第3話 ここでも提案
お待たせ致しましたー
普段、怜がバイトの仕事でも蕎麦を扱うが……基本は黒っぽく、かつ時間が経つと伸びやすいのが欠点だった。
もちろん、伸びる欠点を活かして固めに茹でておいたのを……提供するスタッフ、もしくは客自身が仕上げの調理をして食べれるようにする。
そのやり方を決めるのは、幹事とホテル側のプランナーが打ち合わせをするので……怜とかのバイトスタッフは決められた通りに仕事をするだけだ。モーニングプランだったり、ビュッフェプランでも組み込まれるが……やはり、出来立てには及ばない。うどんもあるが、これも同じく。
だからか、冷凍の蕎麦を使っていても作りたての蕎麦には敵わない。茹でたてと言う利点もあるだろうが。
(! おつゆも飲みやすい!)
薄めと言うわけでもないのに、めんつゆの深みが違うと言うか。あまり蕎麦屋に行かない怜でも、このつゆは飲みやすいとついつい飲んでしまう。しかし、塩分も濃いので半分と少しくらいは残して置いた。
あと少しの業務を、怜もだが裕司も頑張ってから一緒に帰る頃に……怜は年越し蕎麦が美味しかったことを裕司に伝えた。
「年度末だからね? 源さんに頼んで、今年は更級そばを仕入れてもらったんだ」
「長野のお蕎麦かぁ。ちゃんとしたのも食べたいなあ」
「春休みとかにまた行く? じいちゃん達がまた連れて来いってうるさいくらいにメール寄越すから」
「行く行く!」
啓司達にまた会えるのは、怜にとっても嬉しい。ただ、その前に……と裕司がスマホを怜に見せてきた。
「うちの母さん達も、いい加減怜やんに会わせろって」
「……おぉ」
SNSのメッセージ画面を見せてもらうと、少し前に怜が裕司に見せたような親からのメッセージ内容だった。彼女の怜を早く見せて欲しい、会いたいと。
「俺がぐうたらだった割に、先にじいちゃん達に会わせたのが悔しかったんだと」
「……おお。そんな期待されるものかね?」
「そんな、じゃないぜよ?」
空いている手でぐりぐりと撫でられる感じが、心地よい。
昼間に、怜の荷物は裕司の家にお邪魔してもらっていたので……翌日は見送りに行くと新幹線の改札まで一緒に移動した。
「んじゃ、行ってきまーす!!」
「いってらっしゃい。夜電話するよー」
去年はお互いバタバタしていたので、こんなのんびりとは出来なかったが。
今年は違った過ごし方が出来て嬉しいと、怜は気分良く新幹線が来るまで待合室でゆっくり待つことにした。
(こもやんとこでも……挨拶かあ)
まだまだ結婚などは随分先だし、同棲の定案はあっても実現出来るのは早くて来年の冬か次年度か。
どちらにしても、これまでの彼氏達には申し訳ないくらい素敵な彼氏殿と出会えたことに……バイトが今の場所で良かったと改めて嬉しさを感じた。
次回は16時15分〜




