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【完結】ホテルグルメはまかないさんから  作者: 櫛田こころ
第十五章 眞島の場合⑧
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第2話『年末前の年越し蕎麦』

お待たせ致しましたー

 ゆるゆるから……少し意識するようになってしまったが、(れい)はまかない処に行くと裕司(ゆうじ)に不思議そうに見られた。



「どうしたぜよ、怜やん?」


「な、なんでもないのだよ!! 今日のまかないは!?」


「ん。ちょいと早いけど……年越し蕎麦かうどん。天ぷらは野菜かき揚げ二個」


「むむむ!! お蕎麦って黒い方??」


「今日のは信州に多い更級そばかな?」


「さらしな??」


「黒い粒はあるけど、全体的に白っぽいのさ。柔らかくて喉越しがいいぜよ?」


「じゃ、そっち!!」



 この前のところてんに引き続き、また長野の味を食べられるとは。待っている間は小説よりも今日はテレビにしてみた。


 年度末なのと、昼間と言うこともあり……なかなかに面白い番組をやっていた。晩の方がもっと面白いゴールデン番組があるだろうが……今日は裕司の部屋で今年最後の夜を過ごすのだ。


 明日には、怜は家族よりひと足先に父方の祖父母の実家へ行く。盆は母方だったので、半年に一度交代して行くようにしている。



「怜やん、出来たぜよー?」


「おー!」



 かき揚げは、皿に。


 蕎麦には白ネギを刻んだのが、つゆの上に乗っているだけだった。



「蕎麦屋によるけど、俺が知っている店は大抵天ぷらと蕎麦を分けるんだ」


「天ぷらがべちゃべちゃになるから?」


「多分ね? あと、つゆもいいけど塩で食うのがオススメ」


「へー?」



 たしかに、皿の隅に抹茶色の塩が添えらえていた。裕司が言うには、一階の懐石料理で余った抹茶塩を分けてもらったらしい。そして、今日はまだだがそこの板前さん達も、裕司の天ぷらに出来栄えを楽しみにしているのだとか。



「ほらほら、冷めるから早いこと」


「うん! いっただきまーす!!」



 変な緊張感も、裕司の料理の前ではあっという間に消え去ってしまう。


 蕎麦かかき揚げか……悩んだが、かき揚げを抹茶塩につけてひと口頬張れば。


 サクッとした衣もだが、野菜の甘みが一気に口に到達し……一個をペロリと食べるまで、蕎麦に口をつけなかった。



(めちゃくちゃ美味しい!!)



 サクッと、ほんのり甘く……そして、抹茶塩のしょっぱさが加わると、なんとも言えない快感が口に。


 次に、いい加減蕎麦に……と、箸を向ける方向を変えてみた。たしかに、持ち上げると白っぽくて黒い粒が少し見えた。


 柔らかいと裕司が言っていたが、どんな味なのか。すすってみると、ピンと背筋が伸びるくらい……柔らかくて食べやすく、これもまた食べるのが夢中になるくらいの美味しさ。



(……これ、冷凍の麺なの??)



 まかないのために、わざわざ生の麺を仕入れるわけがない。と思って、後ろをチラッと見たら……たしかに、裕司は冷凍用の蕎麦の塊を掴んで鍋に入れようとしていた。

次回はまた明日〜

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