第2話『年末前の年越し蕎麦』
お待たせ致しましたー
ゆるゆるから……少し意識するようになってしまったが、怜はまかない処に行くと裕司に不思議そうに見られた。
「どうしたぜよ、怜やん?」
「な、なんでもないのだよ!! 今日のまかないは!?」
「ん。ちょいと早いけど……年越し蕎麦かうどん。天ぷらは野菜かき揚げ二個」
「むむむ!! お蕎麦って黒い方??」
「今日のは信州に多い更級そばかな?」
「さらしな??」
「黒い粒はあるけど、全体的に白っぽいのさ。柔らかくて喉越しがいいぜよ?」
「じゃ、そっち!!」
この前のところてんに引き続き、また長野の味を食べられるとは。待っている間は小説よりも今日はテレビにしてみた。
年度末なのと、昼間と言うこともあり……なかなかに面白い番組をやっていた。晩の方がもっと面白いゴールデン番組があるだろうが……今日は裕司の部屋で今年最後の夜を過ごすのだ。
明日には、怜は家族よりひと足先に父方の祖父母の実家へ行く。盆は母方だったので、半年に一度交代して行くようにしている。
「怜やん、出来たぜよー?」
「おー!」
かき揚げは、皿に。
蕎麦には白ネギを刻んだのが、つゆの上に乗っているだけだった。
「蕎麦屋によるけど、俺が知っている店は大抵天ぷらと蕎麦を分けるんだ」
「天ぷらがべちゃべちゃになるから?」
「多分ね? あと、つゆもいいけど塩で食うのがオススメ」
「へー?」
たしかに、皿の隅に抹茶色の塩が添えらえていた。裕司が言うには、一階の懐石料理で余った抹茶塩を分けてもらったらしい。そして、今日はまだだがそこの板前さん達も、裕司の天ぷらに出来栄えを楽しみにしているのだとか。
「ほらほら、冷めるから早いこと」
「うん! いっただきまーす!!」
変な緊張感も、裕司の料理の前ではあっという間に消え去ってしまう。
蕎麦かかき揚げか……悩んだが、かき揚げを抹茶塩につけてひと口頬張れば。
サクッとした衣もだが、野菜の甘みが一気に口に到達し……一個をペロリと食べるまで、蕎麦に口をつけなかった。
(めちゃくちゃ美味しい!!)
サクッと、ほんのり甘く……そして、抹茶塩のしょっぱさが加わると、なんとも言えない快感が口に。
次に、いい加減蕎麦に……と、箸を向ける方向を変えてみた。たしかに、持ち上げると白っぽくて黒い粒が少し見えた。
柔らかいと裕司が言っていたが、どんな味なのか。すすってみると、ピンと背筋が伸びるくらい……柔らかくて食べやすく、これもまた食べるのが夢中になるくらいの美味しさ。
(……これ、冷凍の麺なの??)
まかないのために、わざわざ生の麺を仕入れるわけがない。と思って、後ろをチラッと見たら……たしかに、裕司は冷凍用の蕎麦の塊を掴んで鍋に入れようとしていた。
次回はまた明日〜




