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【完結】ホテルグルメはまかないさんから  作者: 櫛田こころ
第十七章 眞島の場合⑨
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第1話『新年のエビフライ』

お待たせ致しましたー

 気軽に挨拶しに来て欲しい……と母親に言われたのがきっかけだったが、大変なことになりそうだ。



「明けましておめでとうございます」


「今年もどうぞよろしくお願いします」



 三ヶ日も明けて、初めてのバイト出勤日。


 お互いの学校とかも登校日だった、とある日。お互い帰省先からの帰宅でバタバタしていたため、結局会えたのが今日になったのだ。


 (れい)はバイト時間でなければ、裕司(ゆうじ)に抱きつきに行きたかったが……裕司は既にまかない処のカウンターの向こうにいるので無理だ。



「新年一発目のバイト! 今日のまかないはなんだい??」


「Aはエビフライ、Bは生姜焼き」


「…………うう。お肉と海鮮別々」


「どっちも、またすぐ出るからさ? 気分的な方をお選び?」


「……ぷりぷりのエビを求む」


「りょーかい」



 いつも通りのやり取り、いつも通りのまかない。


 こんな感じでいると、あと一年くらいで一緒に同棲生活をするかもしれない相手だとは……少しだけ信じられない。


 挨拶も、裕司はともかく……怜はまだ未成年を越えたばかり。それにまだ学生の身分なので、結婚は先でも嫁入り前の女が男と住むのに……親同士の許可は一応いるのだ。


 裕司の親もだが、怜の親も特に反対の意見はないようだから……心配の余地はなくても形式は必要。と、裕司の親には裕司から連絡があった。


 あと純粋に、怜と会ってみたいと。逆に、怜の両親も裕司に会ってみたいようだ。



「ほい、怜やん。お待たせ」



 日取りをいつにしようどうしよう、と悩んでいたらまかないがもう出来た。


 取りに行くと、飲食店であるような大ぶりのエビフライが二本も皿に鎮座していたのだった。ご丁寧にタルタルソースも添えて。



「ありがたく、頂戴する!!」


「ん。召し上がれ」



 そんなふたりのやり取りの後ろで、上司やら他の部署の先輩らが来たりしたので、裕司は仕事に没頭することになった。


 なので、ゆっくり食べながら考えることにした。


 エアコンはついているが、やはり寒いので味噌汁から。出汁もさることながら、いい塩梅の味噌の濃さが舌を落ち着かせてくれたところで……揚げたてが一番だと、タルタルソースを少し載せたエビフライをパクッと。



「あっふ!?」



 出来たて熱々だから当然だが、これぞ揚げたてという熱が唇に……口内に伝わっていく。タルタルソースは業務用かと思ったが、卵の食感がどことなくフレッシュに感じた。わざわざ、裕司か源二(げんじ)とかが仕込んだのだろうか。


 エビは冷凍ものだと思うけれど、曲がることなくピンと伸びていて……身もふにゃけていなくて、ぷりぷりを伝えてくれた。米ともよく合う組み合わせ。


 まだバイトは前半の半分も終わらせていないが、これからの本番……宴会の仕事前に食べないと食いっぱぐれてしまうので、バイトも含めスタッフは交代でまかないを食べているのだ。



「…………もう、食べちゃった」



 急いでいたわけではないが、美味しくてあっと言う間にペロリ。これも、いつものことである。新年になっても、裕司の料理は相変わらず美味しくて……病みつきになる味だった。

次回はまた明日〜

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