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【完結】ホテルグルメはまかないさんから  作者: 櫛田こころ
第二十一章 眞島の場合⑪
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第4話『春のホテル縁日』②

お待たせ致しましたー

 焼きとうもろこしを堪能した後は、山越(やまこし)の焼きそばだったり、シェフらが手がけたたこ焼きだったりと。縁日らしい食べ物を、(れい)優樹菜(ゆきな)もだが苺鈴(メイリン)らと堪能していた。


 途中、裕司(ゆうじ)が交代になったので……苺鈴とかが気づかって、裕司とふたりで回ることにした。と言っても、大手ではないビジネスホテルの宴会場だから、さほど広い部屋ではない。


 裕司の居たとうもろこしの屋台から、射的もあまり離れていなかった。



「へー? 発泡スチロールとかの組み立てだけど……銃は普通のよりもやりやすそう」



 銃を構えた裕司は、仕事着の少し汚れたコックスーツだがそれでも格好良く、怜には見えたのだ。



「こもやん、こもやん!」


「なんだい、怜やん?」


「あのホットケーキミックス取ってほしい!!」



 射的の景品も、ほぼほぼフリーマーケット状態。参加者がひとつずつ持ち寄ったため……かなり雑な物たちばかりだ。それでも、怜の欲しいものはちゃんと残っていた。



「ホットケーキミックス? でいいのかい??」


「ちょうど、朝ごはんとかの練習用がなくなったのだよ。大きいし……どうかな?」


「やってみる」



 やる気を出した裕司は銃を構えて挑んでみた。


 少し重量のあるホットケーキミックスの箱だったが、三回目できちんと倒れた。


 店主のいない遊戯関係は、セルフで景品獲得と片付けをすれば何度でも挑戦していいので……次は怜だったが、十回やっても成果がないので諦めた。



「これで、次は何作ろうかなあ〜?」



 怜は裕司が獲得してくれたホットケーキミックスの箱を眺めながら、少しずつ始めた自炊のレパートリーをどう増やそうか悩んだ。



「ホットケーキ以外でも……パウンドケーキとか、パンにドーナツも」


「!? ホットケーキミックスでパン作れるの??」


「構成しているものがだいたい似てるぜよ」


「ほうほう!! ちょっとやってみる!」


「一緒に作る?」


「それは大歓迎!」



 裕司の方が、少しずつ時間が取れなくなるし……バイト日数も減ってくるので、一緒にいられるのはとても嬉しい。もちろん、自分達の部屋で会えなくもないが……どうしても、就活や卒業試験の邪魔をしたくないと遠慮がちになってしまう。


 彼女の延長線をいく関係への約束をしても……そこはどうしたって、ぶつかる壁だ。怜とて、それはあるのだから。



「おーい、眞島(まとう)ちゃーん。小森(こもり)くーん!」



 端に用意されていたベンチに座っていると、はしゃぎまわっていた紫藤(しどう)に呼ばれたので行ってみれば。



「「……なんで、春にスイカが」」



 品種改良などのお陰で、なんとなく取り寄せられるのはわかるが。わざわざ、今回の縁日風イベントで持ち寄るとは。


 総支配人の都築(つづき)がやる気に満ち溢れた表情で、目隠ししながらスタンバイしていた。



「皆に美味しいスイカ食べさせたくて!!」


「眞島ちゃん達は指示よろしく〜」


「りょ!」


「……わかりました」



 ともあれ、拒否する理由などはどこにもない。


 今は今で、騒げるうちに騒ぐ。


 苦難の前に、一旦何もかも忘れて楽しむのも大切だと思うことにした。


 ちなみに、スイカは九州からネットで取り寄せたそうだ。

次回はまた明日〜

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