に居続ける為に挑戦者達を葬って来たのだ。

真実を突き付けられて視線を一瞬逸らしてしまった。


「ひゃはッ!」


短い笑い声と『パン』と乾いた破裂音がほぼ同時に聞こえてきた。

僅かに遅れて腹部に痛みが走り温かい血液がジワジワと服を伝い広がっていく。


「ハハ、ざまぁみろ!!今時剣なんて古クセェ!!!銃があるんだよ今の時代!!魔族にも効くオリハルコン製の弾丸の味はどうだ!?あァ!?」

『ちょ!?待て待てなんてこった!挑戦者のルール違反だあぁぁあぁぁ!!』


司会のバーナーが顔色を変えて叫ぶとレーダリアは不服そうに言い返す。


「うるせぇ!勝った奴がエライんだよ!!ガタガタ抜かすな!!」

「ぐぅ・・・ッ」


撃たれて穴の開いた腹部を押さえ膝を着いた、傷口はそんなに大きいものではない筈なのに痛みで体は直ぐには動かない。傷を押さえる手の甲を溢れた血が伝う。


「命乞いすれば・・・へへ、降参させてやってもいいぜ」

「・・・儂は命乞いなどしない、してはいけないんだよ。殺人鬼はいつか処刑されねばならない、レーダリアよ、殺人鬼になる覚悟はあるか?いつか必ず殺される立場になる覚悟がお前にあるか?・・・あるのであれば引き金を引くがよい」


おそらく、そんな覚悟なくともレーダリアは引き金を引くのだろう。こんな幕引きとは、無念だ。

目を閉じて終わりを待つ。


「うるせんだよ!そんな覚悟知らねぇ!!要らねぇ!!!老害がさっさと死ねよッ!!」

「父さん!!」


観衆の雑音を跳ね除けて、その叫び声はこの耳に届いた。ルドが控室から出てきて必死な顏して叫んでいた。


「あ?なんだアイツ、なんで控室か――


ああ、知ってたが儂はバカだな。まだルドを残して死ぬわけにはいかないじゃないか。ルドの声に消えそうな命の火が強く灯る。


剣を握り直す。ルドを見ているレーダリアの体に黄金に輝く太刀筋を通過させた。


「・・・儂は初めて戴剣式に出た時からずっと覚悟しているよ。せめて、安らかに眠れ」


黄金の剣を鞘に納めると、それが合図だったかのようにレーダリアの体から噴水のように血を空にまき散らした。理解が追い付かず会場の反応が一瞬遅れた為、妙な間が空いてから会場がどっと沸く。

反則した卑怯者に逆転勝利、これが余程民衆にウケが良かったらしい、歓声が地響きのように体に響いてくる。傷口にも少し響く。ルド以外黙ってくれないものだろうか。


「う・・・嘘つき・・な・・ん・・ゲフッ・・・・・・・は・・なしが、話が違う・・銃があれば勝てるって・・・・言ったの」

「一撃で眠らせてやるつもりだったが浅かったか・・・すまない、苦しませたな」


レーダリアの心臓に剣を突き立てた。

終わらせる瞬間、目は閉じない。奪う者の、儂の責務。生涯消えぬ第30の罪。


『勝者はビリーブ国王だぁぁあぁあああぁ!!!流石は剣聖の名を欲しいままにする最強の剣士!!

卑怯者の作戦なんか問題なかったぁぁぁぁ!!この王は強すぎるぅぅぅぅうぅぅ!!!』


おぼつかない足取りで熱気立ち昇る闘技場の縁に立ち控室側から足場が伸びてくるのを待つ。

闘技場の下を覗き込んでも何も感じなくなったのはいつからだろうか?観客の喜びようを見ると

自分のしたことが肯定されているように錯覚しそうになる。いや、肯定はされている。それが何よりこの国の問題なのだ。


文明が発達しているのに人々の心は依然、野蛮なまま発達していない。だからこの国が嫌いで王になった。国を変える為に。殺し合いで王を決める異常な国だからこそ成し得た仄暗い奇跡の一手だった。


足場が闘技場にくっつくとルドが心配そうに駆けつける。そのまま儂の肩を担いで一緒に控室へ戻ってくれた。ああ、いい息子を持った。


「父さん、無事!?」

「撃たれて無事な訳あるかバカ!!いっつぅ~・・・」


ソファーにビリーブを座らせると服を捲り傷口を確認する。するとほんの少しだけ口角を上げて一言「なんだ大丈夫そうだね」と安心したように言った。


「弾丸が腹を貫通してくれたからな」

「そうだね、オリハルコンが体内に残ってたら危なかった」


オリハルコンは魔力を吸引する特殊合金。体内に残っていれば生命力を吸われてしまう。


「「・・・」」


二人会話がピタリと止まる。足音が聞こえてきたのだ、二人には聞きなじみのある嫌な足音が。

足音が止むと控室の扉が開く。


「やあ、優勝おめでとう。ま、ビリーブ様なら勝つと信じてたがね。ンッフフフ」


М字ハゲ白髪オールバック。全身紫のスーツで身を包んだ眼光の鋭い老人。メビスト・クローンだ。


「メビスト、手荷物検査をしなかったな?」

「ンッフフフ、なんのことかね?挑戦者が銃を抜いた時は私も実に肝が冷えたよ」

「レーダリアは話が違うと言っていた、銃を渡したのはお前だろう?」

「ああ、なんと嘆かわしいことか。我らが王は人間不信であらせられるようだ!」


演技臭い言い回しで両手を上に向けて嘆くような仕草をするメビスト。何を言っても無駄だと理解するには容易い態度だ。ルドが苛立ちを押さえきれない声でメビストを睨みつけながら言葉を放つ。


「さっさと出ていけ」

「おやおや、嫌われたものだ。では失礼するよ。君たちと違って忙しいのでね、ンッフフフ・・・」


癇に障る言葉を残してメビストは控室から出ていった。

「フン」とルドが鼻を鳴らすと戸棚から包帯を取り出して父の患部に巻く。


「この国を必ずぶっ潰すぞ、ルド」


手当てしてくれているルドの目を見て真っ直ぐな瞳で力強くそう言うとルドはクスッと息を漏らした。


「いつも聞いてるけど王様のセリフじゃないよね」

「民を斬り殺す奴なんて王じゃねぇ」

「・・・父さんがそう思ってても、僕は父さんが王で良かったと思ってるよ。でも王様が自分の国ぶっ潰すなんて前代未聞だね」

「そんぐらいしないと国は変わらんからな、いつつ・・・」

「大丈夫?今医者を呼んでくるよ」

「この城ヤブ医者しかいねぇからなぁ・・・」

「そうだね、撃たれたのテレビとかで見てたはずなのに居ないもんね・・・」


城どころではない。この国にはまともな医者なんてほとんどいない。メビストが医療の発展を阻んでいるからだ。


殺された親友の為にも、必ずこの国を、あのふざけた鐘もメビストも奴に加担するものすべてを破滅させてやる。

魔石

文字の通り魔力が籠った石。集めてもガチャは回せない。

この国のエネルギー源であり魔族が跋扈する森に多く落ちている。

生贄という意味の身分ニエに集めさせて軍が定期的に回収にしにくる。

集めた魔石の量で食事や燃料など交換している。ニエは一か月生き延びればいい方である。

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