第3話『失敗からの和食ディナー』①
お待たせ致しましたー
(……意外と揃っている)
皐月か智也か。
どちらかが購入して、皐月は練習……智也はまったく出来ないわけではないと聞いているので、主に彼が食事を作っているのだろう。
肉を使用したメインは作ったので、次は副菜に近いものを。
道具もざっと見させてもらったら、意外なものが見つかった。
「……ガスバーナー?」
しかも、使用したのかボンベがきちんと装着されていた。何に使っているのか純粋に気になったら。
「あ……それ。炙ったら、何でも美味しくなるとかで……自炊し始めた頃になんとなく、買ったんです」
「……で、火力強めてやり過ぎたとか?」
「……ご名答、です」
智也ではなく、皐月だったとは。
しかし、ガスバーナーの魅力はたしかに高いのでとやかく言うつもりはない。
だから、せっかくなので正しい教え方をレクチャーしつつ、おそらく智也が買ってきた。
「このしめ鯖の切り身を……もっと美味しくしようか?」
「? それ、智也の晩酌用の」
「伊東さんも食べたくなる味わいになるよ?」
「じゃ、是非!」
と言っても、する工程はさほど難しくはない。
陶器の皿の裏……底でも、土の部分が素焼きになっている部分で……包丁の刃を軽く研ぐ。
「普通の砥石で研ぐ方が長持ちはするけど、数回くらいなら……即席で使えるよ? 手だけは注意して」
そして……まずは手本として、しめ鯖を切ると……包丁特有の切れ味がぐんと増す気がした。
「おお。すっと切れていますね?」
「研ぐ角度は……まあ、大雑把でいいけど。刃こぼれしてる部分をさっと研ぐ感じかな?」
「……なるほど」
切り終えたら、まな板の上ではなく……薄いバットがあったのでそれに移動させる。木製や市販のまな板の上では焦げて悪臭を放つだけでは、大変で済まない。
だが、バットも焦げる場合はあるが……使用済みだったので、遠慮なく使わせてもらう。
「バーナーの火加減は強すぎないことかな? と言っても、自分の理想の焦げ目とか火の通り具合を考えると……強火にしたがるのは俺もわかるよ」
「……少しずつ、とは思っているんですけど。気づいたら」
「焦がし過ぎ……?」
「はい」
裕司もネジを緩め、少し皐月に離れるように言ってから、点火させた。ガスコンロのように青い炎が、子供の指の長さまで伸びている。
それをゆっくりしめ鯖に近づけて……表面は本当に少しずつ焦げる手前までじっと動かさず。横にずらしながら切り身全体の表面を炙っていく。
「俺が和食専攻だったら、寿司とか握れたけど……今日はあぶりしめ鯖で、メインの塩肉じゃがと一緒に呑もう」
「はー……これだけでも凄いのに、まだ学生さんだなんて思えないです」
「はは。いずれはなりたいけど……っと」
じゃがいもの煮え具合が気になったので、バーナーを置いてから鍋の様子見。竹串ですっと通ったら……おかずは完成だ。
あとは、簡単炊き込みご飯やサラダなどを……皐月にレクチャーしながら、裕司は一緒に作ることにした。
次回はまた明日〜




