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【完結】ホテルグルメはまかないさんから  作者: 櫛田こころ
第二十二章 小森の場合⑪
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第4話『HMでカレーパン』③

お待たせ致しましたー

 パン粉に少量の溶き卵を混ぜたものを菜箸につけ。


 油鍋になみなみと注がれている熱した油の中へ、箸先を少し沈める。


 揚げ物の温度をたしかめる方法のひとつ、食材を少量沈めて爆ぜることで具合を確かめるのだ。爆ぜ方はまずまずだったので、裕司(ゆうじ)は空いている手でカレーパンを持つ。


 ゆっくり滑らせるように入れれば……少し大きな音を立てたので、洗い物をしている(れい)の肩が跳ね上がった。



「うぉ!? 近くで聞くとそんなおっきいんだ!!」


「業務用だともっと大きいぜよ?」


「うーん。社食でこもやんが作っているとこくらいだし」


「あそこは距離あるしねー」



 近すぎて、怜に怪我などは絶対させたくないが。


 温度……はほとんど目で観察している。温度計も一応あるが、山越(やまこし)が裕司に叩き込んでくれた料理人としての技術を普段から使わないわけにはいかない。


 もちろん、学校はフライヤーで設定温度は決められているし……就職先によっては勝手が違うのは当然だ。


 そのどれも間違いも正解もない。


 しかし、裕司は尊敬している山越が伝授してくれたこの三年間の技術を……出来れば無駄にしたくないのだ。だから、今日は自分の目で、感覚でカレーパンを揚げていく。


 練習も兼ねて、タイマーウォッチだけは使うことにしているが……それでも、タイマーが鳴るほぼ同じタイミングでひっくり返すことが出来た。



「おお!? 息ぴったし?」


「感覚だけだけどね? んで、同じ分数で裏面は揚げて」



 注意は膨らんで、もとの面に戻らないようにトングでときどき抑える程度。


 タイマーが鳴って、トングでしっかり持ち上げて油を切ったら網を置いたバットの上へ。他のカレーパンも同様に揚げていくのだが。



「…………こもやん」


「…………ダメとは言わんが」



 揚げたて出来立ての、カレーパンを食べたくて仕方がない表情をしていた。


 パン屋でもあまり出会うことのない、魅力的なことであるにしても……裕司としては、少しためらう。


 家庭の作り方とは言え、揚げ物の本当に揚げたては舌を火傷させるだけで済まないからだ。怜にそんな目に遭ってほしくない。


 しかし……目で訴えてくる表情がとても可愛らしく、折れたのは裕司だった。


 せめて、半分だと裕司はトングと包丁を使って切り分け……湯気が凄く出たのを見て、さらに怜ははしゃいだ。



「やや!! これはめちゃくちゃ美味しそうだ!!」


「……めっちゃ息吹きかけなよ?」


「だって……揚げたて」


「ま。わからんでもないけど」



 キッチンペーパーで軽く包んで、半分ずつ切ったカレーパンを乾杯のように軽く合わせ。


 一緒に食べた、ホットケーキミックスの生地で出来たカレーパンは……怜と一緒に作ったこともあり、今までで一番美味しく……けど、やっぱり軽く火傷してしまった幸せの味だった。



「……痛い」


「俺も……」



 熱々、ふわふわ、サクサクでかつスパイシーな味わい。


 あとで揚げたのは……味わうのに、適温に冷ましてからちゃんと美味しくいただく事が出来た。ホットケーキミックスの新しい可能性を見出せて、裕司はそれからネットを参考にしつつ色々試作する日々が続くことに。

次回はまた明日〜

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