第1話 兄との語らい
お待たせ致しましたー
怜とカウントダウンの通話をする少し前のことだった。
「……なんか、裕司の顔つき変わった」
「……そう?」
裕司も、怜の帰省を見送ってから……実家の方に帰省していた。新幹線を使う怜とは違い、特急を使えば一時間と少しで着くので、あまり久しぶりの感じがしないが。
とにかく、帰宅後……先に帰ってきた双子の兄である秀司から、彼の一服ついでに話をしようと言われたので……寒いが彼の部屋のベランダで並んで立っていた。
裕司は禁煙を決めてからは、今日ものど飴で我慢している。だいぶ、ヤニからは中毒症状がおさまってきているようだ。
「うん。彼女だっけ? その子と付き合い出した頃よりも……ずっと良い」
煙を吹く兄は、二卵性だったので顔はあまり似ていない。しかし、男から見てもイケメンだと聞かれたら裕司より秀司の方が該当する。街中で歩いていたりしても、逆ナンされるのは兄のが多かった。一時期、それがコンプレックスだったが……今は特に感じない。やはり、大事にしたい女性がいるいないでこうも違うのか。
「かなあ? 長野の方のじいちゃんにも言われた」
「あっちのじいちゃん達になんで先に会わせたんだよ? 俺とかだって、会ってみたかったのに」
「彼女がところてん克服したから……美味しいの食べさせるって約束しちゃったんだよ」
「ぷ。色気より食い気? 昔のお前と比較すると、随分健康的な付き合いだなあ?」
「ん。そんだけ本気」
じゃなきゃ、帰省前に同棲の提案を持ちかけたりしない。今までの彼女達には申し訳ないが、怜だけはやはり別格なのだ。
あの笑顔を思い出すと、ついつい口が緩んでしまう。
「うわ〜〜……幸せそ〜……マジで挨拶に呼んだ時、母さんらが驚くぞ?」
「兄貴もいれば良いじゃん?」
「そりゃぁね? もし、将来の義妹になる子だったら興味ある」
「兄貴の方は、今いないの?」
「ん〜……裕司ほど激ラブになれる相手はいない」
ちゃらんぽらんな付き合いは、どうやらしていないようだ。時々、裕司が怜とのデート内容とかをメッセージで話したら……『裏山』と即返ってくるくらい。秀司も秀司でケジメをそれなりにつけたかもしれないと思っている。
「にいちゃん達〜、おそば出来たって〜〜!!」
そろそろ中に入ろうかと言うところで、年の離れた妹の真衣香が呼びに来た。真衣香の顔立ちは、どっちかと言えば裕司に似ている。
「ん、あんがと」
「しゅーにいちゃん、タバコ臭ー!」
「もう臭いだけだって」
「けど、臭い!!……ゆうにいちゃんはなんか食べてる??」
「飴ちゃん。もう終わるけど」
「なんであめちゃん?」
「にいちゃんはタバコやめようと頑張っているから」
「ゆうにいちゃんえらい!」
「えー? にいちゃんは?」
「しゅーにいちゃんもやめたら褒めるよ?」
「そりゃ無理だ」
互いに妹には甘い。まだ小学生だから仕方がないだろう。
とりあえず、話を一旦切り上げて家族での年越し蕎麦を食べにいくことにした。
次回は16時15分〜




