第3話『伸びるチーズハットグ』①
お待たせ致しましたー
「「…………あれ??」」
怜達が目的の屋台に向かえば、見覚えのある人物がそこにいたのだ。
「あ。マトーさんに、コモリさん」
屋台で調理をしていたのは、パッと見は日本人とそこまで変わらない顔立ちだが……口調は少し片言。しかし、頭の鉢巻きが日本人よりもよく似合っている気がした。
「張くん!」
「お疲れサマです」
ビジネスホテルでは、怜よりは少し年上だが……準社員のひとりである中国ハーフの王苺鈴とは同期だ。
彼は韓国からの研修生出身なので、生粋の韓国人なのである。日本語も、まだまだ片言なのは仕様がない。
張は、慣れた手つきで油鍋と食材を交互にやりくりしていた。
「張くんが、こっち側にいるんだー?」
「……別のバイトで。出店するから手伝ってホシイと」
「へー??」
「ハットグ? って何なの??」
裕司が張に聞くと、張は屋台に貼ってあるメニューのような部分を向けてくれた。
「簡単に言いマスと、チーズとソーセージを入れたアメリカンドック……デス」
写真を見ると、表面には粒々したパン粉よりも大きい何かが。チーズが断面からものすごく伸びている。メニューには、モッツァレラチーズの芯とソーセージが書いてあった。
表面の粒は、ポテトを砕いたものらしい。それにはマシマシでプラスの料金がかかるようだが。
知人がせっかく一生懸命に作っているのだから、買わないわけにはいかない。
「張くーん! 私、ポテトのマシマシでひとつ!!」
「俺も」
「ありがとうございマス!! えーっと……ちょうど下準備出来たので、五分待ってくだサイ」
「……そんなかかるの??」
「生焼けにならないためでしょ? 時間気にしないからゆっくりでいいよ」
「はい」
作り方を見ていると。
ものすごく手が汚れるのを気にせずに、張はハットグを作っていく。油鍋に入れれば、コロコロと転がしながら揚げていくのは見ていて楽しい。
あれが……今から食べられるのだと思うと、怜はわくわくが止まらなかった。
「ほーん? ホットケーキミックスとは違うようで、似ているもちもちの生地」
裕司は裕司で、やっぱり料理人を目指しているから……張のやり方をじっくり見ていた。初見で作れるかはわからないが、頼めばレシピを探して作ってくれるかもしれない。
「お待たせしました。チーズハットグデス」
出来上がったハットグは、そのまま渡されるのではなく専用の紙箱に入れられた。出来立てだから、たこ焼きなどのように受け止めるためだろうか。
「お好みで、ケチャップやマスタード。あと、粉砂糖やハチミツも」
「「砂糖にハチミツ!!?」」
張のおすすめとは言え、そのような味付けが合うのか……ふたり揃って信じられないと声を上げてしまう。
次回はまた明日〜




